私はEsri社のパートナー企業であるSSPイノベーション社(コロラド州エングルウッド)で、首席コンサルタントをしている。業務は、Esri社製品の導入から既存システムへの統合まで様々だ。ある日、9歳の息子、ジョシュアの所属するカブスカウト(※)が毎年恒例のポップコーン販売を行うことを知った。カブスカウト隊長から事前に説明された販売手順は以下の通りだ。
日々GISに携わる者として、「マップ」「Excel」と聞いたらGISを使わない手はない。ジョシュアに私の仕事内容を体験してもらうにも良い機会だ。こうして私とジョシュアは、モバイル端末で訪問先とセールス状況のデータを収集し、アカウント登録だけで始められるArcGIS Onlineでデータの可視化を行う「ポップコーン販売プロジェクト」を開始した。
家に帰ると、早速、ポップコーンの販売状況を管理するための ArcGIS Online Web マップの作成に取り掛かった。最初に、a.販売成功、b.留守・再訪、c.興味なし の 3 種類の CSV ファイルのテンプレートを作成。CSV ファイルには、名前、住所、注文日、ポップコーンの種類、支払方法、製品配送状況を確認するための旗を入力するフィールドを作る。今回の「ポップコーン販売プロジェクト」のゴールは、販売に必要な情報をすべて取り込み、ポップコーンの配達時に取り込んだデータを活用することだ。尋ねた家の詳細情報を保存しながら、広範囲の家々を回ることを目指す。
ArcGIS Online に各 CSV ファイルをアップロードし、Web マップを作成。商品の価格を追加するためにフィールドエイリアスを編集し、ポップコーンのイラストなどのシンボルを作成してからマップにした。大凡これらの作業に時間を費やした。
翌日、ジョシュアは 私のiPhone を持ってポップコーン販売を開始。フィールドでのデータ入力と、ArcGIS Online 上のマップへのデータ追加には、モバイル端末にインストールした Collector for ArcGIS アプリを利用した。販売先の家に到着するとマップ上にシンボルを落とし、ポイント位置から住所を生成していく。手動で住所を入力するより、手早く新しいレコードの追加が可能だ。ただ、ジオコーディングが上手くいっても、近所の住所を引っ張ってきてしまう場合があるので住所の確認は必要だ。販売状況の入力はとても簡単で、アプリケーションの入力フォームに氏名、日付、住所、販売数、支払方法を入れるだけ。Web マップには、販売成功、留守・再訪、興味なし、のカテゴリー毎に分類されたポイントフィーチャが表示される。
この即席のプロジェクトの一番良い点は、離れた場所から iPad を通してリアルタイムにポップコーン販売の進捗状況を閲覧できることだ。ポイントデータが自動で表示されるので、随時、入力の品質保証と品質管理(QA/QC)を行うこともできる。また、一時、ジョシュアの姿を見失ったが最後にポイントが入力された場所に車を走らせることで、居場所を特定することができた。 余談だが、ArcGIS Online で利用可能なEsriのデータを使ってターゲットとなる販売エリアをマッシュアップしてみた。ターゲットエリアの平均年収の情報を引き出し販売区域に重ねてみると、平均年収が 11 万 3,000 ドル以上の住民が多く、ターゲットとしては良い地域であることが分かった。来年ジョシュアがポップコーンの販売を行う際にこのレイヤーを利用するのも良いだろう。
このプロジェクトは、バックオフィスや他のモバイル端末など、どこからでも入力したデータの管理ができることを実証している。さらに、データの収集時に利用する Collector for ArcGIS アプリは、今までGISを使った経験のない9 歳のジョシュアでも十分に利用できるほど簡単だ。 Esri 社の ArcGIS Online を利用するメリットとは何か。それは、一般的なモバイル端末のプラットフォームを使って、空間データを収集、分析、体系化、配信できるということである。誰もがスマートフォンの使い方を知っている時代だからこそ、迅速かつ簡単に導入することが可能なのだ。そして何より、手間暇かけた事前準備なくして、素晴らしいGIS体験をジョシュアにもたらしてくれた。
ポップコーンの販売は終了した。次は、商品配達の進捗状況の入力にCollector for ArcGIS アプリを利用する。各販売レコードに配送済みフラグのシンボルを追加した新たな Web マップを作成する予定だ。
※ボーイスカウトの小学 2 年生~ 5 年生で構成