スマートフォンや携帯電話などのモバイル デバイスには GPS 機能が標準搭載されるようになり、屋外での位置の取得(測位)は一般的なものとなりました。スマートフォンで地図アプリを使い現在地を調べたり、駅までの経路を検索したりすることは、今では当たり前のことになっています。屋外での測位は、基本的には GPS 衛星が使用され、衛星からの信号を地上で受信し、位置を取得します。そのため、建物の中などその信号が届かない場所では位置が取得できません。
現在、この問題点に対し、ショッピング・モールや地下街などの屋内でも測位を可能とする技術が進歩し、その技術で取得された位置情報の利用も進んできています。
屋内で測位する方式は、現状では多様な方式が存在する一方でスタンダードな方式がないため、要件に合わせた適切な選択や、複数の方式の組み合わせが必要です。以下の表は主な方式です。
種類 | 概要 |
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BLE ビーコン | Bluetooth Low Energey(BLE)を用いたビーコンが発する ID 付きの電波を利用。 |
IMES | 送信機から GPS と同等の信号で送られる緯度、経度、階数情報を利用。 |
地磁気 | 現在地の地磁気データを用いて測位。 |
Wi-Fi | 無線 LAN アクセスポイント(AP)の電波強度等を用いた測位。 |
UWB | Ultra Wide Bandの略。数 GHz に渡る帯域を使用し、電波到来時間を基に測位。 |
超音波ビーコン | スマートフォン等のマイクで送信機からの超音波を感知、受信・発信時間の差異で距離。 |
PDR | 歩行者自律航法のこと。加速度センサー等で、デバイスの移動方向等から位置を推計。 |
RFID/NFC | 電波を用いた自動認識技術。認識距離や精度が異なる、パッシブ型、アクティブ型の2種がある。 |
可視光通信 | 専用送信基盤を取り付けた LED 照明からデジタル信号を発生させ、ID 情報を伝達。 |
屋内で測位した情報を地理空間情報として利用し、ヒトやモノの位置の可視化、モニタリング、ナビゲーション、解析を行ったりすることをインドア マッピングといい、利用例としては以下のようなものがあります。
屋内測位情報はさまざまなシーンで利用することが想定されます。
次の事例では、屋内測位情報を空港の設備管理、人流解析、ルート案内等に、ArcGIS を統合的に活用しています。
また、次の例では、屋内測位で収集した顧客の位置情報から、顧客の導線を可視化し、ショッピング モール内において、店舗スペースの賃料を決定することに活用しています。
このほかにも、工場などにおいて、位置情報に基づいて侵入禁止区域等を通知することで、情報セキュリティや安全管理等に活用したり、現地作業状況、混雑状況を本部でモニタリングし、状況に応じた現場への指示・誘導等を実行したりするなど、さまざまなシーンでの活用が期待されています。