豊島区都市整備部公園緑地課では、公園と施設の管理業務・公園設計や緑化推進とその助成、公園の維持修繕といった業務を行っている。その中の街路樹、街路灯、防犯灯に関する業務において、これまで紙地図ベースだったものをシステム化させ、課内で所有しているArcGIS for DesktopとArcGIS Onlineを庁内統合型GISと合わせて活用し、業務の効率化を図った。
以前は道路管理課に所属し、GISを使用してきた酒井氏は、公園緑地課では多くの地図情報を保有しているにもかかわらず、システム化や電子化が遅れていると感じたという。情報を整備してシステム化を進めることで業務効率も上がり、住民サービスの向上にもつながるため、紙地図ベースだった業務をシステム化することが課題であった。公園緑地課では、街路灯や街路樹の維持管理、防犯灯への助成を行っている。これらの業務において、紙地図で管理していたものからGISを主体としたシステムに転換して業務改善を行った。
GIS化にあたり、まずはデータの準備が必要だった。これまで利用していた紙地図と紙台帳をデータ化する際にArcGIS for Desktopを利用し、街路灯の番号とポイントデータが記載された住宅地図を標定、住所データからアドレスマッチングでポイントデータを作成した。ポイントには多少のずれが生じるため、これを正しい場所へ移動させる作業は庁内統合型GISを利用して職員で手分けして行った。
「このようなデータの準備においては外部業者に委託することもできましたが、職員が自ら作業することにこだわりました。作業を経験してプロセスを理解することで、データ整備の方法やデータの活用法など、改良点や利活用の発想につながると思っています」と酒井氏は語る。
日常業務では庁内統合型GISと、GISの属性データを取り込んだ台帳管理システムを利用している。工事の発注や修理報告は日々発生し、その都度GIS側でデータ編集を行うのは効率的でないため、台帳管理システムにて属性データを編集して定期的にGISデータに反映させるというフローで運用している。
従来の業務をGISを主体としたシステムに転換したことで、該当箇所の検索には庁内統合型GISと台帳管理システムを利用し、委託業者の担当地区の確認や、要請内容・修理報告の入力はすべて台帳管理システムで行うなど、業務が簡単な手順で行えるようになった。また、街路灯の管理業務にGISを用いて以降、他の業務においてもGISを積極的に利用している。
GISデータ化した防犯灯の情報をArcGIS Onlineを利用して共有し、スマートフォンを用いて現地調査を行った。その調査結果を反映した地図をArcGIS for Desktop の図郭印刷機能を使用して町会ごとに出力し、各町会と電力会社にも確認を依頼することで適正な助成金の支出につなげることができた。防犯灯新設の際にも紙地図をGISデータに変換した後、Collector for ArcGISを使用して現地調査を行うことで現場の写真を添付した調査結果をクラウドに即時にアップデートすることができ、庁舎に戻ってからの修正やデータ整理の作業にもほとんど時間を要することなく効率的に調査が行えた。
GISで管理している公園の樹木データは、剪定箇所の図面出力と詳細な剪定指示書の作成をArcGIS for Desktop のみで行えるような実験的な取り組みを行っている。公園施設についてもCADデータからGISデータに変換し、長寿命化計画の調査結果を反映させることで、永続的な公園施設の修繕計画と維持管理に繋げている。
ArcGIS Onlineのストーリーマップ機能を応用して、東京の日本庭園おもてなし協議会にて選出された「目白庭園」と豊島区の公園内で初の「池袋本町プレーパーク」の案内を作成した。地図上でわかりやすく写真付きで行き方を案内するアクセスマップとして利用者にとってとても利便性の高いサービスを提供している。
ArcGIS、統合型GIS、台帳管理システムのどれか1つのシステムに依存するのではなく、それぞれの特長を活かして使い合わせることによって、より業務の効率化を図ることができた。今後の課題を伺うと、「区役所内でもより多くの職員に活用していただけるように、ジオプロセシングやモデルビルダーを使って操作の手順を単純化していきたいです」また、「オープンデータの流れに乗って、データを課外の人と共有していけるようにしたいですね。区役所職員だけでなく、地域住民にも利用していただきたい」と酒井氏は語った。ボランティア団体に向けた街路樹データの提供や、外国人住民のために公開するGISデータも多言語化を目指すなど、オープンデータ活動にも意欲的である。今後のGISの活用にも注目していきたい。