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国勢調査と開発計画立案を支援

ルワンダ国家統計局

 

ルワンダは米国メリーランド州とほぼ同じ面積(四国の約1.4倍)の東アフリカにある国である。人口は1,000万人ほどで、コンゴ民主共和国、ウガンダ、タンザニア、ブルンジと国境を接している。2012年には国勢調査が行われる予定だが、それは1994年に起きた虐殺の後遺症に未だ苦しむこの国にとって複雑で困難な事業である。虐殺以降2度目となる国勢調査が行われれば、ルワンダのすべてのレベルの行政機関にとって必要不可欠な詳細なデータが手に入ることになる。

NISRはマッピング作業の進捗管理にArcGISを利用している

1994年以来、発展への軌道に再び戻るため、ルワンダは完全復興に向け多方面からあらゆる努力をしてきた。その過程の一部として、ルワンダ国家統計局(the National Institute of Statistics of Rwanda:NISR)が設立され、2005年より独立機関として機能している。NISRの使命は、実際的で信頼できる統計情報とサービスを提供し、開発指針の屋台骨となる情報源として利用してもらうことである。NISRは近ごろ、保有しているデータベースを近代化し、GISを使って統計データを空間データと結合するという決断をした。GIS導入を決定した一番の理由は、2012年に行われる国勢調査に対する要望と期待に対処する必要があったからであった。

「我々の日々の作業にGISはとても重要です。統計情報を空間的に分析することができるのですから。」とNISR情報コミュニケーション技術アドバイザーのRajiv Ranjan氏は語る。「ほとんどの人がこのシステムの恩恵を受けることができるのです。だから、現在保有するデータだけでなく新たに収集する国勢調査や他の重要な統計データ収集活動においても、透明性を増し、多方面からの分析が可能なデータベースの構築に努めています。また我々には、国勢調査のデータを視覚化することが求められていました。この条件を満たすことができるのはGISだけです。統計データを地図上で表示することにより、情報伝達や利用が容易になり、計画立案や意思決定の効率も大幅に向上することでしょう。」

Esri社のスタッフが5年以上にわたってルワンダの専門家へのトレーニングを行い、市町村のプロジェクトに参加したり各省庁や大学に同行したりしていたため、ルワンダ政府はGISソフトウェアについてよく理解していた。対するEsri社スタッフは、地域のニーズや組織的・技術的な開発レベルを経験上熟知していた。

2010年の秋、国内14,000以上の村の境界線やランドマークのデータを取り込むため、NISRは新たに60人の地図製作技術者を採用しトレーニングを行った。技術者達は、ArcPadを搭載したトリンブル社製のGPS機器を使用し、村の境界線の修正作業や学校、医療機関、市場、各種産業、電線などの社会経済インフラのデータに位置情報を持たせる作業を行っている。NISRのGISチームはArcGIS DesktopとArcGIS Serverを使い、国勢調査のデータを画面に表示し、必要に応じて検索、分析、印刷を行う予定である。

NISRのGIS部門長Florent Bigrimana氏

NISRの組織的な能力がGISによって向上することで、多元的にデータを表示し、ルワンダの経済開発貧困削減戦略(*1)およびミレニアム開発目標(*2)の進捗状況を意思決定者が簡単に確認できるようになる。例を挙げると、国勢調査のデータをマップに表示することで、学校、診療所や病院、道路などの都市インフラの設立計画の一助となる。地域ごとの孤児および障碍者の数や、雇用や識字率における男女の不均衡が視覚的に明らかになるからである。それだけでなく、国勢調査の結果により、住戸形式や飲み水、そして電話線や電線などのインフラの敷設状況もマップ表示することができる。 また、国勢調査のデータは将来的な人口分布予測のベースとなり得るのである。

現在行われている村の境界線のマッピング作業が完了した後、NISRのスタッフは各家庭に聞き取り調査を行う予定である。2010年11月、Esri社は中学校の生徒たちにGISに親しんでもらうため、ルワンダで3度目となるサマーキャンプを実施した。生徒たちはNISRと国立土地センター協力の下、2012年に行われる国勢調査と同じ作業を行ったのである。彼らは小さな区域の地図データを手に入れ、家庭への聞き取り調査を行い、そこで手に入れたデータを位置情報とリンクさせ、そしてその結果をGISを使ってマップ表示した。Esri社スタッフと生徒たちは、その後NISRへのフィードバックを行い、自分たちの経験と一連の手順から見つかった新たな発見について報告した。

NISRは、国の課題対処能力向上に貢献することに専心しており、そのために必要とされるGISの人材育成のため、GISの成績が優秀な中学生達にインターンシップの機会を与える予定である。

 

*1 経済開発貧困削減戦略(EDPRS: Economic Development and Poverty Reduction Strategy): 2007 年11 月にルワンダが策定した開発計画。知識を基盤とした社会 のための技能、農業、インフラなど8つの重点分野を定め、経済成長を通じた貧困削減を目指す。

*2 ミレニアム開発目標(MDGs: Millennium Development Goals):開発分野における国際社会共通の目標。極度の貧困と飢餓の撲滅など、2015年までに達成すべき8つの目標を掲げる。


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掲載日

  • 2012年1月23日