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オープンデータで業務効率化と地域社会の連携を促進し経済活性化を狙う ロサンゼルス市

 

映画産業の発祥の地であり、フィットネスや移動式屋台といった流行を生み出してきたロサンゼルス市は、新しいアイディアに対するインキュベーターである。そのロサンゼルス市が Esri 社と協力し、行政・企業・その他団体におけるイノベーションを促進するための GeoHub を立ち上げた。

ロサンゼルス市長であるエリック・ガルセッティ氏が 2016 年 1 月 29 日公開を発表した GeoHub は、市職員や企業、アプリ開発業者、NPO 法人、市民がオンラインポータルを通じて、市が所有する位置情報に基づくデータにアクセスすることができる仕組みである。データは、シェープファイルやKML、スプレッドシード形式でダウンロードすることができるほか、ArcGISを利用したオンラインマップとして閲覧することもできる。この GeoHub は、市が持つ位置情報データを LaaS(a location-as-a-service)プラットフォームに統合することで、従来の静的なダウンロードサービスとは違い、継続的に更新されていくデータに直接アクセスしたり、ダイナミックなアプリケーションをオンザフライで作成できるようにしている。


市のデータを公開することで、市業務の効率化と地域社会パートナーシップの促進を図る

GeoHub は、ロサンゼルス市をオープンデータと市政改革への取り組みにおける世界的リーダーにするというガルセッティ市長の戦略の一つである。オープンデータへの取り組みは、スタートアップ(※)や芸術など、様々なアイディアを生み出すロサンゼルス市において、業務の効率化、市と地域のパートナーシップや行政への市民参加の促進を図ることを主な目的としている。2016 年 1 月 29 日にラ・クレッツ・イノベーション・キャンパスで行われた GeoHub の公開セレモニーでガルセッティ市長は、「GeoHub は、私たちの生活をより良くしていくために、行政への市民や企業の参加を促進するとともに、市民サービスの提供方法の再構築に役立つだろう」と述べている。

自由に使えるデータ

多くの地方自治体と同じように、ロサンゼルス市ではリソースマネジメントや意思決定に GIS を活用している。業務に GIS が大変有益なツールである一方で、それぞれの部署が管理するデータやサービスは、必ずしも共有できるように整備されてるわけではない。GeoHub では、情報公開を妨げているボトルネックを取り除き、それぞれの部署がリアルタイム(またはリアルタイムに近い形)でオンライン上にデータを公開することで業務効率化を図ることを目的としている。部署の垣根を超えて様々なデータセットにアクセス可能にすることで、公共の安全対策やホームレスといった課題への対応力強化が期待されている。

「全ての警察官や消防署員、緊急作業員、緊急救援隊員がいつでも、どこでも市のデータにアクセスできるとしよう。公共の安全対策担当者は地図データを基に、リアルタイムな意思決定ができるようになる。GeoHub は、これを実現させるのだ」とガルセッティ市長は述べ、さらに消防隊員がポータルを利用すると「iPad やモバイル端末を携帯している消防隊員が地震などの緊急対応に呼ばれたとする。GeoHub を活用することで隊員は、建物の検査状況、一番近い消火栓の場所、排水路、街灯など、緊急通話の内容以上の重要な情報を得ることができ、緊急対応の迅速化につながるのだ」

階層から横のつながりへ

消防隊員が GIS サービスにアクセスする上記の話は、市の業務のパラダイム・シフトを表している。Esri社 ジャック・デンジャモンド社長は、ロサンゼルス市が階層的な意思決定を廃止しネットワークベースの GeoHub を選択したことによる市民サービスへのメリットについて以下のように述べている。「地図を検索し、それらをマッシュアップや統合することで、物事のありようを直感的に見抜くことができます。それは、より良い意思決定につながります。GeoHub は、コンテンツを共有する基盤を平坦化していると言えます。つまり、情報やフィードバックがステークホルダー(一般の人々を含む)の間で自由に共有されるネットワークベースのモデルは、地域をより民主的な政策立案に導くことになるのです」

世界で最も大きなインキュベーター

ガルセッティ市長のオープンデータプラットフォームに対するビジョンは、業務の効率化だけでなく、市や大学、NPO法人、企業、スタートアップの間のパートナーシップの構築も目的としている。例えば、ロサンゼルス市にとってスタートアップの存在は、潜在的な経済活性化につながるだけでなく、市の課題を解決するためのコラボレーション創出の機会の可能性を表していると言えよう。実際に、そのようなパートナーシップの一つが、GeoHub 開始が宣言された場所であるラ・クレッツ・イノベーション・キャンパスだ。ロサンゼルス市水道電力局が持つラ・クレッツは、ロサンゼルス市中心部で芸術が盛んな地区に位置し、ロサンゼルス市のクリーン経済を支えるスタートアップや科学者、エンジニア、政策立案者がエネルギーソリューションを開発するクリーンテック インキュベーターである。GeoHub は、交通量の改善や温室効果ガスの排出など、空間的に関連のある事柄の課題解決に興味を持つスタートアップに同様の機会を提供し、また、開発者は市のデータやオープン API にアクセスし、販売可能なアプリを構築することができるのだ。

行政透明性にアプリを提供

オープンデータの考え方は、GIS プロフェショナルやデータ学者には目新しいものではないが、一般的にそのコンセプトは比較的新しい。シンプルで直感的なユーザー体験を提供し、透明性と人々の行政への参加を促すデザインのWeb マッピングアプリが特長のGeoHubでは、インフラや安全対策、交通、行楽など、様々なカテゴリー毎にデータの検索や地図の閲覧ができる。例えば、「Street Wize」のマップでは、市周辺で実施または予定されている道路工事について事前に地図上で確認し、遅延を回避することができる。「Vision Zero」では、データに基づいた方法により 2025 年までに交通事故死傷者の撲滅を目標としたマップを公開している。また、「Road to 2400」では、ロサンゼルス市が 2200 の道路分の予算で舗装した 2400 の道路について掲載している。


「Road to 2400」マップ 2,200の道路分予算で舗装された2400の道路を閲覧できる


「Street Wize」マップ 市周辺で実施、予定されている道路工事場所を確認できる

今後の展望

GeoHub は、行政のオープンデータイノベーションの新たな時代の始まりを表している。一つの LaaS プラットフォームに市が持つ様々なデータセットをまとめることにより、ロサンゼルス市は非効率化の原因を取り除き、スマートで安全な市をつくるための取り組みを行っている。ロサンゼルス市民が様々なデータを直感的なアプリで利用することで、市民が行政を形作る大きな役割を果たし、また、スタートアップに機会を提供することで、ロサンゼルス市はハイテク革新の波に乗り続けることができるのだ。

※比較的新しい分野で市場開拓フェーズにあり、急成長を遂げている企業や事業

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掲載日

  • 2016年7月26日

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