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コロナウイルス:世界の繋がりが命を救う

 

 


2020 年 1 月末、パンデミックの恐れが高まる中、ジョンズ・ホプキンズ大学は、今や有名になった新型コロナウイルスのダッシュボードを公開した。これは新型コロナウイルス感染症
(COVID-19)の蔓延を追跡し、戦うために開発された地図ベースのツールである。このダッシュボードは、同大学のシステム科学工学センターのローレン・ガードナー氏が率いるチームによって開発され、何百ものニュース記事とソーシャルメディア上でのシェア、何億ものページビューを記録するなど、瞬く間に広まった。

世界的な健康危機に関するリアルタイムの情報を提供するダッシュボードが絶大な人気を博していることは明らかだが、その理由を理解するには、いくつかの分析が必要だ。

医療界は長い間地図を使い病気の広がりを理解してきた。最も有名なのは 1854 年にジョン・スノー博士のロンドンで発生したコレラの歴史的な地図で、場所と病気を結びつけたことだ。20 世紀初頭の疾病地図から、エボラやジカウイルスなどの最近のウェブマッピングまで、医療従事者は長い間、地図、そして最近では GIS を伝染病の追跡と対策に欠かせないツールと考えてきた。

疾患とデータの動き

病気との戦いにおける最大の課題の一つは、人類の移動性の向上だ。現在では、人はある場所でウイルスを拾った数時間後には地球上の他の場所で感染させることができる。このような移動性の高さは、伝染病の蔓延を遅らせる上で、科学者たちを深刻で不利な立場に追いやることになる。新しいウイルスに効果的なワクチンを作るには、まだ数ヶ月かかる。その間に、ウイルスは世界中の隅々まで簡単に到達してしまうのだ。

病気がこれほど早く移動するようになると、情報はさらに迅速に移動しなければならない。ジョンズ・ホプキンズ大学のダッシュボードが引き起こした激しい反応は、世界中の人々がいかに健康への脅威を追跡しようと熱心に取り組んでいるかを示している。このダッシュボードには、疾患の進行状況を把握するために必要な最新情報が表示され、理解しやすいフォーマットで一般公開されている。インターネットにアクセスできる世界中の誰もが、数回の短いクリックで COVID-19 について膨大な情報を学ぶことができる。

Web サービスを使用すると、GIS ユーザーはデータの一元的なホストや処理をせずに、異種データを簡単に取り込み表示することができる。これによりデータの共有が容易になり、情報の集約が迅速になる。

多くのダッシュボードでローカライズされた詳細を共有

ジョンズ・ホプキンズ大学のダッシュボードがリリースされてから間もなく、他の組織も GIS を使い同様のニーズに迅速に対応している。作成されたダッシュボードは、基本的な情報の他、特定のユーザー向けにカスタマイズされた情報を追加しているものもある。これらのツールのいくつかにはモバイル向けに最適化されており、スマートフォンやタブレットで一般ユーザーが利用しやすくなっている。


ジョンズ・ホプキンズ大学はArcGIS Onlineを使ったダッシュボードを公開。
ほぼリアルタイムで COVID-19 症例の拡大を追跡している(2020 年 3 月 20 日時点のスクリーンショット。)


香港のダッシュボードには、高密度の症例が確認された建物の場所と、現在の検疫所の場所が表示される。
(2020 年 3 月 20 日時点のスクリーンショット。)


国際民間航空機関(ICAO)は、世界のさまざまな地域における典型的な航空交通の接続性を現在の事例と比較して伝えるアニメーションのダッシュボードを作成した。今日のモビリティの向上による疾病の急速な拡散の可能性を示している。(2020 年 3 月 20 日現在のスクリーンショット。)


JAG Japan 社は日本の都道府県別の COVID-19 の症例数を表示した
(2020 年 3 月 20 日時点のスクリーンショット。)

疾病管理におけるテクノロジーの可能性

将来的には、ダッシュボードを使い、被害エリアの住民を重要な援助や資源のある場所に誘導することも考えられる。ダッシュボードマップは、利用可能なベッドのある病院、現在の待ち時間とともに医療援助を提供している診療所、営業している食料品店や薬局、マスクの購入場所などを確認することができる。深刻な被害を受けた都市では、この種の情報により結果が大幅に改善し、人命が救われることになる。

疾病の流行に影響を与えるもう一つの要因は、暦である。2014 年のエボラ出血熱と MERS の恐怖の間、毎年 200 万人以上のイスラム教徒が行う 6 日間のメッカ巡礼の旅をどうするかという問題に直面した。信者の多くは、何日も前のデータや噂を基に危険を冒して巡礼を続け、死に至る可能性のあるウイルスに感染し、帰国後には病気をさらに蔓延させる危険に身をさらした。

同様に、今回のコロナウイルスの大流行では、中国の旧正月が脅威となった。中国は、大人数の集まりを減らすため、旧正月の連休の開始を延期した。これは「ソーシャル・ディスタンシング」と呼ばれる公衆衛生介入である。その後、世界中の旅行者が入国を制限されている。最新の情報が入手できたため、北京、マカオ、香港の当局は、多くの盛大な祭典を完全に中止するという困難な決定を下した。

将来の疾病ダッシュボードには、予定されている文化的イベントや祝賀行事の場所を組み込むことで、旅行者へのリスクを正確に反映させ、意思決定を強化することができる。拡大する疾患と、場所と時間が限定されたイベントを関連させることにより、当局は曝露や拡散を低減できる可能性がある。

病気が意思決定に及ぼす影響

新型コロナウイルスは、過去のパンデミックと同様に、人々の移動手段や食生活、経済に影響を与えている。公衆衛生分野は現在の脅威に対処するための新たな方法を模索し、医療分野は治療法の提供や発見に向けての活動を続けている。リアルタイムで表示される地図ベースのダッシュボードは、これらすべての活動に情報を提供する上で重要な役割を果たしており、自分自身や地域社会を守ろうとする世界中の人々は理解しやすい情報を得られる。そして、データの透明性が高まり、当局が効率的かつ効果的に情報を発信し、急速に広がる病気に対する人々の意識を向上させるのに役立つのだ。


今回のアウトブレイクへの関心とその広がりを理解するための地図の価値は増大し続けている

 

原文:Coronavirus: World Connectivity Can Save Lives

 

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掲載種別

掲載日

  • 2020年4月20日