事例 > ヨーロッパ最大のロッテルダム港の成長戦略を支えるArcGISプラットフォーム

事例

ヨーロッパ最大のロッテルダム港の成長戦略を支えるArcGISプラットフォーム

ロッテルダム港湾局

 

位置情報をキーに複数の業務システムをArcGISに統合

課題

成果

2014_Rotterdam_01

ロッテルダム港は大都会のように慌ただしい。北海に位置し、マース川沿い約42Kmにわたり広がるヨーロッパ最大のこの港は、商業貨物の取扱量で世界第3位を誇る。2013年には13万隻もの貨物船が停泊し、4億4,000万トンという驚くべき量の貨物の取扱いを記録した。まさに、ヨーロッパ5億人の消費窓口である。

ロッテルダム港の多くは貨物の積み下ろし場として利用されているが、一方でオイルの精油や合成繊維の製造工場、販売用の果物のパック詰用の生鮮品の加工場も併設されている。ロッテルダム港では、約9万人が働いている。

背景

2013年、ロッテルダム港は事業規模の拡大に伴い、15億ユーロをかけて北海側にMaasvlakte 2(通称 m2)と呼ばれるエリアの拡張を行った。今後数十年間はさらなる拡張工事が見込めない中で継続的な成長を維持していくには、エーカー当たりの利益率を上げていくことが重要となる。「貨物の取扱量の増加に対応するには、空間やリソースを効率的かつ賢く利用していくことが唯一の方法です」とPortMapsのプログラムマネージャーであるErwin Rademaker氏はいう。

ロッテルダム港湾局は、様々な業務の維持・管理に複雑なシステムを利用してきた。この業務管理システムは古いGISで構築されており、港湾局の内部的成長とm2をきっかけとする生産性を妨げるおそれがあった。また、港湾業務の管理に使われている数十の業務システムとの連携が難しいことが、最大の弱点とされていた。そのため、すべてのシステムの連携、業務の利便性の向上、すべての部署で同じ情報の閲覧を可能にするため新たなプラットフォームの導入に踏み切った。

複数の資産管理システムを長期にわたり検討した末、Esriオランダ B.V. とEsri プロフェッショナルサービスチームにPortMapsと呼ばれるArcGISプラットフォームの導入と、徹底した業務の一元管理化を依頼した。「PortMapsは、ユーザエクスペリエンスの統一化と、早期の本稼働への移行に焦点を絞って構築しました」とEsri オランダ ビジネス開発ディレクターのFrits van der Schaaf氏はいう。「従業員にとって重要なことは、業務フローが明瞭で効率的、かつ導入が迅速でシームレスであることです」

導入手法

港湾局は新しいシステムの構築にあたり、工事請負業者ではなく、共に仕事をし、資産管理のあり方を見直してくれるパートナーを必要としていた。従業員は最新のGISを学び、ロッテルダム港が手掛けるすべての事業を管理するための地理空間プラットフォームについての概念を持つようになっていた。

Esri社がシステム構築を5か月で行うことを提案したとき、港湾側は半信半疑であった。他社の「最善の組み合わせ」システムは、急ごしらえのユーザ エクスペリエンス止まりで、5か月というタイムフレームでの構築は不可能だったからだ。

ArcGISは、ロッテルダム港が使用している49のシステムを段階的に、また比較的混乱なく廃止していく唯一のプラットフォームであった。Esri プロフェッショナルサービスとEsriオランダは、SAP、AutoCAD、Microsoft Officeといった主要な業務システムや、ワークフローやデータモデルの開発、資産と境界線、区画と関連する土地記録、公共設備、輸送、深浅測量、衛星画像、ライダーを含むジオデータベースを構築し、ArcGISプラットフォームに統合していった。

港湾局からの資産管理システムに対する要求は明確だった。マウス操作3クリックで、誰もが必要な資産情報にアクセスできる業務フローが求められた。この要求を実現するため、統合型ArcGISデータベースに1,500レイヤ以上の港に関するデータを移行し、港で核となる10の施設のデータ管理のワークフローの構築を行った。Esri社側のシステム構築方法は、港湾局の職員と多くの課題に向き合い、その後の課題は自分たちで取り組んでもらうというものであった。「スタッフのトレーニングの多くにおいて、データ変換作業に積極的に参加してもらいます」と van  der Schaaf氏は語る。「データを移行しレイヤを作成してしまうと、作業は情報機器用の港のベースマップや浚渫アトラスといったテンプレートの設定に移りました」

2014_Rotterdam_02

導入の最初のフェーズは完成まで5カ月を要し、2014年1月にPortMapsとしての運用が開始された。いつでも、誰でも情報のリクエストが簡単に行えるように、PortMapsでは初期画面から港の詳細なマップを利用している。モバイル端末での情報共有、閲覧も可能だ。

導入成果

港湾局の職員は、PortMapsにアクセスし、幅広い情報の更新を行っている。PortMapsは、環境管理、セキュリティや安全面のプロセス(例:海運の交通管制)、エリア計画、港湾開発、事故対応に関して主要な役割を担っている。例えば、職員はPortMapsのメインマップをクリックまたはタップすると、SAPに格納されている埠頭に関する契約を閲覧することができる。また、車輛やその他の資産は追跡、モニタリングされ、関連する記録の閲覧が可能だ。マップやドキュメントへのリンクは、かつての情報システムの特徴であった別のアプリケーションを読み込む方法を廃止することで、業務の効率化を実現した。「システムには、鉄道路線、導管、電線などあらゆる地物が盛り込まれています。ArcGISでは、これらの地物の関連性を明確にし、関係するドキュメントをポップアップ ウインドウで開くことができるなど、港湾管理業務の実用性が図られています」とRademark氏はいう。

今後の展望

ロッテルダム港は、PortMapsを港湾管理の画期的な取り組みと考えている。この成功から、ロッテルダム港湾局は提携している世界中の港にArcGISプラットフォームの導入を計画している。さらに、ロッテルダム港のPortMapsについては、今後、ArcGISプラットフォームに構造劣化分析やリスク・事業価値評価といったエキスパートシステムへの統合を進めていく予定だ。Esri社のグローバル セールス ディレクターのChris Cappelli氏は「ロッテルダム港における成功の主な要因は、早い段階で様々な港湾業務に最新のGISが応用できることを理解してもらったことだ」とこの導入事例を評価している。

関連業種

資料

掲載日

  • 2014年11月19日