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事例

気象情報の見える化で保険金査定を正確に算出

米国保険事業団体PLRB

 

気象情報、過去の災害データ、エクスポ―ジャー情報を分析・比較することで戦略的意思決定を導く

課題

成果

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PLRBはレーダーによって観測される降水量の詳細、時間帯別の雨や雪、
雹の予報を含むリアルタイムのデータを取得できるようなシステムを作り上げた

 エクスポ―ジャーの分布とリスクを可視化

PLRB(The Catastrophe Services division of the Property & Liability Resource Bureau)はイリノイ州のダウナーズグローブにある保険会社の事業者団体である。メンバーは企業の財産の損害を補償する保険会社だ。事業団体メンバーの保険会社は損害調査の効率化を支援する教育や技術に関する支援資料へのアクセスが可能だ。

PLRBはどこに顧客が位置しているか、合計の損害はいくらなのか、竜巻や強風、雹などの悪天時の危険性をどのように定量化するのかなどPLRBメンバーの保険会社からの様々な質問に答えることでサポートしている。そのほかにも、有害物質やテロによる人為的な損害や洪水や山火事などの自然現象による損害となりうる事柄を見出し分析する。「メンバーの保険会社の支援がPLRBの主な役割である」とPLRBの副会長であるヒュー・ストラウン氏は述べた。メンバーからの一番多い要望の一つが、エクスポージャーを数量化、または可視化し分析でき、現在、過去そして未来のリスクを比べる総合的なツールだった。最終的に、メンバーの保険会社は社内の関係者と情報を共有できて、相手に素早く必要な情報を伝える方法が欲しいのである。

このようなPLRBの要望とArcGIS for Severに組み込まれたアプリケーション開発の実績によりEsri社のパートナー企業であるGeoDecisionsがこのシステム開発に取り組むことになった。GeoDecisionはArcGISのプラットフォーム上にPLRB マップというPLRBのためのシステムを作り上げた。はじめに、PLRBマップは従来のデスクトップブラウザとスマートフォンからでも利用しやすいもので構成された。これによりメンバーがオフィスにいても外出先でも、必要な時に必要な情報を手に入れられるようになった。同時に、承認されたセキュリティーサービスに接続しているデバイスのみでメンバーにログインしてもらうことにより、安全かつ簡単に必要な情報にアクセスできるようになった。このシステムはリアルタイムで重要な情報と外部のデータソースへのアクセスを提供しながらも、データをPLRB内部に安全に保つことができる。さらに、簡単にカスタマイズでき、将来的にも規模を拡大したりシステム内容を変更できたりする柔軟性が備わっていた。

データを集め、見分ける力を構築

「PLRBはアプリケーション利用者数に関係なく、大きな災害などがおこったり、損害査定チームが外出したりしていても、一定のパフォーマンスとデータへのアクセスを保持する必要がある」とストラウン氏は述べる。データの可視化や分析の必要性に応えるためにプロジェクトチームでは、災害や保険に関するデータにアクセスできる方法を見出した。PLRBマップは、公共と民間機関で収集された過去から現在に至る気象と地形に関するデータへのアクセスを可能にしたのである。

気象に関するデータは災害モデリングに欠かせない情報の一つである。PLRBはレーダーによって観測される降水量の詳細、時間帯別の雨や雪、雹の予報を含むリアルタイムのデータを取得できるようなシステムを作り上げた。このシステムは現在の風の状況を含む詳しい専門的な情報も把握できる。竜巻などの大きな被害が予想される気象現象が起こったときに、PLRBメンバーは刻々と変化する風の状態を検索できる。北アメリカの分析には、ナショナルハリケーンセンターから発表される熱帯暴風雨や竜巻、暴風津波圏エリアのデータをはじめとする湾岸や東海岸の天候を大きく左右するリアルタイム情報と過去の情報が不可欠だった。「PLRBマップは風速や竜巻の情報など様々な情報を組み合わせて、すべての気象予測に使うことができる」とストラウン氏は述べた。

さらに、メンバーは竜巻や洪水、暴風など1950年以降の歴史的な大災害について検索し分析することもできる。歴史的な災害を地図上に重ね合わせ表示することは、ユーザが長期的なリスクや傾向を見出すことにつながる。これらのレイヤーは道路、衛星画像、地形の詳細、風景、などの様々なベースマップと共に表示することも可能だ。Premium DigitalGlobeによって24時間以内に被災地の衛星画像が見ることができ、PLRBの他のデータと比べることができる。

どこでも、いつでも応えてくれる

2013年の前半に、PLRBはメンバーがスマートフォンやタブレットを通してGISを使いこなせるようにするという目標を設定した。順応性、移動性に長けたPLRBのマップは現場作業、特に損害調査において、簡単かつ確実にアプリケーションにアクセスすることを可能にした。

損害調査担当者が特定の場所の請求内容を審査する際には、請求内容を立証するための様々なマップデータに素早くアクセスし、データを集約し可視化するためにモバイル端末付属のGPSか住所検索機能を利用できる。例えば、雹による災害を担当している損害査定人は雹による災害や付近で起こった災害のリストを洗い出し航空写真と重ね合わせて表示できる。アプリケーションで情報の共有とマップの閲覧を可能にし、他の媒体にプラグインしたり、インストールしたりせずに、e-mailを通してレポートを受けとれるようになった。


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他の保険会社のエクスポージャーのデータをマップ上で
組み合わせて活用できる

PLRBマップの一番の利点は、メンバーの保険会社が自社の顧客の分析と他のメンバーの保険会社の災害に関する可視化されたエクスポージャーのデータを組み合わせて活用できることである。機密が守られたテンポラリーのデータアクセス権を提供することで、PLRBのメンバーはそれぞれのエクスポージャーに特有の危険性を可視化し分析できる。気象予測と他のデータサービスを使って災害担当者は、エクスポージャーに対して今後起こりうる災害の危険性と影響についての戦略的意思決定をすることができる。さらに、このシステムにより、竜巻の前兆である風の回転が速いエリアを見つけることができる。

「今まで災害発生から被害の査定までには24時間から48時間かかっていた。これからは、様々なエクスポージャーに対して予測される竜巻の進路と影響を迅速に判断し、計画を立てて潜在的なまたは実際の被害に対応できる」とストラウン氏は述べた。加えて、PLRBマップユーザは落雷の可能性のある場所、日にちに関する統計を算出することができる。このシステムによって、さらに簡単で正確な保険金を算出できるようになった。

過去の災害の特徴を分析

過去の気象的な特徴や災害に基づいた保険金の傾向を検索できることは、もう一つの特徴だ。災害の種類や特定の場所などのデータを使い、地図に表示することによって、調査や分析を促進することにつながる。PLRBはメンバーに対して、顧客の豊富な住所データを活用できるツールを提供した。1つの住所または災害について調べるのではなく、ユーザがマップを使い、そのエリアの顧客のパターンや確率を見出し理解することができる。これらの数値は一般的なスプレッドシートにして、アプリケーション以外で使うデータに加えることもできる。PLRBはメンバーの顧客情報のプライバシーと安全性を守ることを保証したうえで、このアプリケーションをメンバーへ提供しているのである。

■関連リンク

ArcNews記事:「GIS Streamlines Insurance Claims Adjustment

 

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掲載日

  • 2014年9月22日