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事例

ArcGIS Online を活用した 災害廃棄物処理に関する情報共有の効率化

環境省 関東地方環境事務所

 

現地調査アプリを利用した情報集約の効率化と
リアルタイムで分かりやすい情報共有を目指して

概要

令和元年東日本台風を始め、近年では広範囲に甚大な被害をもたらす自然災害が頻発している。被災地の復旧・復興にむけて災害廃棄物の円滑な処理が求められるが、被災家屋等からは普段の生活ごみとは性状の異なるさまざまな廃棄物が短期間で大量に排出される特徴から、被災市町村等や地元事業者だけでは対応が困難となる場合も多い。

環境省関東地方環境事務所では、独力での災害廃棄物処理が難しい被災市町村等を支援するため、関東ブロック(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県および静岡県)内での地域ブロック協議会を組織し、都県域を越えた災害廃棄物対策に関する行動計画を策定している。

非常災害時に、行動計画に基づいて人員、資機材や処理先が不足する被災市町村等を広域で支援する体制を構築していく上で、被災地の現況を分かりやすく関係者間と共有できる環境整備が必要と考え、地理空間情報の活用に取り組むこととした。

課題

発災後は、都県の災害廃棄物担当を通して、被災市町村等から廃棄物処理施設の稼働状況や災害廃棄物仮置場の設置状況等を確認するとともに、同事務所でも独自に現地調査を行い、状況把握に努めている。

これらの情報を踏まえ、同事務所では協議会構成員を中心とする支援チームの設置と派遣を判断しているが、被害規模が大きくなるにつれて、膨大な現場情報の集約作業に相当な時間と労力を費やし、鮮度の高い情報をすばやく共有することが困難となる。 また、文字や表では被災状況の全体像を一目で把握することは難しく、支援調整に当たり、土地勘が乏しくても視覚的に分かりやすく情報共有を図っていくことが課題であった。

ArcGIS 採用の理由


現地調査アプリ
災害廃棄物仮置場の位置や現況写真を現場から簡単・即時に報告可能となった

実際の災害対応で、①すぐに活用できること、②現場とリアルタイムで情報共有できることを主な要件に、職員自らノーコードで現地調査アプリを簡単に作成でき、関係者が自身のスマートフォンやタブレットを使って、いつでも、Web マップを見て現状を確認できる点を評価して ArcGIS を採用した。

実際に、導入後 1 か月も経たずに発災した令和 4 年 8 月 3 日からの大雨では、新潟県村上市と関川村での仮置場の現況写真や管理状況等の調査記録を Web マップ上で共有することができた。


新潟県村上市の災害廃棄物仮置場(環境省撮影)発災後1週間経過した仮置場の状況をドローンで撮影し、ArcGIS Dashboardsで関係者との情報共有 を実施した

課題解決手法

まずは、災害廃棄物に関する情報の収集時期、利用目的、伝達経路等を整理し、省外の関係者も含めた基本的な情報共有フローを分析した上で、実際の災害対応で収集した情報やデータを用いて、現地調査アプリや情報共有用の地図コンテンツを試作した。

令和 4 年台風 15 号での現地調査では、ArcGIS Survey123 と ArcGIS QuickCapture を用いて、現場で撮影した写真とともに、仮置場の管理状況や路上堆積ごみの排出状況をその場で投稿し、ダッシュボード上で可視化する環境を構築したことでリアルタイムでの情報共有を実施することができた。

また、これらの地図コンテンツを関東ブロック内に共有するため、主に内閣府防災担当と防災科学技術研究所で構成される災害時情報集約支援チーム(ISUT: Information Support Team)と双方の ArcGIS Online でのパートナーコラボレーションによるグループ共有を行い、ISUT が管理・配信する災害対応機関専用 Web サイト(ISUT-SITE)への自動連携を実現した。

効果

現地調査アプリを活用した現場-事務所-本省間での即時性のある情報共有に加えて、ISUT-SITE との連携により、災害廃棄物処理の情報を被災地の災害対策本部や他の災害対応機関ともリアルタイムで共有することが可能となった。また、ISUT-SITE で提供される被害発生の推定範囲、SNS 上の被害投稿、避難所の開設状況、インフラ・ライフライン等の復旧状況など、他機関から共有された情報を活用することで、より俯瞰的に被災状況を把握できるようになり、現地調査でも活 かすことができた。


台風 15 号で被災した静岡市内における路上堆積ごみの排出状況(環境省の現地調査)
畳や大型家具などパッカー車では対応できない収集箇所を可視化


ISUT-SITE と自動連携した災害廃棄物仮置場の地図(台風 15 号・静岡県内)
Survey123 で作成した Web 調査票を被災自治体の担当者に公開して情報収集を行った

今後の展望

災害発生時に、組織の垣根を超えた連携協力体制の構築に今回の成果を活かすため、関係者間での情報伝達訓練を行いながら関東ブロック全体での習熟を図っていきたい。

このように、省内に蓄積されている統計情報や調査データを有効活用して、広域連携の検討に役立つ地図コンテンツを充実させていきたい。


一般廃棄物焼却施設の検索ツール

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掲載日

  • 2023年4月3日