事例 > ローコストな方法で地図データを活用し、行政事務の効率化を試行する

事例

ローコストな方法で地図データを活用し、行政事務の効率化を試行する

福岡県直方市

 

「自治体GIS利用支援プログラム」によってArcGISを導入した直方市。そして、その効果は?

汎用GISであるArcViewの特性を十分に活かし、多種多様な業務への適用を図り新しい成果を出し続ける直方市では、若手職員による斬新なチャレンジが続けられている。

ArcGIS導入に至る経緯

福岡県直方市では、2000年10月に建築都市課で都市基本計画図の導入に伴い、当時下水道課に所属していた松田氏は、フリーのCADソフトを利用して各種データの重ね合わせを手動で行うことにより、既存の地図データを活用する試みを始めた。その後、水道台帳システムや道路台帳システムが導入され、2003年4月には、 1/500道路台帳図、20cm高解像度オルソ画像、地番図が整備され、フリーGISソフトを用いてローコストな地図データの利活用を図っていた。

2005年6月にはフリーGISでの限界を感じ、自治体GIS利用支援プログラムの参加を決意した。

「プログラムへの参加に関して、GISはまだまだ難易度の高いアプリケーションだと感じており、庁内に既に導入されている個別GISの更新も適宜行われていないことから正直不安がありました。しかし、本プログラムを利用することでGISを簡単なOAツールとして活用することができれば、GISの難解なイメージを払拭することができ、また、GISが様々な業務に活用され、職場に浸透していけば個別型GIS運用や統合型GISの導入もスムーズに行くのではないかという期待を持っていました。」と当時を語る松田氏。

  

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ArcReader導入による土地評価業務の変化

松田氏は、プ口グラム参加後にArcViewで農業用施設台帳、市有地管理台帳など様々な地図を作成し、作成したマップは、ArcViewの拡張機能であるArcGIS Publisherにて、無償のGISビューワArcReaderで参照可能な形式に変換し、庁内ネットワークの共有フォルダに格納し情報共有化を図っていった。

Arc Readerを導入後、固定資産税係において様々な業務の手法、所要時間の変化及び改善が確認できた。その中でも、土地評価業務について業務の変化が顕著に見受けられた。導入前と導入後を比較して、改善点としては、調査前準備の段階で紙面の地図を広げずに済むこと、調査後の紙面を使った確認作業が無くなったことが大きな違いとなった。

  

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また、市が保有する土地などを市民が購入を希望する場合に市有土地の払い下げに対する問い合わせがあるが、この問い合わせ対応にもGISが有効に活用されている。「現況は把握しているが地番がわからないといった問い合わせを多く受けます。問い合わせがあった場合、払い下げが可能かどうかを調査・返答するまでの時間に関してGISを導入したことによる時間短縮の効果は大きいです。」財産管理課 管財・用地係の山中主任は言う。ある一定期間にあった問合せ時間をグラフにまとめた。

  

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Arc Readerを利用することによって、ステップ1で問合せを受けた際に地図上で地番が判明、さらに個別属性を表示することによって各種情報を確認できるため、必然的にステップ2の作業が必要なくなる。また、ステップ4では、GISデータに紐付いた路線価などを表示することも可能なので、効果的な説明資料の作成にも貢献する。現在、ArcViewはデータ更新時のみの利用として限られた職員に利用されている。Arc Readerは、庁内16課80台のPCにインストールされ、毎日の業務で地図の参照に利用されている。

  

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GISの更なる利用促進に向けて

直方市では現在、中心市街地整備振興課 松田氏を中心に、総合政策部、市民部、建設部などの有志によって形成された「GIS研究グループ」を起ち上げ、更なるGISの利用促進に取り組んでいる。その一環として、「ArcGISの利用状況に関するアンケト調査」を庁内で実施し、今後の普及のために何が必要なのかを模索している。また、将来の統合型GISを見据えて各部署へのヒアリングの結果を「空間コンテンツ流通マトリックス」として、業務上で作成及び所有している地図の配布状況と必要としている地図の利用状況を調査して、GISデータの利用促進と効率的な運用に寄与している。自治体GIS利用支援プログラムによってArcViewを1年間利用してみた感想として、松田氏は次のように語った。「導入当初の課題は概ね解決できたと感じています。また、利用プランについてもArcReaderユザがある程度定着したことに満足しています。もっとも導入効果があった点としては、庁内の異なる部署に分散した煩雑な情報を地図データとして管理することにより瞬時に情報を把握できる点です。問合せに対する住民サービス向上に効果がありました。その背景として、ArcReaderの操作が容易であり誰でも気軽に利用できることがあります。ただし、ArcViewについては操作が難しいところがあり、データ更新ができる職員の育成がまだ十分ではありません。」このような状況の中、松田氏は職員を対象に「ArcGIS地図作成手順」と題し、研究グループ内で勉強会を行ってスキルアップを図っている。

プロフィール


手前から、
松田欣也氏(建設部中心市街地整備振興課)
山中伸朗氏(総合政策部財産管理課)
加藤立寛氏(市民部税務課固定資産係)



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2008年1月1日