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開催レポート
基調講演
第8回GISコミュニティフォーラム基調講演は、5月31日及び6月1日に行われました。
5月31日の基調講演では、冒頭に弊社社長正木及びESRIジャパンユーザ会会長の福井 弘道 教授が挨拶され、続いて、Linda Peters, 片山 善博 氏が講演されました。
米国Esri社 国際ビジネス開発担当
Linda Peters
『Understanding Our World』
冒頭で米国Esri社社長ジャック・デンジャモンドよりビデオレターによる挨拶がありました。東日本大震災の対応現場におけるGISユーザの皆様の尽力を労われ、福島原発関連等で今後もGISが活用されていくだろうと述べました。近年SaaSが普及し、新しいGISのパターンとしてArcGIS Onlineが利用されています。ArcGIS Onlineはクラウドベースのサービスであり、ユーザはオンプレミスとしてもパブリッククラウドとしても利用が可能です。GISは社会につながるネットワーク上の存在として更に重要になってきます。最後に、これまでGISは官公庁、大学、研究機関などで広く使われてきたが、世界では民間企業による利用が広がりを見せていますと述べ、民間分野担当のリンダ・ピータースを紹介しました。リンダ・ピータースは、小売り、製造、金融・保険などの民間各業種を担当しており、利用事例として保険会社によるビッグデータの活用を紹介しました。この保険会社では40万台以上の車両から収集したデータから道路網の危険個所やリアルタイム交通情報を取得し、リスク管理や顧客への情報提供に役立てていると述べました。ArcGIS 10.1では、クラウドによる情報共有が容易になり、新しいビジネスチャンスが生まれ、仕事のやり方が変化していくでしょうと述べました。デモンストレーションを交え、ArcMapで作成したデータをそのままサービスとしてWebで公開し、サービスはArcGIS Onlineで管理され、他のデータレイヤーとWeb上で重ね合わせ解析を行うワークフローを説明しました。また、GISユーザでない方にも地理情報が簡単に扱えるようになったことを強調しました。マイクロソフトとの連携によるEsri Maps for Officeもそのひとつです。Excelのインターフェイス上に地図機能のリボンを追加することにより、Excelシート上のデータから簡単にマップを作成し、更にPowerPointスライド上に簡単に表示する事が出来るようになりました。本講演で紹介した様々な新しいテクノロジーによりGISは転換期を迎えたと述べ締めくくりました。
慶應義塾大学 法学部 教授 前総務大臣・元鳥取県知事
片山 善博 氏
『震災以降の日本』
片山氏は、鳥取県知事在任中の防災に対する取り組みや、総務大臣在任中の東日本大震災対応における経験から、平時における非常時に対する準備の重要性を説かれました。鳥取県は2000年10月に大地震を経験したが、行政と研究者が情報を共有し、防災訓練も被災想定地で行うなどしていたため混乱が少なかった。また、被災住宅を建て替える場合に助成金を出したため流出人口が少なかった。これに対し、東日本大震災においては、科学者と行政の接点がなく情報共有ができていなかったため、SPEEDIなどの情報を被災者の為に利用する事が難しかった点が問題であったと述べました。 また、非常時には非常時の対応をしなければならないと強調されました。平時には予算がなければ防潮堤は作れないだろうが、非常時には予算を捻出して防潮堤を作るなり、高台に移転してもらうなりして被災者を急いで助けることのできる仕組みを作っておくべきだと述べました。
名古屋大学 減災連携研究センター長・大学院環境学研究科 教授
福和 伸夫 氏
『東日本大震災と歴史に学ぶ今後の地震対策』
福和氏は、過去の自然災害の歴史を鑑み今後の災害対策を考えていくことが非常に重要だと述べました。東日本大震災では、未曽有であるという表現が使われたが、例えば1854年の安政東海地震では津波に襲われた下田の様子が絵に残っており、今回の災害の記録映像とまったく同じ光景が記録されている。岩手では同様の経験が後世に伝えられ今回の災害では死亡者数を低減させることに繋がった。自然災害は必ず繰り返すのであり、東海・東南海・南海地震は必ず発生する。その時に本当に事業継続ができるのか、科学と社会学を組み合わせ本気で対策を練ることが求められていると述べました。そして、本気の人たちが作る頑強で、単純で、本番に役に立つシステムが望まれていると述べ、最後に、危うきは避ける、個々で備える、自ら逃げ、助け合う上で地理情報システムは非常に有用であると締めくくりました。
北海道大学大学院 水産科学研究院 教授
NPO法人Digital北海道研究会 理事長
齊藤 誠一 氏
『海洋空間情報の活用-新時代の水産業の復興へ』
齊藤氏は、1990年頃から発展を遂げてきた海洋GISについて、その特徴と重要性を述べた後、現在進行中のプロジェクト、函館バイオマリンクラスターと震災復興計画での利用について解説しました。海洋GISの特徴としては、時間を含めた4次元性、魚群回遊などにおけるダイナミズム、衛星画像との統合などがあるが、Esri社が提供するArc Marineでは5つのカテゴリで海洋データモデルを整理しこれらの特徴に対応していると述べました。海洋基本法と海洋基本計画が制定されたように、海洋立国日本の発展は非常に重要である。その発展に寄与すべく函館バイオマリンクラスターでは、水産海洋情報を活用し気候変動にも対応した漁業、養殖業等を持続可能にする海洋環境計測予測システムなどを構築し、モデル化した情報はWebGISを通じて漁業従事者などに配信していると述べました。震災復興計画への利用では、東北沿岸域の水産業の復旧・復興プロセスにおけるツールとして、衛星画像とリンクした様々な海洋情報の提供をWebGISで行うなどの支援を行っていると述べました。
株式会社 野村総合研究所 コンサルティング事業本部 ICT・メディア産業コンサルティング部 上級コンサルタント
石綿 昌平 氏
『スマートフォンにより加速するリアルとネットの融合』
石綿氏は、先進国と発展途上国でのスマートフォンの普及について、携帯電話は今後殆どスマートフォンになり、インターネットの利用はPCからスマートフォンに移行し、普及台数ベースでもスマートフォンがPCを越えていくと述べました。最新のスマートフォンのアプリケーションの一例として、どこのお店のどの棚にどの商品がいくらで売られているなどの情報を提供するようになっている。このような動きは消費行動の追跡を可能にし、どの人がどの情報を見てどのように移動したかなどの情報が明らかになるものであるとのべました。インターネット関連市場の市場予測としては、Eコマース分野の規模が最も大きく拡大率も大きい。この市場におけるオンライン to オフライン(O2O)の動きが、サービス業をEコマース化することになる。本来店舗に来ないはずの人(ネットを見ている人)を実際の店舗(リアル)に送ることができるという事であると述べました。最後にリアル情報をネットにアップロードする技術が今後更に重要になると締めくくりました。
懇親会
スタートは、酪農学園大学 金子正美先生からご挨拶と乾杯を頂戴し、賑やかに懇親会が始まりました。参加者は200人を超え、人の輪が2重にも3重にも広がり、GISコミュニティの活発な情報交換の場になりました。恒例のマップギャラリー受賞発表では、上位5位までの表彰が行われ、大きな拍手とともに受賞者の喜びの声もお聞きすることができました。
懇親会会場 | マップギャラリー表彰 1位 NPO法人 地域自然情報 ネットワーク、 (株)環境指標生物 |
マップギャラリー表彰 2位 立命館大学 歴史都市防災研究センター |
マップギャラリー表彰 3位 GIS-Landslide研究会 |
マップギャラリー表彰 4位 酪農学園大学 環境GIS 研究所 |
マップギャラリー表彰 5位 筑波大学 大学院人間総合科学 研究科 環境デザイン研究室 |
スポンサー展示
全27社による様々なGISソリューション、GISコンテンツ及び周辺機器の紹介が行われました。参加者はそれぞれ興味あるブースでの情報収集を行っておられました。
学校・研究機関・NPO展示
全7団体による、ESRIジャパン製品を利用した研究成果や活動内容の紹介が行われ、各ブースで終日、参加者との活発な意見交換が行われました。
マップギャラリー
毎年恒例のマップギャラリーには今年は25作品が集まりました。懇親会の表彰式では、お酒の入ったリラックスムードの中、基調講演を行ったLinda Petersよりクリスタルトロフィーと副賞が入賞者へと手渡されました。
ESRIジャパンソリューション展示
農業、森林、自治体、教育、防衛、ビジネス、被災者生活再建支援などの業種・分野に特化したソリューション、そしてモバイル、地理空間情報ポータル、データといった最新テクノロジを紹介する展示が行われました。各ブースとも参加者が熱心に説明を聞いたり、活発な質疑応答が終日行われました。
ESRIジャパン製品展示
今年の製品展示ブースは、お客様と各製品担当者がじっくりと対話ができるようなブース レイアウトに変更しました。その効果もあってか多くのお客様に立ち寄っていただき、ArcGIS 10.1 の新機能や、ご興味のある製品の機能や操作についてなど、たくさんのご相談やご質問をいただきました。その内容の幅広さから、さまざまな業務で使用されるGISの重要性がさらに高まってきていることを感じました。
デモンストレーションエリア
大型モニタを使ったデモンストレーションエリアでは、お役立ち情報から最新の情報まで様々な製品の5つのデモンストレーションを 1 テーマ 15 分で実施し、ブースを取り囲むように多くの方が集まり説明に耳を傾けていました。