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BIM/GIS活用で高架橋建設における計画と監視の効率化を実現

イタリア鉄道会社 Ferrovie dello Stato (FS) Italiane Group

 

BIM と GIS の統合により、公共施設の 3D データやドローン画像の活用を最大化

プロジェクト概要

1996 年 7 月、欧州委員会で汎欧州運輸ネットワーク(TEN-T : Trans-European Transport Network)を実行する決議が採択された。このプロジェクトは、ヨーロッパ全土の主要道路、鉄道、内陸水路、港湾、内陸港、交通管理システムの統一された改善により、貨物・旅客輸送の円滑化、効率化を目指している。

TEN-T プロジェクトのスカンジナビア・地中海ルートが完成すると、フィンランドのヘルシンキからマルタのヴァレッタまで交通網が延びることになる。南イタリアにおけるナポリ・バリ高速鉄道プロジェクトもこのルートの一部である。当プロジェクトは、イタリアの鉄道ネットワークを担当する政府機関の Ferrovie dello Stato (FS) Italiane Group によって 2015 年に開始され、 GIS ベースの Building Information Modeling (BIM) の活用が様々な効果をもたらしている。


FS Technology はドローンで撮影した 3D 点群調査と BIM を比較し、建設の進捗を監視している。写真の緑の柱はすでに建てられているもので、ほかの建物は BIM で作成されたモデルである。

FS Technology は、 FS Italiane Group が所有する IT 企業である。同社の BIM/GIS コンピテンスセンター長であるマルチェラ・ファラオネ氏は「GIS ベースの BIM を使うことで、建設の進捗状況やプロジェクトに必要な資源、および周囲環境への影響を監視することができます」と述べる。さらに、 BIM/GIS の活用を BIM が使われている全てのプロジェクトに導入することも計画しているという。

BIM モデルと ArcGIS 技術の統合

2018 年の終わり、 FS Italiane Group はナポリ・バリ間鉄道プロジェクトの 2 つの高架橋の建設を開始した。この高架橋の長さはそれぞれ 800 メートルと 400 メートルであった。
同社は高架橋の建設状況や使われる資材を監視するために、オートデスク社の BIM360 の段階的な導入を始めた。これにより、プロジェクトの関係者は構造物の寸法情報、計画や開発にかかる時間、プロジェクトに関連するコスト、高架橋の持続可能性、運用寿命、資産管理の詳細を確認できるようになった。

このプロジェクトで重要なのは FS Technology の BIM/GIS 活用の概念実証をテストすることであった。 ArcGIS Pro はジオメトリ―とパラメータだけではなく、 BIM ファイルの中にあるほかの建設情報を統合することで、 BIM/GIS を活用したジオデザイン機能を促進する。また、プロジェクトの設計と作業ステータスを ArcGIS Online 経由で公開することも可能だ。

「我々の BIM モデルと ArcGIS を統合することで、当プロジェクトの建設段階においていくつか利点があると分かりました。水道管や電線などの公共設備を 3D データとしてマップ上に表示させたことで、より効率的に作業計画を行うことができるのです。例えば、高架橋の基礎の建設中、交差する公共設備は構造的なダメージを防ぐために補強する必要があります。公共設備の管理を担当する全ての関係者を巻き込むために、 3D バッファーツールによって高架橋と交差する公共設備の種類を見つけ出し、補強するパイプの長さを計算することができます。同じデータを使い、上下水道や照明装置につなげる必要のある建設に適した場所を見つけ出すことも可能です」と氏は述べた。

さらに、 ArcGIS Network Analyst など、ほかの種類の分析ツールを使用することで、チームがより効率的に建設計画を作成することができると付け加える。例えば、廃棄物管理や資材運搬など、建設現場を回る必要のある作業の代替ルートを探すことが可能になる。また、建設作業は交通の流れを断続的に止めてしまうことがあるが、 ArcGIS Network Analyst を使用することで、車線規制のためのバリケードの計画も作成することができる。

ドローン画像が建設進捗の監視を助ける

BIM/GIS を活用した新しい業務スタイルでは、ドローンによる画像が使用される。「ドローンは 3D レーザースキャナーを使用し、現場や周囲環境の高解像で高精度な画像を提供します」と氏は語る。集められたデータセットは時間の経過に伴う現場の進捗状況を評価し、車両や機器などの資源をより適切に管理するために使われる。また、切り土や盛り土の量を測ったり、廃棄物処理の方法を記録したりする際にも使用される。

「ドローンでの測量は、物理的な検査に伴う安全上の課題なしに、効率的に測量を行えます」。


チームはオートデスクと ArcGIS 技術を使い、ドローン飛行の計画を立てる。 ArcGIS Web AppBuilder を使用し、確認用のアプリを作成。

ドローンは、 LIDAR 点群データの業界標準のデータ形式である LAS ファイルを作成する。このファイルには、 GPS タイムスタンプなどの追加属性に加えて、大量の x、y、z の値を持つ 3D 標高ポイントデータが含まれており、このデータを ArcGIS で取り込むことができる。

「ドローンで集めた 3D 点群調査データは、当社の BIM モデルと比較され、建設の進捗状況を確認できます。点群と BIM モデルの比較には、オートデスク社の Navisworks の干渉チェック機能を使用し、計画と進行中の作業を比較できます」。

BIM モデルと比較しやすいように、チームは点群データのサイズを縮小して必要な点とデータのみを残し、さまざまな点群を組み合わせてプロジェクトのモデル全体を取得する。場合によっては、点群をサーフェスモデル、あるいは 3D オブジェクトに変換する必要があり、デジタル標高モデル(DEM)、デジタルサーフェスモデル(DSM)、ラスターRGB (赤、緑、青)ファイルを作成することがよくある。その後、色などの詳細を追加していく。点群から生成された 3D モデルに、建築物のデジタルスキンを作成し、それを追加することで、よりリアルに見せることができる。

さらに、 BIM モデルとのより良い比較を可能にするために、人工知能(AI)を使用し点群内のプロジェクトの重要要素を自動検出するシステムを構築した。加えて、物流向けに現場の作業員と建設機器を自動識別するアプリケーションを開発している。

完全に相互運用可能なデータ

このように、BIM/GIS 活用によってトラブルやリスクを軽減することができる。この強みは、高さのある高層ビルなどの建設プロジェクトにおいてはすでに実証されているが、この高架橋プロジェクトによって、線路や道路などの水平に長いインフラ建設においても同じ強みを発揮できることが分かった。

また、このプロジェクトを通じて、 BIM と GIS 間で相互に互換性のあるデータ作成のモデリングを開発できた。

「インフラ建設は、既存インフラなど周囲の影響を受けやすく、プロジェクトに変動が生じることがあります。その際に一部を手動で加工するのではなく、モデリングを自動化することが不可欠です。これが、建物の建設とインフラ建設の主な違いなのです」と氏は結論付けた。

 

この事例は Esri の ArcNews 記事「A BIM/GIS Workflow Benefits Key Railway Construction Project in Italy」を参考に翻訳したものです。

 

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掲載日

  • 2022年5月18日