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「地図のまち(都)北九州!」を目指して

北九州市

 

3市2町の共同利用GISを稼働させた北九州市による、 庁内の業務効率化・高度化と自治体間の連携強化に向けた取り組み

課題

導入効果               

イントロダクション

福岡県北東部に位置する北九州市は、1963年に周辺5市が合併して三大都市圏以外で初の政令指定都市となった。1901年に操業を開始した八幡製鉄所に代表される重化学工業で栄えた一方、深刻な公害にも悩まされてきたが、市民・行政・企業一体の取り組みにより公害を克服し、現在は環境モデル都市及び環境未来都市として認定されている。

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図1:共同利用GISに参加する3市2町

 

市制50周年を迎えた2013年、直方市、行橋市、香春町、苅田町(図1)と共に政令指定都市で初の広域GIS連携を開始し、10月22日には、多くの参加者を集めた記念講演会が開催され、地域情報ポータルサイト「G-motty(ジモッティ)」の紹介や、今後の展望が紹介された。

北九州市は、全庁的な地理空間情報の活用による業務効率化・高度化を図ると共に、思いを共有する自治体と連携したGISコミュニティ形成を目指している。民間企業に依存しない自治体同士の技術支援や、地理空間情報の整備・共有を実現し、危機に強いまちづくりの推進に役立てる。さらに、率先的な市民参画による情報共有、コミュニケーションの形成を目指している。

背景

北九州市では、2010年時点で約30のGISアプリケーションが200台程のPCで運用されていた。5年間かけて進めてきた基幹システムの再構築完了に伴い、GISの統合化に向けた検討を開始した。庁内のGIS導入状況や地図の利用状況を調査した結果、ArcGIS自治体サイトライセンスにより、個別GISの運用経費や地図購入費の削減が可能なこと、北九州市単独ではなく周辺自治体と共同利用することによりライセンス費用が圧縮できることがわかった。隣接する直方市(ArcGIS事例集Vol.4に掲載)が、2010年にArcGIS自治体サイトライセンスを導入し、業務効率化と費用削減において大きな成果を上げていたことも決め手となり、ArcGIS自治体サイトライセンスの導入を決めた。

共同利用GISの運用体制

ArcGIS自治体サイトライセンスは、GISアプリケーションとしてだけでなく庁内のGIS基盤として構築し、利用されている。そのため、参画者はコンテンツ、つまり地図情報をどのように見せるかに専念することができる。共同利用GISの各参加自治体からGIO(Geographic Information Officer)を選任する地域GIOを設置し、職員の異動に影響を受けないGISの運用体制を構築している。GISに関する業務の取りまとめや勉強会の企画・運営を行い、自治体間でのGIS技術の支え合いを行っているのだ。これにより、局所的な豪雨等で参加自治体が被害を受けた場合にも、他の参加自治体が迅速に支援を行うことが可能となる。また、庁内及び自治体間で共有するGISデータは、ArcGIS Online上で管理している。これらは、”業務カタログ”と呼ばれ、GISを利用した業務の効率化や自治体間での業務の平準化に役立てる。

導入効果

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図2:最寄施設検索アプリ「いのうくん」

住民に公開されている地域情報ポータルサイト「G-motty(ジモッティ)」では、行政が保有しているデータ(予定避難所や道路網図等)と民間企業が保有する地図情報を融合させている。背景地図には株式会社ゼンリンのいつもNAVIをプラグインで組み込み、市民生活に密着したデータを提供して住民向けサービスを強化している。

「G-motty」が提供する最寄り施設検索アプリ「いのうくん」(図2)では、任意の場所から周辺情報を知ることができる。ピンポイントではなく、「この辺りの情報を知りたい」という人間の感覚に近い空間検索機能を搭載し、他の地図アプリケーションとの差別化を図っている。

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図3:北九州市と直方市を跨ぐ浸水想定区域マップ

また、行政界が住民の生活範囲と異なることはよくあるが、行政界を越えたマップが作成できるのも、共同利用GISの強みの1つである。図3のように、2つの市を跨ぐ地域の浸水想定区域マップは、市単独のGISでは作成することはできなかった。今後、交通事故や猿などの鳥獣被害対策等でも同様のマップが作成される予定である。

モバイル端末アプリの導入も積極的に進めている。また、自動販売機調査アプリ(図4)が既に稼働しているなど、住民からの投稿により、”あると便利な地図”を住民自らが作る仕組みも整備している。固定資産税GISや基準点管理などのQRコード付帳票等のアプリ開発も進めており、今後は官民共同でのアプリ開発も広がっていくだろう。

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図4:自動販売機調査アプリ

 

今後に向けて

北九州市は、市民・行政・企業が日常の生活や業務で自然と地理空間情報を利用し、地図を使ってコミュニケーションを図ることを目指しており、具体的には3つの目標を掲げている。

 

  1. みんなが地図を“お箸のように”使えるまち(都)
  2. みんなが地図で“つながる“まち(都)
  3. みんなが欲しい地図を”みんなの手”で作るまち(都)

 

市民・企業・行政が一体となって世界に誇る環境都市を作り上げてきたように、「地図のまち(都)北九州!」を全国に発信し、共同利用GISの取り組みに賛同する自治体や民間企業の参加を募集しているという。興味のある方は、北九州市総務企画局情報政策室までご連絡を。

 

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掲載日

  • 2014年5月15日