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過去・現在の犯罪データを分析。未来の犯罪リスク対策に生かす

メリーランド州 ボルチモア市

 

ストリートと覚醒剤関連の犯罪で逮捕者数を示した地図。
レキシントンマーケット周辺で1年間に薬物関係で逮捕者が出た通りを、個々のポイントデータをつなげ赤く示した。ボルチモア市警察はマーケット周辺を警戒重点地区に指定している。

ボルチモア市は、マッピングと空間分析を犯罪取締りの基本ツールと位置づけ、意思決定とリソースの効率的な割り当てに役立てている。

凶悪犯罪はアメリカ国内で深刻な社会問題となっている。FBI のまとめによると、2013年に殺人事件で死亡した人の数は 14,000人にのぼり、その内69%が銃犯罪によるものであった。被害者には若者が特に多い。2012年のアメリカ疾病対策センターの発表では、15歳から 24歳までの死因の第2位に殺人が挙げられている。

犯罪・危機関連データのマッピングおよび空間分析は、警察、公衆衛生、他政府機関、地域密着型組織、非営利団体のいずれの暴力防止プログラムにおいても不可欠である。これら組織の多くは、複数のプロジェクトで協働している。地図を使うことにより、犯罪が健康や福祉に及ぼす様々な影響をすべての組織の人員に伝えることが可能になる。

GIS を活用した犯罪防止や健全性解析に関する研究は数多く存在する。しかし、若者を対象とした犯罪防止活動に GIS を利用している研究例はあまりない。地図を使用した状況伝達は、こうした活動の強力なツールとなり得る。

残念なことに、犯罪データのすべてが効率的にマッピングされ、視覚化されているわけではない。密度法などの特定の技法に過度に依存している傾向があるのだ。どの空間分析技術にも長所もあれば短所もある。そこで、ボルチモア市ではArcGISの多くのマッピングと分析機能を用い、犯罪事件と危険度、被害者、犯罪者との関係を視覚化し、アウトリーチワーカーから市の管理者へタイムリーに状況を伝える体制を取っている。

ボルチモア市保健局では、「Safe Kids」「Safe Streets」「Dating Matters」の3つの青少年暴力防止プログラムに、ArcGIS Onlineと市のデータ公開サイト「Open Baltimore」上のデータ、及び機密データを使用している。分析結果の多くは、市長のStephanie Rawlings-Blakeが率いる暴力犯罪軽減強化イニシアチブのような、市全体の犯罪予防活動に使用されている。

ボルチモア市の主要な暴力防止プログラムの一つである「Safe Streets Baltimore」は、銃犯罪防止を目的とした地域密着型の支援活動と争いごとの調停プログラムである。暴力犯罪の発生場所を表示したマップや、犯罪が集中している地域を示すホットスポットマップなどがアウトリーチワーカーや暴力行為仲介の専門家に配布され、彼らの活動の目安となっている。

ArcGIS Onlineのボルチモア コミュニティマップでは、コミュニティの全体像を簡単、迅速に把握できる。 ArcGISのデフォルトの犯罪シンボルを編集し、暴力的な犯罪の場所を表示することが可能だ。犯罪発生日やその他情報をポップアップで表示するような設定もできる。犯罪データは同じ場所で重複することが多いため、ArcMapレイヤーのプロパティのシンボルレベルを変更し、ArcGIS for Desktopに搭載のMaplexラベルエンジンを使用すると、銃撃や殺人など特定のタイプの犯罪を優先表示できる。犯罪者やその他主要な人物を探す際には、効果的なラベル付けが役立つのである。

 

現在と将来のための計画

暴力防止プログラムの運営にあたり、プログラム実施エリアの選択は非常に重要である。一連の基準に基づいたエリア選択により、プログラム運営の効率と有効性が向上するからだ。さらに、エリア選択のため作成したマップは、連邦政府による暴力防止交付金を市が申請する際の必須要件になりうる。

犯罪数をフィッシュネットマップでエリア比較。地域ごとの傾向が一目でわかる
フィッシュネットツールを使用すると、犯罪被害者の数をメッシュごとに合計し、分類し、ラベリングすることができる。メッシュ化されたホットスポットの1つであるマケルダリー・パークのデータは、警察との関係強化のためだけでなく、犯罪撲滅のための戦略として地域の開発を推進するためにも使用されている。

もう一つ市の青少年暴力防止プログラム「Dating Matters」は、アメリカ疾病予防管理センターが資金提供する、中学生を対象としたデート暴力防止のための研究・教育プログラムである。 ArcGISを使用し、貧困レベルが高い地域や暴力の発生が多い地域やその周辺、などの要因に基づきプログラムを実施すべき学校が選定される。このデータはプロジェクトの責任者に提供される。

ArcGISを使い作成されたサイト選択マップは、市が2件の助成金を申請する際に実際に利用された。マップの1つは、ローカルな空間的自己相関指標 (Local Indicator of Spatial Autocorrelation, LISA)を用い、25歳未満の銃撃された若者の割合を示した。もう1つのマップでは、数年間に銃撃による人的被害があった場所を表示し、ポリスポスト(交番)の管轄ごとにグループ化し、棒グラフで表している。

 

地図上の単なる点にとどまらない効果

最後に、地図は、暴力犯罪の減少や犯罪多発エリアのトラブル解決のための戦略的意思決定プロセスにおける重要な鍵となる。ArcGISには、密度マッピングに加え、犯罪やリスク関連のデータを視覚化するための機能も複数ある。空間統計ツールは、年ごとの銃撃発生件数の平均値および中央値を出すことができる。イベントの統合・集計ツールは、犯罪が繰り返し発生する場所を、点を大きくするなどして視覚化するのに役立つ。

ArcGISでメッシュ(グリッド)を作成することにより、空間結合機能を使って様々なタイプの犯罪データをまとめて比較することができる。密度図マッピングと比較した場合、この技術の利点の1つは、均等な大きさのメッシュ(網目)毎に犯罪件数をカウント、分類できることである。メッシュを使うことで、特定のエリアで犯罪が集中している様子を市の管理者に容易に伝えることができる。

犯罪やその取り締り活動は、しばしば特定の通りや地点に集中しており、通りごとにポイントデータを結合することにより、これを視覚的に明らかにすることができる。 ArcGISで利用できるその他のパターン指向分析ツールには、グローバルLISAとローカルLISA、および介入する地域を選択する際に必要な回帰分析ツールがある。さらに、こうした分析は、高リスク地域内にも場所によって犯罪発生率に違いがある理由を説明するのに役立つ。

 

将来的な犯罪リスクをマッピング

慣例的に、犯罪インシデントデータは、犯罪者および被害者などの過去の犯罪情報を可視化するためマッピングされている。しかし、多くの研究者や実践者は、銃撃や殺人が起こるリスクなど、将来的な危険予測に関するマッピングも行っている。種類の異なるリスク密度は、ラスタ演算などラスタベースの機能を使用し、重ね合わせて算出することができる。モデルのデータには、銃犯罪者、酒類店、空き家などが含まれる。ラスタレイヤは、ベクトル化することもできる。このように過去、現在、そして将来の犯罪インシデントを合計し、モデルの正当性の確認を行っている。

 

マップをオンラインで

起こった事件そのものだけでなく、様々な情報を入れて分析をすることは重要である。最終的に、オンラインで犯罪、リスク、保護要因、およびコミュニティ資産の良質なマップが手に入るようになれば、すべての連携機関が犯罪の原因や空間的・時間的な犯罪分布状況を把握できるようになる。 ArcGIS Onlineを使うことにより、計画立案のため、あるいは幅広い利用者との情報共有のため、資産名称や連絡先情報を臨機応変に表示するインタラクティブマップが作成可能になるのである。

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掲載日

  • 2015年10月19日

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