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バーコードと位置情報を利用して交通標識を効率的に管理

アイオワ州エイムズ市

 

米国アイオワ州エイムズ市の公共事業部は、市内に設置された9,500枚の交通標識の管理を担う。交通標識は、一つの標識柱に複数設置されていることが多く、各標識に関する保守履歴や点検記録といった資産情報の管理が難しいことが課題となっていた。また、国や州が定める交通標識規定に準拠しているか定期的に確認する必要があり、効率的な情報収集とデータの一元管理の実現が急務であった。

 

交通標識管理の課題

アイオワ州エイムズ市での交通標識の管理

適切な交通標識の設置と管理は、事故を最小限に抑え、市内を走行する車に行先や規制情報を提供するために無くてはならないものだ。市が管理するこれらの交通標識は、連邦道路管理局(FHWA)の統一交通管制装置便覧(MUTCD)で規定される基準への準拠が義務付けられており、各標識の管理の効率化が求められていた。

市の公共事業部のGISマネージャーであるBen McConville氏は、長年、ArcGISを資産管理に利用してきた。「標識の管理は単純だと思われがちだが、実は複雑だ。ある地点に存在する標識柱には3~4枚の標識が設置されており、それらの保守履歴、事故記録、再帰性反射点検記録といった資産情報をデータベースに含まなければならない。取換えや保守の日程、標識付近の樹木の情報も同地点のデータとして同様に管理する必要がある」とMcConville氏は説明する。

標識の適切な管理と業務効率化には、現場での交通標識や資産情報といったデータの収集をはじめ、収集したデータの一元管理の仕組みの構築が必要であった。

 

バーコードと位置情報の活用

iPad活用しての交通標識管理

市はパートナー企業であるDGTex社と共同で、Apple社のiPadで利用するGISAssets アプリケーションの開発に着手した。開発には、ArcGIS Runtime SDK for iOSを使用した。

市のGISスペシャリストであるDominic Roberge氏は、DGTex社の開発者と協力してアプリケーションとデータベースのスキーマ設計を担当した。「現場作業員のニーズと、アプリケーションの間にあるギャップの把握に多くの時間を費やした」とRoberge氏は振り返る。「議論を重ねた結果、バーコードリーダーと複雑な関連性を扱う機能が必要であるという結論に至った。この2つのニーズに対応したデータベース スキーマを設計し、それに基づくWebサービスを構築した」

 

GISAssetsへの標識データの取り込みは、RoadVista モデル 922という機器を使い、標識の再帰性反射機能の点検とともに実施された。各標識が州の定める反射機能の基準を満たしているか測定するとともに、標識柱の位置情報をGPSで記録し、各標識に付与されたバーコードラベルの読み取りが行われた。収集したデータは、標識に付与されたバーコードを参照キーとしてGISAssetsにダウンロードされ、その後、ArcGIS for Serverで管理しているジオデータベースに自動的に追加された。

ArcGIS Runtime SDK for iOSで開発されたアプリ

 

大幅な業務効率化を実現

GISAssetsの導入は、公共事業部の業務効率化に大きく貢献している。

バーコードの活用

交通標識は、車両による事故や除雪作業中の破損も多く、そのたびに修理が必要になる。「修理や点検の際に標識が外れ、設置していた標識柱が分からなくなることがよくある」と交通整備部のBill Latham氏は言う。「各標識に付けられたバーコードを利用することで、標識柱の特定が簡単にできるようになった」
別の交通保守作業員であるTerry J. Keigley氏は「公共工事の際にGISAssets はとても役に立つ」と導入を評価する。「現場周辺の標識は、工事前に全て撤去される。かつては、撤去された標識を元の場所に設置するのに測量が必要だったが、今ではGPSで簡単に位置の特定が可能だ」

情報の一元管理による効果

エイムズ市の公共事業部は、統一交通管制装置便覧(MUTCD)の基準を満たすため、5年に一度、大量の標識の架け替えを余儀なくされていた。
GISAssets導入後は、ジオデータベースで管理している各標識の再帰性反射データや点検履歴といった資産状況を参照することで、適合確認が簡単に実施できるようになった。また、適合確認業務が効率化されたことで、時間と経費の削減にもつながっている。

iPad活用による効率化

オフィスと作業現場とのコミュニケーションツールとして、iPadのショートメッセージやeメール、カメラやビデオといった機能の活用も進む。例えば、水道管の破裂などの緊急時に現場作業員が写真やビデオを撮影し、担当者に状況を迅速に伝達できるようになった。
撮影した写真はジオデータベースに格納され、情報の特定や確認に利用される。「写真は、属性から漏れている情報の特定に役立つ。例えば、統一交通管制装置便覧(MUTCD)のコードは必ずしも標識の文言と一致していないので、写真があると簡単に内容を確認することができる」と交通標識技術長のBrad Becker氏は評する。

「全ての公共事業に関する資産データを一元管理したことで得た利益は計り知れない。かつては、現場との情報共有やデータの統合機能がなかったので、履歴の確認や一覧の作成が難しかった。それが大幅に改善された」と McConville氏はGISAssetsの導入効果を語った。

 

今後の展望

エイムズ市の公共事業部では、バーコード読み込み機能を備えたGISAssetsの利用拡大を進めている。「全ての公共事業資産にバーコードを追加することで、作業現場での交通標識などの資産の特定や状態の把握、ジオデータベースへのデータの送信が迅速かつ簡単に行えるようになる。これにより、現場作業員の業務効率化はもとより、ジオデータベースを最新の状態に保つことが可能になるだろう」とMcConville氏は展望を語った。

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掲載日

  • 2015年9月18日