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災害時要援護者の安否確認状況をGISで可視化

五泉市役所 総務課

 

平成20年度 新潟県総合防災訓練の害時要援護者 安否確認訓練にGISを初導入!

平成20年度 新潟県総合防災訓練

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県総合防災訓練主会場訓練配置図(村松公園内)

「防災の日」にあたる9月1日は、地震等による大規模災害を想定した総合防災訓練が、全国各地で開催される。

新潟県では平成16年10月23日に中越地震、平成19年7月16日に中越沖地震と3年の聞に二度の大地震に見舞われ、甚大な被害を被った。そのため、新潟県民の防災に対する意識は高いものがある。

平成19年度の県総合防災訓練は、上越市での開催を予定していたが中越沖地震の発生により中止となった。そのため、五泉市を舞台に2年ぶりの開催となった。

訓練概要

県総合防災訓練は、新潟県、五泉市の主催で五泉市村松公園周辺で開催された。

本訓練は、地域防災計画に基づく災害時の対応について、新潟県及び防災関係機関等が実動訓練を合同で実施し、災害対応力の向上と連携の強化を図るとともに、地域住民の参加により防災意識の啓発を図ることを目的としている。

過去の訓練は各機関の発表の場といった趣旨が強かったが、今回の訓練は、より実践に即し、各機関が連携した参加型訓練を実施した。

今回の訓練では、新潟県の要望でGISを導入した。これは、中越沖地震の復旧活動にGISが使用され発災時からも有効であること、またGISが情報を視覚的に表現することに適しているなどのことから、災害時要援護者の安否確認訓練で使用されることになった。

全国的に見ても防災訓練にGISを導入している例は少ないと思われる。

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訓練風景

災害時要援護者の安否確認訓練

「平成20年9月1日午前9時頃、五泉市の月岡断層帯を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生。五泉市では震度6強を観測。五泉市周辺の市町村でも大きな揺れを記録している。」

このような想定のもと、訓練が開始された。

五泉市は、五泉地区(旧五泉市)と村松地区(旧村松町)で構成されている。訓練は市内五泉地区の一部で自主防災組織が、村松地区では民生委員が災害時要援護者の安否を確認するものであり、今回の訓練は村松地区を中心に実施された。民生委員とは、担当区域において住民の社会福祉に関する相談に応じ、必要な支援を行う人である。訓練では、民生委員が各担当区域内の要援護者宅を1軒1軒訪問して安否を確認する方法が採られた。

民生委員は、安否確認を終了すると村松支所に電話で状況を伝える。この時点では、個人名まで伝えられる。

村松支所では、民生委員から届いた情報を五泉市役所内の要援護者対策班へ無線連絡する。ここで届けられる情報は確認者数のみとなる。届いた確認者数はここで集計され、村松公圏内に設置された現地対策本部
ヘメールで送信される。

今回の訓練の目玉は、GISの導入である。村松公園内に設置された現地対策本部では、要援護者対策班で集計した安否確認者数を元に、GIS化を行った。

GISでは背景となる行政界を安否確認状況に合わせて「50%未満を赤」「50%~99%を黄」「100%を青」で表現した。また、確認割合を表す棒グラフも安否の確認状況に合わせて赤から黄に変わるようにした。

GISは、安否確認率が高い地域と低い地域を目瞭然にした。そして、確認率が低い地域には消防団を向かわせるなど、対策支援に一役買うことにもなった。
そして、訓練開始から3時間後の12時には、94%の安否が確認された。

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安否確認訓練におけるGISの効果

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安否確認状況を見つめる
泉田知事(左)と五十嵐五泉市長(右)

民生委員からの安否確認の報告は、午前10時時点の進捗状況を全員が行い、それ以降は民生委員毎に随時報告された。

民生委員からの報告は村松支所を経由し、五泉市役所の要援護者対策班に届けられ、その情報を元にGIS化が進められ、そこで作成されたデータは、現地対策本部内のテレビモニタに映し出されていた。

訓練の開始後暫くしてから、県庁対策本部からヘリコプターで泉田裕彦新潟県知事が会場に到着した。その後、様々な訓練を視察している中、知事は安否確認状況が表示されているテレビモニタを興昧深く見つめていたという。

新潟県は、中越沖地震において知事の「被害状況を地図にできないのか!』という発言がきっかけとなり災害対策支援GISチーム(EMC)を立ち上げた経緯がある。

EMC(Emergency Mapping Center)の活動成果は、様々な場所で発表されているためご存知の方も多いと思うが、正にあの活動のきっかけを作ったのは知事である。

知事自身が、地図の持つ力を熟知しているのだろう。

今後の展開

「今回の訓練におけるGIS利用は県の要請でした。新潟県は、先の中越沖地震でGISが復旧活動に活用で、さることが証明されたため、県も訓練の段階からGISを活用する必要性を考えていたのだと思います。今回の訓練において一番印象に残っているのは、泉田知事自身がテレビモニタに映し出される要援護者の安否確認状況をじっと見つめ、五十嵐市長と熱心に議論されていた場面です。やはりGISの有効性にいち早く気づかれた知事ですので、安否確認状況が時間と共に変化していくのが一目で分かるGISに興味を持たれたのだと思います。平成19年に予定されていた上越市での県総合防災訓練は、中越沖地震の発生により中止になりました。平成20年は五泉市で無事に訓練を実施できたことが何より嬉しいです。GISを使用し数字等の情報を可視化することで、迅速に状況を把握することができます。また、今回、訓練では行いませんでしたがハザードマップを重ねることで、浸水域の住民を優先して救助ヘ向かうなどの判断にも活かすことがで5きます。GISを用いた訓練は今回が初めてでしたが、次回以降、GISを活用する訓練はもっと増えていくのではないかと思っています。』と廣川主査は熱く気持ちを語った。

プロフィール


左から山崎主幹、廣川主査、稲田主事



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掲載日

  • 2009年1月1日