課題
導入効果
静岡県西部、首都圏と関西圏のほぼ中間に位置する浜松市は、全国の市で 2 番目の面積を擁し、豊かな自然に恵まれながら最先端技術産業、農林水産業など各種産業がバランス良く発展した政令指定都市である。人口は約 80 万人、県内の自治体で最も多くの人口を擁している。 浜松市では、2015 年度からクラウドベースの「浜松市防災情報システム」の運用を開始した。このシステムにより、発災時における被害報告や避難所管理機能など災害情報の集約と情報共有が可能になった。2016 年度には、「浜松市防災情報システム」が ArcGIS とシステム連携し、地理情報をもとにした被害報告、避難所開設状況の把握、および地図上での避難発令管理が可能となり、迅速かつ正確な意思決定支援ツールとして整備された。
東日本大震災をきっかけに、自治体では被害の状況を迅速に把握するため、また的確な意思決定の支援ツールとしてGISが注目された。被災地の庁舎が大きな被害にあった場合を想定して、庁内ネットワークやサーバーなどに依存しないクラウド環境でのシステム運用を決定した。
防災情報システムのプラットフォームとして ArcGIS を採用した理由としては以下のようなことがあげられる。
システムのクラウドサービス部分は、台帳管理システム(セールスフォース・ドットコム社の Force.com)と GIS(ArcGIS for Server および ArcGIS Online)で構成されている。ArcGIS for Server は、Amazon EC2 のプライベートクラウド上にあり、GIS データを管理している。ArcGIS Online は、パブリックなクラウドGISサービスで、オンラインでさまざまな背景地図を提供している。これら GIS データと背景地図をマッシュアップして Web マップとして配信することができ、ArcGIS Online で提供している各種 GIS アプリに追加して利用できる。アプリは、テンプレートを適用して設定を行うことでさまざまな用途に柔軟に対応することが可能である。
災害が発生すると、各利用拠点(危機管理課、災害 11 部、区役所、外部機関)で入手した被害情報、避難所の開設状況や避難者受け入れ状況などの情報が台帳に入力される。これらの情報と関連付けられた GIS データが GIS アプリの地図上に可視化され、災害対策本部での初期対応や応急対応における状況把握や発令管理などの業務に活用される。
たとえば、アプリの検索機能やグラフ機能を利用して避難者の収容可能人数に対する実際の避難者数を分析して、キャパシティーを超えている場合は近くの避難所に移動してもらうことなどを検討したり、被害の集中している地域や情報の空白地帯をアプリ上で分析・抽出して優先的に作戦立案することなどを行っている。
システムのプラットフォームとして ArcGIS を導入することにより、以下にあげるようなさまざまな効果があった。
2016 年度には土木部にて「新土木部災害対応支援システム」の構築を ArcGIS プラットフォームで進めており、危機管理課と相互に情報共有する運用を実現し、2017 年度には市民公開を実施する予定である。