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GIS 基礎解説

測地系

 

位置はどのように決まる?

地球上の位置や高さを特定する際の情報として、一般的には緯経度の座標値や標高値が使用されます。位置や高さを座標や標高であらわすためには、何らかの基準が必要となります。測地系(測地基準系)は、地図作成や測量などにおいて共通的に使用できる経緯度や標高を定義するための基準です。測地系の定義は、地球の形や大きさ、座標原点などから構成されますが、この定義は国ごとに異なり、さらに同じ国においても時代とともに変遷しています。ここでは、測地系を構成する定義や日本の測地系について紹介していきます。

地球の形状と大きさの定義 -ジオイドと地球楕円体-

地球は山や谷など凹凸が存在し、このままの形状を基準とすると非常に複雑になります。そのため地球の凹凸をシンプルな形状にモデル化する必要があります。代表的な地球の形状のモデルにジオイドがあります。ジオイドは水が地球の重力や遠心力に逆らわず上を覆ったと仮定した場合の海洋面形状です。

しかし、モデル化されたジオイドにも起伏が存在し、不規則な形状です。そこで、ジオイドをシンプルなモデルで単純化し地球の形に近似した回転楕円体である地球楕円体が考案されました。

地球楕円体は、長軸(長径)と短軸(短径)を持つ楕円体です。長軸は赤道半径(地球の中心から赤道までの長さ)の 2 倍の長さ、短軸は極半径(地球の中心から極地点の長さ)の 2 倍の長さで表します。

測地系の適用範囲 -ローカル測地系と世界測地系-

測地系は、特定の国などの範囲で適用可能な「ローカル測地系」と世界的な範囲で適用可能な「世界測地系」に大別されます。時代的な流れではローカル測地系から世界測地系への移行が進んでいて、以下のような違いがあります。
ローカル測地系では、地球の特定地域の地表面に合致するよう地球楕円体の原点の位置が調整されます。 世界測地系では、人工衛星などを用いた観測技術の進化によって得られた地球の正確な形状と大きさをもとに地球楕円体が定義され、地球楕円体の原点が地球の重心と一致する座標系(地心直交座標系)が採用されています。

日本の測地系

日本においては、ローカル測地系である日本測地系が明治時代から 2002 年 3 月まで採用されていましたが、測量法の改正により 2002 年 4 月から世界測地系である日本測地系 2000 に移行しました。日本測地系 2000 では、準拠楕円体として GRS 80(Geodetic Reference System 1980:測地基準系1980)、 地心直交座標系として ITRF 1994(International Terrestrial Reference Frame:国際地球基準座標系)を採用しています。その後、2011 年の東日本大震災による地殻変動にともない、2011 年 10 月に日本測地系 2011 に移行しました。
これら日本で採用されてきた測地系以外でよく使用される測地系として WGS 84があります。WGS 84は、米国で採用されている世界測地系でGPS の運用に使用されています。ここまで紹介した測地系をまとめたのが以下の表です。

「世界測地系」という呼称は、世界的な範囲で適用可能な測地系の総称を指す場合と、各国で定義されている固有の世界測地系を指す場合があるので注意が必要です。
同じ世界測地系でも日本測地系 2011 と WGS 84 では、採用している準拠楕円体や地心直交座標系の種類が異なります。ただし、相互の差はごくわずかであるため、座標値の誤差はほとんどないものとみなされています。