ArcGIS Engineベースの“HDVGPS VIEWERソフト”で、道路付属物情報と位置情報を同期・管理し効率化を図る。
朝日航洋株式会社(トヨタグループ)は、1955年の創立以来、空間情報事業と航空事業を二本柱に発展を続けてきた。
空間情報事業はリモートセンシング技術を元とした3次元空間デジタル測量・解析技術で、国や地方公共団体、民間企業等をはじめとするクライアン卜に半世紀にわたりさまざまな地理情報空間データを提供し、貢献してきた。
航空事業部では、ヘリコプターとビジネスジェット機を機軸とし、国内外で幅広く総合航空サービスを展開。常に業界をリードするその実績と高い技術力が評価されている。
これら二本柱の事業により、常に地図情報コンサルティングのエキスパー卜として、新しい市場ニーズに対応したビジネスを創造・提供している。
本事例で紹介するITSソリューション部は、セカンドステージに入ったITS社会の実現に向けて、次世代デジタル道路地図の研究開発に取り組んでいる。そして、カーナビコンテンツの鮮度と精度の向上と、コスト削減をゴールに掲げた地図データプロバイダーを目指して躍進している。
ITSソリューション部では、国内・国外に関わらず高精度のナビ用コンテンツを自動車関連メーカーに供給している。それらナビ用コンテンツを取得するためにハイビジョンカメラとLBSユニットによる道路付属物情報収集システムを搭載した車両を用いて調査を実施している。
本調査において取得するナビ用コンテンツは、主に方面看板をはじめとする道路付属物情報である。
例えば方面看板情報は、看板に記載されている情報を取得して、はじめてコンテンツとしての価値が出てくる。普通のカメラで撮影した場合、看板の下に記載されている文字情報を取得することは非常に困難である。ハイビジョンカメラを用いることにより、これら文字情報を取得することも可能となる。
調査風景
ナビ用コンテンツを取得するための国内調査は、毎年約15,000kmにおよぶ全国高速有料道路と、約1,750箇所の高速インターチェンジで実施している。
国内調査だけでなく海外調査においても、走行調査が実施されると、位置情報とそれに同期付けされた撮影画像を取得することができる。それらの情報は、撮影後社内に持ち帰りチェックを行うが、そのチェックするためのシステムを今回、ArcGIS Engineをベースに開発した。本システムは、“HDVGPS VIEWERソフト”と呼んでいる。
HDVGPS VIEWERソフト本システムで確認されたデータは、自動車関連メーカー向けナビ用コンテンツとして提供されている。
国内調査で取得したデータコンテンツ提供の手段として自動車関連メーカーへの直接販売の他に、「ROAD TRAFFIC SIGN MAP」というサービスサイトを公開しており、ここから簡単に閲覧・購入することもできる。
ROAD TRAFFIC SIGN MAPトップページ
海外において調査を実施する際、ITSソリューション部では、HDVGPS VIEWERソフトの前にも、調査データ確認用システムを所有していた。ただ、本システムは国内の特定地図しか表示できないシステムであったため、海外で使用するには不向きであった。海外で入手できるデータは殆どがシェープファイルである。そのため、海外で取得する地図データを容易
に利用するため、ArcGIS Engineベースのシステムとした。
ニュージーランドでの方面看板調査
「これまでも調査データ確認用システムは所有していました。ただ、これまでのシステムは利用できる地図データが決まっており、別途入手したデータなどを利用することができませんでした。国内調査はそれでも特に問題なかったのですが、海外調査をはじめるには、まずそれを解決しなければなりませんでした。新システムにおけるGISエンジンを選定する一番
のポイントは、シェープファイルが読めることでした。海外で入手できるデータの多くがシェープファイルです。シェープファイルの場合、当然親和性が一番良いのはESRI製品ですので、ArcGISを用いた新システムを考えました。現在、新システムであるHDVGPS VIEWERソフ卜を用いて海外調査をしておりますが、特に困ることはありません。ITSソリューション部はまだ新しい部署ですが、今後海外にもっと出て行って、調査エリアを増やし、お客様ニーズをもっと満たしていきたいと考えております。また、今は見るだけのシステムですが、今後HDVGPS VIEWERフトをもっと拡張していきたいですね。」と末久グループリーダーは熱く語ってくれた。