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事例

地域の潜在機能を評価した日本列島マップ

日本政策投資銀行

 

将来の対応に向けて地域の潜在機能を評価した日本列島40万メッシュデータをGISでマップ化

無償で利用可能な10種類の基礎データを組合せ、9つのCapability Map(潜在機能評価図)を作成。地域事業の早期段階での土地利用の評価・合意形成・選択を行う際の支援ツールとしての利用をねらう。

ねらい

市町村合併による広域化、点(機器や施設)から面(街区単位や施設・交通機関・地域の連携)に拡大するCO2等削減の要請、土地利用の多様化(都市的開発、バイオマス開発、遊休地化、自然再生)などに対応する広域的なマネジメントやガバナンスが求められている。

その際、開発等のプロジェクトの早期段階で地域の潜在機能の検討を行わず、土地利用選択を誤ると、後年度負担が大きくなる可能性がある。また、特定の範囲でうまくいったとしても、全体ではやがて「コモンズの悲劇」のように資源が枯渇する可能性もある(部分最適と全体最適)。

それを防ぐべく、日本政策投資銀行地域政策研究センターの杉原氏、生駒氏他は、地域で何ができるか・できないか(地域の可能性と制約性)を示すCapability Mapを作成した。このマップは、限られた時間と予算の制約の下で事業の評価・合意形成・選択を行う支援ツール(RMS:地域マネジメントシステム)としての利用をねらっている。

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Capability Map

Capability Map(潜在機能評価図)とは、生態系の多面的な機能を反映したその土地本来の潜在能力を示す地図である。基礎データを組合せて日本列島を全部で9つの潜在機能で表現し(3次メッシュ:約1km格子、合計約40万メッシュ数)、さらにこれらを組み合わせて地域を総合的に評価する。その際に、階層クラスタ分析を用い、潜在的に生態系の強靭な場所・脆弱な場所・中間の場所といった分類で簡易的に見ることを行っている。

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使用した基礎データ

Capability Mapの基礎データには、無料で利用可能で更新されるものが採用された。地域のシステム構造のベースである地形・地質・土壌・法的規制等は「国土数値情報(国土交通省)」、植生や土地利用は生物多様性情報システムに含まれる「自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査:環境省)」など、10種類のデータを用いた。これらのデータは、無料で利用可能であり、また更新されて行くものである。

ツールの開発

Capability Map作成のためのGISソフトウェアには世界シェアトップである点や、他社製品に比べ操作性と拡張性が優れていること等からArcViewが採用された。また、Capability Mapや基礎データの表示、各種行政界、道路、鉄道、河川等との重ね合わせなどを簡便に行うために、ArcViewのVBAを利用して管理ツールを開発した。このツールの構築には、九州大学大学院山下潤助教授、元RPTの八城正幸氏が参加した。

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適用例

これまでに、釧路湿原、中京圏、阿賀川流域圏、高知等で有効性を確認した。

高知のバイオマスの例では、森林(植林地)バイオマス資源量とその採集適地を集計しようとするきに、従来は標高・傾斜の作業効率性で判断していた(経済性)。これに前述の生態系の潜在的な強さ・弱さ(環境性)を考慮することで、経済性と環境性を両立させた持続的なバイオマス利用が可能となる。

Capability Mapは複数合わせ見て総合評価しなければならないが、その煩雑さを避けるために、関連する7機能を階層クラスタ分析し、潜在的に生態系の強靭な場所・脆弱な場所・中間の場所といった3分類で見ることを行っている。

全国的に見て、現況の植生は戦後の拡大造林のおりに、底地との適性を必ずしも的確に認識して植林等を行った結果とはいえないことから、計画づくりにはこのようなマップが必要である。

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今後の予定

2006年に『自然資本・百年の国づくりの提案』で高知を舞台にした論文が環境大臣賞を受賞した(グループ受賞)。そこで、まず市町村合併で全流域が高知市域となった鏡川流域圏をケースとしてとりあげている。

日本政策投資銀行について

日本政策投資銀行は、1999年に日本開発銀行と北海道東北開発公庫が統合し、地域振興整備公団と環境事業団の融資業務を引き継いで設立された(2008年民営化予定)。地域政策研究センターは、その際に、地域経済の自立的発展に寄与することを目的として設立された。

プロフィール


日本政策投資銀行 地域政策研究センター
RMSチーム 杉原 弘恭 氏 生駒 依子 氏



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2007年1月1日