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【教育 GIS 便り】データ収集と GIS

 

◆ 鶏が先か、卵が先か

マップを作成する際に、一昔前と比べてオープンデータもかなり利用できるようになってきたと感じます。
SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みも本格化してきており特に「まちづくり」に関しては、これまで国や自治体においてスマートシティやコンパクトシティなどを考慮したの都市計画が始まっていましたが、最近では市民参加型で社会課題に取り組む姿勢が増えてきたように思います。

SDGs の「誰一人取り残さない」目標を掲げた際に私たちの生活において何が課題となるのでしょうか?

先日開催された GIS Day や授業などで、GIS は課題解決のツールに役立てることができるという話を紹介するのですが、いざ GIS を使って課題に取り組もうとすると

といった壁にぶつかります。

先日も GIS Day from 北海道の講習会で「市民科学のための GIS」を実施しました。
これは今回初めての取り組みで、参加者自身でテーマを決め、それに基づいて現地調査をする上での調査項目などを機論します。
その後、実際にデータ収集を行い、後日そのデータを使って状況把握や考察を行う講習会形式でした。

講習会で議論した結果「身近な防災(危険)を考える」がテーマになりました。
ディスカッションでは、調査項目を作成する際に皆で議論し回答を導き出したと思っていたのですが、実際にデータ収集を始めると同じ課題でも誰を対象にするのかで調査する内容が変わってくることを痛感しました。
例えば、「身近な防災(危険)」を考えた際に、20 代から 60 代くらいまでの成人は特に意識しなくても
幼児の場合、車の危険度が高くなる
高齢の場合、歩道の段差で危険度が高くなるなど…
同じ場所でも危険度は違ってきます。

それらをどのようにまとめるか。
また取得したデータを使ってどう考察するかなど実際にやってみてとても難しいと感じました。特に調査項目を作成する際に、5W1H ではないですが、目的をしっかり持たないと今後のデータ収集にも影響してしまうと…
特に今回は、身近な防災(危険)としたので、人により捉え方が違ってくるということをデータ収集した結果を見ながら感じました。

調査項目

調査の結果

調査項目のダッシュボード

調査項目のダッシュボード

私の場合、GIS Day のイベントや授業で GIS を教える際に、

・GIS データとして取り扱いやすいデータがある
⇒このデータを使って何ができるかを考える

といった流れで授業プラン(講習プラン)を立てます。
もちろんこれは間違ってはいないと思う反面、本当に課題解決に役立つツールとして活用できるのかといった疑問は残ります。データありきでの GIS の解析となってしまうので。

逆に〇〇を解決したいからそれを可視化するといった点で GIS を活用しようとすると利用できそうなデータがなかったり(もしくは高額だったり)します。

どちらが先か…の話になりますが、GIS を活用することで場所に関する「問い」に対する答えを地図上にビジュアル表現する際にとても大切であることを改めて思いました。

今回の市民科学と GIS の講習会を通して、それぞれのバックグラウンドを持った参加者から多様性を受け入れ、枠を超えたコラボレーションをする際にやはり課題を可視化したほうが分かり易く、市民の思いをデータで見える化するには GIS が強力なツールであるとも感じました。
一方で「目的」意識を統一させないとせっかくのツールを使いこなすことができず消化不良になりがちということもわかりました。

来年は、ますます SDGs の取り組みや市民参加型のまちづくりが活発になってくるかと思います。
2022 年も引き続き皆様の役に立てるような情報をご案内していければと思います。

皆様よいお年をお迎えください。

 

◆ GIS Day 講習会資料公開

12 月に各地で開催された GIS Day の講習会資料になります。
冬休み期間中の学習に、授業の補助教材にご利用ください。

 

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掲載種別

掲載日

  • 2021年12月21日