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医療分野におけるGISの可能性

新潟大学

 

DPC導入により効率向上への取組みが進む医療業界。
その研究の舞台裏でGISが稼働中!

DPC導入、逆紹介状況解析、二次/三次医療解析。
医療業界の様々なシーンでGISの可能性を探る。

  

大学病院へのDPC導入

2003年4月より大学病院・特定機能病院において、DPC (Diagnosis Procedure Combinationの略) 試行が開始され、新潟大学医歯学総合病院(以下、当院)は同年7月に導入した。
DPC導入以前は、医療費は診療行為ごとに計算する「出来高払い」で算定されていた。本方式は、診療内容(薬の量や検査回数)ごとに出来高で計算し、それを積み上げて合計する方法である。この場合、実際の症状に関係なく、医療内容に比例して医療費が増加していった。それに対し、DPC方式は、入院患者の病名とその症状・治療行為をもとに厚生労働省が定めた1日当たりの金額からなる包括評価部分(投薬、注射、処置、入院料等)と出来高評価部分(手術、麻酔、リハビリ、指導料等)を組合せて計算する。この方式は、「同じ疾病ならどの人も医療費は同じ」という考えにより費用が決定されており、過剰な診療をすると支出が増えてしまう仕組みになっている。
DPCは、単に支払方式の改革だけではなく、良質な医療、効率的、効果的な医療、医療の透明化等を図るために実施されるものである。
当院危機管理室 鳥谷部教授は、これらDPC関連情報に関する研究として、GISを活用した「関連病院への逆紹介状況解析」と「大学病院におけるニ次/三次医療の解析」を行った。

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DPC関連情報とGISを活用した逆紹介状況解析

DPCの導入は、在院日数によって逓減する診療報酬請求額が設定されていることから、在院日数短縮のインセンティブとなっている。実際、DPCが導入された病院では、当院も含め大幅な在院日数の短縮が見られた。在院日数の短縮によって、急性期を過ぎた患者をどのように亜急性期を担当する病院に逆紹介するかという問題と、病床稼動率を維持するために紹介患者をどのように確保するかという問題が、急性期病院にとって重要な課題となった。すなわち、DPCが導入された病院においては、関連病院からの紹介と、関連病院への逆紹介というニ重の意味において、病病・病診連携の重要性が増している。この課題のうち逆紹介推進を目的にGIS解析を行った。
逆紹介を推進するには、現状を解析し、どの地域に逆紹介を行う上での支障があるかを把握し、その地域にあった対策を立てる必要がある。ある地域に逆紹介を行うことが難しい状況が存在すれば、その地域には在院日数が長い患者が集積すると推測される。逆紹介の情報は、DPCの退院情報と、DPCごとに標準化した患者ごとの在院日数の地域差で把握することを試みた。主要診断群や年齢で層別すると、各層に特徴的な逆紹介の状況の地域差がみられた。DPCの退院情報では得られない連携の地域差やその原因を、標準化した患者の在院日数の空間解析で得ることができた。
結果、GISを用いることによって、逆紹介の進んでいない診療施設の所在だけでなく、逆紹介が進まないことで患者在院日数が伸びている地域を特定したり、逆紹介が進まない原因を詳細に検討したりすることが可能であった。

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他病院へ逆紹介した患者の集積と、在院回数が長い患者の集積。逆紹介された
MDC05(循環器疾患)患者の集積(AL矢印)と、LOSSOS(標準化在院回数)が高値であった
患者の集積(A2、矢印)を、患者個票データからnormal kriging処理して図示したもの

  

DPC情報を利用した大学病院における二次/三次医療の解析

日本では、国民皆保険制度のもと、原則として医療機関へのフリーアクセスが確保されている。大学病院では、高度かつ専門的な医療を必要とする入院診療(三次医療)を行う一方で、高次医療を要しない一般的な入院医療(二次医療)も併行して行っているのが現状である。しかしながら通常の入院医療である二次医療と、高次医療である三次医療がどの程度混在しているか、それぞれに対応する実勢の医療圏はどの程度の広がりか、については明らかでない。またDPC導入が直接的ないし間接的に医療機能の分化を促すと推測されるが、大学病院における二次医療、三次医療の混在状態に影響があったかどうかは明らかでない。
そのため、DPCの調査結果を利用して、大学病院入院患者において二次医療および三次医療を行った患者の割合とそれに対応した実勢診療圏を推測し、その年次変化を検討した。解析方法としては、A群(三次医療を要する疾患)、B群(二次医療を要する疾患)の割合と年次変化を調べるために、入院患者の過去のDPCを平成18年度の定義でコーディングし直した。次に入院患者を住所でジオコーディングし、GISを用いて道路を用いた移動時間を基にした各groupの年毎の実勢診療圏の面積を算出した。
大学病院に頻度が高いDPC(A群)は、一般病院に頻度が高いDPC(B群)と比べ、意識障害、手術、侵襲的処置、合併症をコードに含むものが有意に多かった。当院では、A群とB群の合計で入院患者全体の約80%を占め、両者の比は約3であった。入院患者全体に占めるA群及びB群の割合は、経年的変化はみられなかった。A群患者の80%をカバーする診療圏は新潟県の約1/3に及び、B群患者の80%をカバーする診療圏も一般病院の診療圏よりも広域だった。
経年的にみると、A群とB群の診療圏の差が少なくなる傾向が見られた。考察として、確かに三次医療が有意であるものの、二次医療が無視できない割合で混在していた。この混在状態と実勢医療圏は、病院の機能分化を促す近年の医療制度変革にかかわらず、2003年のDPC導入ほとんど変化がないと考えられた。

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当院の近隣にある民間病院(A)、当院のB群患者(B)、当院の
A群患者(C)それぞれにおいて80%カバーする実勢診療圏

  

これからの取組み

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「GISをはじめたのは4~5年前です。それまではGISを触ったことは全くありませんでした。新潟大学は2003年7月にDPCを導入しましたが、DPC導入に伴い、関連病院への逆紹介や二次/三次医療の混在分析など、地理情報を利用するとかなりの効率化が図れそうな話題が出てきたため、GISを使いはじめました。一旦使い出すとのめり込む性質で、ArcGISのDesktopをはじめ、エクステンション、MapCallと色々使っています。GISは、操作を覚えるのが大変ですし、ファイルも沢山増えてしまうなど、苦労することも多いですが、今では研究において必要不可欠なものになっています。今回、GISで2研究を行いましたが、エリアが新潟県に限られてしまっています。この研究結果は、もしかすると新潟県特有のものかもしれません。今回実施した研究内容を全国エリアで実施して、研究の精度を高めるのが、これからの目標です。データ収集など課題が山積みですが、研究を続けて行きたいと思います。」と鳥谷部教授は、今後の抱負を語ってくれた。まだまだ利用事例の少ない医療分野において、これからも先駆的取り組みを続けてゆくであろう。

プロフィール


危機管理室 鳥谷部 真一 教授



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掲載日

  • 2008年1月1日

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