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事例

ICT を活用した永続的農業モデルの構築

長門地域農業再生協議会

 

「ICT 農作業管理システム」による生産活動の効率化を実現!

概要

山口県長門市の集落営農法人の分布
山口県長門市の集落営農法人の分布

全国的に急激に進む就農者の減少や高齢化に伴い、農家の経営環境は、年々厳しさを増している。このような農業情勢の変化に伴い、集落の農地を集落で守り、地域を活性化することを目的として、「集落営農法人」が全国的に拡大している。 山口県においては、総農家数がこの 15 年間で 37 %減少しており、就農者の高齢化も平均年齢が 70.3 歳で全国 2 位となっている。山口県の集落営農法人数は、平成 22 年時点で 116 団体だったが、平成 27 年には 232 団体と 5 年間で倍増しており、平成 29 年ではおよそ 320 団体になるものと推測されている。

油谷地区の田園風景
油谷地区の田園風景

このような農業情勢のなか、山口県では全国に先駆け、集落営農法人をプラットフォームとした新規就業者の育成および定着に向けて、平成 27 年より「山口県担い手支援日本一対策」を開始した。山口県担い手支援日本一対策は、農林水産業の次世代を担う新規就業者に対して募集から技術研修、就業、定着まで一貫した支援を行うことで、県内の農林水産業の合理的かつ安定的な経営を実現するための施策である。 ここでは、JA 長門大津、山口県、長門市が集落営農法人と連携し、長門市三隅地区と油谷地区において、JA 出資型法人となる「集落営農法人連合体」を創設するに際し、永続的農業モデルの構築を目指し、GIS をはじめとする ICT 技術を活用し、生産活動において人員、時間、コストの軽減が図れた油谷地区の取り組みについて紹介する。

課題

山口県油谷地区における集落営農法人連合体は、4 つの集落営農法人と JA が出資して、連合体となる新法人、(株)長門西を設立した。法人間連携と JA 施設を有効活用することで、結びつき米(生産者と実需者が結びついた契約栽培米)として採用される新たな商品づくりと、新規就業者の確保・定着に取り組み、永続的な農業モデルの構築をスタートした。しかし、農地を集約し大規模な就農活動を展開していく上では、いくつかの課題があった。

[課題 1]:広範囲の圃場管理

広範囲の圃場を管理する上で、現状をデジタルで把握する必要がある。

[課題 2]: 機械の効率的な利用による低コスト化

広範囲の圃場に対し、効率的な機械作業を行うには机上での作業計画立案が必要となる。

[課題 3]: 人材管理および技術情報の蓄積(経営継承)

就農者の作業管理や保有する技術の情報等を法人全体として把握する必要がある。

これらの課題を解決するため、集落営農法人連合体では ICT による管理システム構築の必要性があると判断し、GIS をはじめとした ICT を積極的に活用する方針を導き出した。

ArcGIS 採用の理由

GIS ソフトの選定にあたっては、株式会社ニュージャパンナレッジの ASP サービス (ArcGIS Enterprise) と連携して活用することを考慮し、ArcGIS Engine を用い開発することとした。また、GIS アプリケーションの開発においては、現場(利用者)の要求を徹底的にヒアリングし、有効に活用されるシステム導入を目指した。

課題解決手法

山口県では、「山口県集落営農法人連携協議会」の要望を受け、協議会ワーキングで意見を聴取し、平成 27 年度に「ICT 農作業管理システム (My Farm)」を構築した。このシステムは、広範囲にわたる圃場や大型機械、人材の効率的管理を行うためのシステムであり、農業経営の規模拡大やコストの削減、人材育成に活用することを目的とした。

My Farm の画面
My Farm の画面

[My Farm の主な機能]

・ 営農計画(各圃場の作付計画や農作業計画)の検討、策定 ・ 圃場データのマップ化およびオペレーターへの作業指示書の作成 ・ 生産現場における作業指示の確認(作業指示書を作業指示者からオペレーターのタブレットに配信) ・ 作業終了報告(作業終了報告書をオペレーターから作業指示者にタブレットで配信) ・ 写真等による作物生育状況などの記録および蓄積 ・ 作業進捗状況の把握、作業時間等のデータ集計等

My Farm による作業の流れ
My Farm による作業の流れ

効果

集落営農法人連合体の事務所に設置された作業指示者のパソコンと現場のオペレーターが使用するタブレット端末を情報通信技術で結び、広範囲にわたる農地や農作業の状況をマップ化(見える化)することで、人員、時間、コストを軽減し、効率的な生産活動を実現することができた。

タブレットによる作業指示の確認
タブレットによる作業指示の確認

さらに、作業の情報を蓄積することで今後の営農計画に役立てることができる。JA、行政、NOSAI などの団体間の連携にも利用できるので、各団体が相互に地域農業の活性化を目的とした施策で活用することが可能となった。

今後の展望

ドローンによる農薬散布
ドローンによる農薬散布

今後は、「ドローンの飛行データを GIS 上に落とし、上手な操縦者の飛行ルートを真似ることで、農薬を上手く散布できるように努めたい。また、鳥獣の出没経路を特定することで、鳥獣被害対策に GIS を役立てていきたい」と長尾課長と吾郷主任は語る。最後に、「今以上に ICT を積極的に活用することで、若者の働き場所を確保し、新たな農業の担い手育成モデルを構築したい」と締めくくった。

プロフィール


JA 長門大津営農経済部 長尾 課長( 左)
長門農林事務所農業部 吾郷 主任( 右)



関連業種

関連製品

導入協力企業

組織名株式会社ニュージャパンナレッジ
住所山口県山口市大内御堀3777-2
電話番号083-941-0300
Webを見る


資料

掲載日

  • 2018年2月21日