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事例

インターネットによる防災マップの提供

広島県土木局 砂防課

 

県民の生命と財産を守るため、広島県が取り組むWebGISの活用

課題

導入効果

平成11年の土砂災害
平成11年の土砂災害

 

イントロダクション

広島県は瀬戸内海を代表する温暖少雨な気候の地域ではあるものの、県土の70%が山地を占めるなど、平野部が少なく、土砂災害危険箇所が全国で最も多い県であり、その数は約32,000箇所にも及ぶ。平成11年6月29日には、活発な梅雨前線の影響により、広島市や呉市を中心に市街地周辺の住宅地を土石流やがけ崩れが襲い、死者24人、家屋の全壊64戸などの甚大な被害を受けた。近年の気象の変化に伴い、全国的に局地的豪雨による被害が増加傾向にあるなか、広島県では、県民の生命と財産を守るため様々な施策を講じている。

土砂災害ポータルひろしま

土砂災害ポータルひろしまのページ画面
土砂災害ポータルひろしまのページ画面

広島県では、土砂災害対策として「ハード対策」と「ソフト対策」が一体となった総合的な施策を進めてきた。「ハード対策」は砂防えん堤や渓流保全工の建設など、いわゆる土木工事を行うことにより流出土砂・流木の抑制や捕捉、渓岸の浸食・崩壊などを防止するための施策であり、一方「ソフト対策」は県民や地域の企業に対し、危険箇所や避難所などの情報を広く公開する対策である。土木局砂防課の髙津氏は、「ハード対策による施設の整備は、土砂災害対策として最も重要ではあるものの、施設の整備には多くの予算と時間が必要となるため限界があり、ソフト対策により県民や地域の企業が自らの身を守るための知識(防災意識)を持ってもらうことが大切である」と話す。

広島県ではソフト対策のなかの一つの施策として、平成14年よりWebGISによるインターネットを通じた情報提供を継続的に行っている。

平成14年

「広島県土砂災害マップ」として県内の土砂災害危険箇所をインターネット公開する

平成15年

「広島県土砂災害マップ」を改修し、県内の土砂災害警戒区域・特別警戒区域図をインターネット公開する

平成20年

システムをリニューアルし、「土砂災害ポータルひろしま」に改称する

平成24年

電子国土等を背景図として表示する機能、オリジナルハザードマップ作成機能等を追加する

土砂災害ポータルひろしま」は、土砂災害への日頃の備えや大雨により土砂災害発生の危険性が高まった時に早めの避難体制の整備に活用できるよう、土砂災害危険箇所や土砂災害警戒区域・特別警戒区域の情報をWebGISにより提供し、安全かつ安心して暮らせる県土づくりに役立てることを目的として運用されている。

 

WebGISの画面
WebGISの画面

WebGISの改修

「土砂災害ポータルひろしま」において公開されているWebGISは、平成25年のリニューアルによって、一般利用者の利便性を高めるために、多くの機能が改修された。

 

1. 画面レイアウトの改善

画面レイアウトは、県民や事業者など一般の方が理解しやすいよう、凡例などには挿絵や写真を掲載することとした。

2.パフォーマンスの向上

最新のArcGIS製品を導入することにより、地図の移動や拡大縮小といった一般地図動作のパフォーマンス向上を図った。

3. 様々な背景地図の利用

WebGISの背景地図として利用する地図データを広島県が作成した独自のものに加え、インターネットで提供されている複数の地図サービス(Google Maps、電子国土、Bing、Open Street Map Japan)をマッシュアップして取り込む機能を加えた。

4. オリジナルハザードマップの作成

一般利用者が地図にコメントやシンボルを書き込み印刷する機能を付け加えたことで、例えば「家庭」や「企業」で独自に使用するための避難経路地図などを作成できるようになった。

 

内部システム

システムの全体構成
システムの全体構成

広島県では当初(平成14年)より、前述している一般にインターネット公開するシステム(公開システム)と、これとは別に内部で職員が使用するシステム(内部システム)の二種類を運用していた。ただ、それぞれのシステムが連携しておらず、データの二重管理が課題となっていた。

平成20年のシステムのリニューアルを機に、WebGISエンジンとしてArcGIS Server(当時Ver9.2)を採用し、公開システムと内部システムのデータベースを一元管理することとした。

現在改修中(平成25年度完成予定)の内部システムは、県職員が施設の維持管理等を行うため、日常的に利用しているが、県下の市町もインターネットを通じて一部の機能を使用することができる。市町は、内部システムからGISデータをダウンロードすることができ、独自のハザードマップ作成などに利用することができる。また、施設の情報も確認できることから「土砂災害ポータルひろしま」及び内部システムを通じ、県と市町が情報共有して防災対応に当たることができる。

 

課題と今後の取組

最後に髙津主任に現状の課題と今後の取組について聞いた。

1. 新たな情報の配信

「土砂災害ポータルひろしま」で未公開の砂防三法の指定区域も今後公開する必要がある。また、サイトの一般利用者がどのような情報を求めているかを見極め、タイムリーに的確な情報提供を行う必要があると考えている。

2. 土木局での横断的システム利用

今回の取組は、砂防課が主体となった「土砂災害」についての対策であるが、県民が望む真の意味での「安心かつ安全に暮らせる県土づくり」には、土木局の各課が提供している道路や河川、港湾といった情報も統合した横断的なシステム構築が今後必要になると考えている。

3. 「 ハード対策」と「ソフト対策」の連動

最後に髙津主任は、「土砂災害ポータルひろしま」の運用により、県民や地域の企業に対する情報提供はできているが、本当に対策の必要な地域に対し、ハード対策を講じ、土砂災害による被害を防ぐ必要がある」と語った。

作業風景
作業風景

 

 

 

プロフィール


広島県土木局砂防課
出來谷課長(中央) 日浦主査(左)
髙津主任(右)



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資料

掲載日

  • 2014年8月18日