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GIS 基礎解説

リアルタイム GIS

 

リアルタイム GIS とは

近年、GIS を取り巻く環境は大きく変化しています。さまざまな「モノ」をコンピューターに接続することで生まれた IoT(Internet of Things:モノのインターネット)、街の電気量の統制を実現するスマートグリッドなど、モノとコンピューターがますます繋がるようになるにつれて、リアルタイムに情報を整理し、活用するニーズは GIS の世界でも日に日に高まっています。

このスピード重視の情報社会と GIS を繋ぐ役割を担うのが、リアルタイム GIS です。リアルタイム GIS とは、何かが起きたその時点でリアルタイムにデータを GIS に取り込み、リアルタイムにデータをマップ上で可視化・解析し、さらにはその結果をリアルタイムに発信することです。リアルタイム GIS を活用することで、即時に現状を把握できるたけでなく、それに応じた迅速な対応、情報発信、意思決定までを短時間で行うことができます。

リアルタイム GIS の活用

リアルタイム GIS は、データの取得から、マップ上での可視化・空間的な解析、そして意思決定までの一連のプロセスのどのステップにおいても組み込むことができます。ここでは、リアルタイム GIS を可能にする製品の 1 つである ArcGIS GeoEvent ServerArcGIS Enterprise のオプション製品)を例に、各ステップでのリアルタイム GIS 活用方法をご紹介します。

リアルタイム データの取得

GIS データというと、従来は現地調査やデータ提供機関から過去のある時点で取得された静的な情報を入手するという方法が主流でしたが、最近では、現時点の動的な情報を即時に入手することも広く普及してきています。

ArcGIS GeoEvent Server を利用すると、車両に搭載した GPS や、センサー、またはソーシャル メディアから発信されるストリーミング データをリアルタイムに取り込むことができます。また、あらかじめフィルターを設定し、大量のデータの中から特に重要なものだけを抽出してデータを取得することも可能です。たとえば、船舶の位置情報をリアルタイムに取得する際、下図のように事前に警戒監視区域を設定しておくことで、この範囲に船舶が侵入した場合には監視センターにメッセージを送るといったことが可能です。なお、この例にある警戒監視区域のように、地理空間上に設定した任意の仮想領域のことを「ジオフェンス」といいます。


設定した警戒監視区域に船舶が侵入した場合、メッセージを送信

リアルタイムな可視化・解析

リアルタイムに取得したデータは、マップ上での可視化や空間的な解析に利用することができます。たとえば、ある地域のセンサーの動作状況をリアルタイムにモニタリングしている最中に、機器の動作異常が見つかった場合、ArcGIS GeoEvent Server ではどこにある機器に異常が確認されているのかという情報を取り込むことができます。これにより、マップ上でデータを可視化し、より直感的に状況や位置を把握することができます。また、このようにリアルタイムで得た情報にセンサーの管理区域ポリゴンを重ね合わせることで、問題が発生しているセンサーの管理区域を特定するなど、より効果的な可視化も可能です。


問題が発生しているセンサーの位置を可視化し、管理区域を空間的に特定

取得したデータをそのままマップ上で可視化するだけでなく、そこに何かしらの処理をリアルタイムに実行し、データに情報を付加する、といったことも可能です。また、ArcGIS の他の機能と組み合わせ、作業員を問題発生地へと派遣する場合の最短ルートの解析や、影響範囲距離に含まれる家屋の検出など、リアルタイムに取得したデータをさらに高度に解析することもできます。

リアルタイムな意思決定

リアルタイムに入手し、可視化、解析したデータを利用することの最大の利点は、これによって意思決定までもリアルタイムに実行可能になることです。上記の例のように、リアルタイム GIS を活用することで、管理者や監視者は入手した最新の情報に基づいて現場スタッフに即時に指示を出し、迅速な対応を行うことができます。また、日常では流動的に取得、利用されるリアルタイム データは、年月を経て蓄積されることで、経年比較や地域的傾向の分析といった、より長期的な意思決定の判断材料としても有効的に活用することができます。