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事例

GIS を活用し庁内に埋もれていたあらゆるデータに光を浴びせる

渋谷区

 

Microsoft Power BI の ArcGIS アドイン機能と
オープンデータサイトで、庁内・庁外に活用されるデータ公開を目指す

課題

導入効果

概要

「渋谷」という地名は、誰もが聞いたことのある地名だろう。若者カルチャーの中心地や訪日外国人の観光地でもある渋谷駅をはじめ、恵比寿駅や原宿駅など、エリアごとに異なるさまざまな属性の人々が集う日本を代表するエリアである。来訪者の人口が区民の人口よりも多いこの区では、区民だけでなく来訪者も含めて定義した「渋谷民」を対象に行政施策を展開している。

そのような中、渋谷区で 2020 年(令和 2 年)から発足したスマートシティ推進室(前身組織含む)では、渋谷区の基本構想である「ちがいをちからに変える街。渋谷区」の実現のため、デジタル技術とデータの共同活用推進を掲げ、各種データを活用した地域課題の解決に向けた事業の推進を主な任務としている。

課題認識と取り組み方針


図 1 渋谷区長期基本計画の構成

官民データ活用推進基本法が 2016 年(平成 28 年)に制定されてから、各自治体では情報公開やオープンデータへの取り組みが盛んに行われてきた。渋谷区では一部のデータをオープンデータとして公開し、それ以外の情報は部署ごとに区の Web サイト上で表示していた。しかし、データ公開といっても、Excel や PDF の埋め込みだけにとどまっており改善の余地が多くあった。また、区の各事業において、データの収集や分析、活用が進んでいるとは言い難く、業務でのデータ活用に対する認知と理解の促進が必要とされていた。

そういった状況を変革していくため、区の置かれている状況を、グラフや地図等でわかりやすく可視化し、現状把握していく「シティダッシュボード」の事業が開始された。

シティダッシュボードの開発テーマとして、「渋谷区長期基本計画に掲げた分野別のビジョンに対し、現状はどうなっているのかを把握する」 という視点で、テーマの選定とデータの収集をスタートした。

具体的には、可視化するテーマごとに各部署から職員がメンバーとして参加する庁内横断のプロジェクトチームを編成した。そのメンバーに対して、たとえば「バリアフリーの推進」という観点でどのようなデータがあるのか、あるいは不足しているのかといったヒアリングを実施した。その後、保有データを使った「シティダッシュボード」を作成し、プロジェクトメンバーと共にレビューを進めた。

このプロセスを通して、「行政の保有するデータとは何か」という認識や、「データがあるとできること」についての理解が少しずつ進んでいった。

ArcGIS 選定の理由

職員の認識が変わり始めると、次にマップの表現強化に取り掛かった。渋谷区では Microsoft 社の Power BI を全職員が利用できる環境が整っていたが、Power BI に標準搭載のマップ機能では、GIS のように複数のデータを重ね合わせての表示切り替えといった高度な表現ができなかった。そこで Power BI に搭載されていた GIS のアドインツールである「ArcGIS for Power BI」を活用し、マップの表現強化を行った。

ArcGIS for Power BI の主な機能

事業を加速させていく上で、ArcGIS は非常に効果的だった。クラウド GIS サービス「ArcGIS Online」を活用することで、クラウド上で迅速に利用可能な GIS 環境が用意され、初期の可視化までを非常に素早くスタートさせることができた。さらに、シティダッシュボードに利用しているデータを、オープンデータとしても整備していくタイミングで、オープンデータサイトのリニューアルを行った。その際、ArcGIS Hub を活用したオープンデータサイトを構築することにより、迅速にサイトを開設し、運用に繋げることが可能となった。

ArcGIS の導入効果

ArcGIS を導入することで、今まで区で保有はしていたものの、活用されていなかったデータの有用性を職員に気づかせることができた。まず庁内では、日々の業務で蓄積されたデータをマップとグラフで可視化することで、保有データの価値に気づき、職員自身の業務でどのように活用できるか考えることが増えた。またスマートシティ推進室が庁内のデータを集約・可視化する主体として活動してきたことによって、現在では、庁内で行政データを活用する際に、他部署の職員がスマートシティ推進室に問い合わるといった仕組みができてきたことも大きい。たとえば、ハロウィン等多くの人が集まる時期において、人流の傾向をつかむためにダッシュボードを活用したいという声が庁内・庁外から聞かれるようになり、シティダッシュボードやオープンデータの活用の兆しが見えてきている。

さらに、行政が積極的にデータを活用することで、民間企業が保有するデータの共同活用についても、継続的に提案を受け官民連携の取組も生まれている。

今後の展望

データ利活用の環境整備は整いつつあるが、効率化が必要と感じている。所管で扱うデータをオープンデータ形式に変換する工数を削減するため、今後はデータのテンプレートを作成して所管に戻し、最初からクリーンな形式でデータを蓄積するよう促すことを予定している。

また、今まではデータの前処理と更新をスマートシティ推進室で行ってきたが、今後は ArcGIS 自治体ソリューションライセンスを活かして各部署にライセンスを拡大し、所管が自律的に GIS データの更新を行っていく体制を整えていきたい。

さらに、スマートシティ推進室は発足してから 4 年間、庁内データの可視化、公開の活動を進めてきたが、今後はシティダッシュボードや SHIBUYA OPEN DATA のアクセス解析を行い、閲覧数やダウンロード数から「渋谷民」がどういった情報を必要としているのかを分析し、行政につなげていく活動も行っていく。ただデータを公開して終わりではなく、民間企業や区民の方との情報共有やディスカッションに活かしてもらうことで、産官学民が渋谷区を共創するプラットフォームとして活用が広まると考えている。


図 2 CITY DASHBOARD
渋谷区内の出張・車イス対応


図 3 SHIBUYA OPEN DATA
AED 設置一覧

プロフィール


スマートシティ推進室
大村 周平 氏



関連業種

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資料

掲載日

  • 2024年1月29日