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GIS 基礎解説

座標系

 

座標系とは

地球上の特定の位置を表すために、GIS では座標が使われます。座標の組み合わせによって、建物の形状(ポリゴン)や道路の形状(ライン)などを表します。座標は、原点を基準とした位置によって表しますが、たとえばある目標物の位置を、A さんは「この交差点から東に 300m、北に 500m の地点」と表現し、B さんは「この建物から西に 700m、南に 500m」と表現したとします。原点(交差点と建物)や距離は異なりますが、両者とも同じ位置を指しています。

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 このように地球上にある目標物の座標を表現する方法はさまざまですが、地球上の位置を座標で表すための原点や座標の単位などの取り決めのことを座標系と呼びます。この取り決めにしたがって座標を表現することで、複数の GIS データを重ね合わせて表現したり解析したりすることが容易になります。GIS で扱う座標系には、地理座標系、投影座標系、鉛直座標系がありますが、ここでは地理座標系と投影座標系について説明します。

地理座標系

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 地理座標系は、3 次元である地球上の位置を緯度と経度で表現する座標系です。緯度は、赤道を 0 度として南北方向にそれぞれ 90 度まで表します。経度は、本初子午線と呼ばれる経線を 0 度として東西方向にそれぞれ 180 度まで表します。地理座標系では、地球の重心を原点とし、座標の単位は角度です。「原点」、「赤道の面」、「目標物の位置」の関係を角度で表したものが緯度であり(図中の北緯 40 度)、「原点」、「本初子午線の面」、「目標物の経線の面」の関係を角度で表したものが経度です(図中の東経 50 度)。

 基本的な考え方は上述のとおりですが、地球の形状は完全な球体ではなく楕円体であり、さまざまな楕円体の形状が定義されています。また、地球の重心と楕円体の重心を一致させるかどうかなどの基準もあり、国よって採用している楕円体の形状や重心位置の基準は異なります。

投影座標系

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 投影座標系は、3 次元である地球を 2 次元の平面に投影し、XY 座標で表現する座標系です。2 次元に投影するための方法を地図投影法と呼び、用いる投影法や設定する原点などの違いによって、さまざまな投影座標系が存在します。投影座標系における座標は、原点からの X Y 軸方向への距離(メートルなど)で決まります。

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投影座標系では地球の形状なども考慮して投影を行うため、地理座標系の定義も含まれます。ArcGIS では、次のような座標系に関するパラメーターを使用しています。

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※ 平面直角座標系、UTM 座標系は投影座標系であり、日本で使用される座標系の一種です。

地理座標系と投影座標系の特徴

地理座標系は、日本全国や世界などの広域に渡る範囲を一定の尺度を持った 1 つのデータとして管理できるという利点がありますが、地理座標系の座標は 3 次元における角度で表されるため、その座標を平面上で表現した場合、距離・面積・角度のいずれも正確ではありません。右の図は、地球表面に描いた同じ大きさの円を、地理座標系のまま 2 次元に表示した地図です。地域によって形状が楕円に変化したり大きさが異なったりしており、面積や角度などが正確に表現されていないことがわかります。

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 投影座標系では、用いる投影法によって、距離・面積・角度のいずれかを正確に表現できるという特徴があります。したがって、正しい形状での地図表現、図形の作図、距離や面積による解析などを行う場合は、投影座標系を用います。右の図は、地球表面に描いた同じ大きさの円を、正角図法(角度が正しくなる図法)の一種であるメルカトル図法を用いて投影した地図です。この例では、どの地域でも形状は円のままであり、角度を正しく表現できていることがわかります。しかし、地域によって円の大きさが異なり、面積を正しく表現できていないことがわかります。そのため、正確に表現したい要素に合わせた投影法を選択する必要があります。

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異なる座標系の重ね合わせ

どのような座標系に基づいて GIS データが作成されているのかがわかれば、原点や座標の単位が異なる座標系の GIS データ同士でも重ね合わせることが可能です。ArcGIS では、異なる座標系の GIS データをソフトウェア上で動的に投影変換して表示することが可能です。また、ArcGIS には、日本で使用される座標系の定義も含め、約 4,500種類の座標系の定義があらかじめ用意されています。

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