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事例

地域住民の安全を守る砂防GISシステム

国土交通省北陸地方整備局

 

土砂災害の脅威から地域の生活を守るための砂防施設の調査・計画にGISを利活用する

昭和42年に山形県飯豊山地域で発生した羽越災害をきっかけに発足した飯豊山系砂防事務所。周辺の豊かな自然環境をも考慮した砂防施設は、安全・安心な地域づくりとして行われている。

飯豊山系砂防事務所

国土交通省 北陸地方整備局 飯豊山系砂防事務所は、山形県西置賜郡小国町に設置され、昭和45年から砂防施設の整備を中心とした砂防事業を行い、地域住民の安全を守っている。管轄地域は、飯豊山系と言われる地域(主に山形県と新潟県の大朝日岳、飯豊山、大日岳、荒川、胎内川、加治川)と広範囲である。

飯豊山地域の2つの顔

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土砂災害が進む大崩沢(左)と美しいブナ林(右)

飯豊山地域は「東北のアルプス」や「残された最後の原始的な自然」と言われるほど美しい自然の宝庫で、豊かなブナ林と美しい渓流によって形成されている。地域には磐梯朝日国立公園や胎内二王子県立自然公園があり、紅葉の時期など多くの観光客で賑わう。その一方でこの地域は地理特性により深刻な土砂災害の危険性が高い地域と言われており、管内には約280箇所の土石流危険渓流が存在している。飯豊山地域は、日本海で発生した雲は飯豊の山々にぶつかり、たくさんの雨や雪を降らせる。また夏季の降水量も多く、山岳地域では風化や浸食が進みやすく異常降雨による土砂災害が発生している。そして河川では、荒川、胎内川、加治川は全国でも有数の急流河川として知られている。

砂防とGIS

土砂災害を未然に防ぐために砂防堰堤が必要不可欠となる。砂防堰堤は、大雨などによる災害時に流れ出る大量の土砂を貯めたり、土石流の流れ方を調整する働きをもっている。近年では、公共機関・自治体でも砂防基盤図やオルソ画像(写真画像)を背景図に、砂防指定地情報や危険個所情報管理などを目的にした砂防GISの導入と利活用が進んでいる。

飯豊山系砂防GISシステム

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事務所では、平成12年度からGIS整備に着手した。整備着手時は、管内全域のオルソデータを整備して重要な背景図データとして利用した。またオルソデータ上に砂防施設や土石流危険渓流等の主題図をシェープファイル形式で整備を行い、重ね合せ図や色分け図など様々な図面の作成、GIS属性情報を活用した地理的な情報抽出などを行える。大容量オルソデータやシェープファイル形式データを効率的に管理・共有するため、事務所の基本GIS製品にArcGISを採用した。

飯豊山系砂防事務所で活用される2つのGISシステム

事務所では、飯豊山系砂防GISシステムとして、「砂防情報管理システム」と「流域情報管理システム」の2つのシステムでGISが構築されている。

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飯豊山系砂防GISシステム構成イメージ

平成14年度に導入された「砂防情報管理システム」は、台帳情報や地図情報を事務所内LANで共有するシステムであり、主に砂防情報データベースの情報管理や地図情報の閲覧に使われている。砂防情報データベースは、Oracleデータベースに格納され、ArcSDE8.2によって管理されている。クライアントは、事務所内の調査課や工務課などの職員で、ArcView8.2が利用されている。「流域情報管理システム」は平成15年度に導入され、砂防情報データベースから必要情報をデモ用のスタンドアローンマシンに移し、住民説明のシステムとして活用されている。このシステムでは、管内280箇所の土石流危険個所を様々な角度から自由に三次元表示・閲覧することが可能であり、ArcView8.2と3DAnalystをベースに構築されている。また、砂防施設の最適な設置計画を検討支援する機能として、概略的な縦横断面図を作成できる機能を実装し、砂防施設の調査・計画に貢献している。

今後の予定

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安全性だけではなく、自然との調和を実現した
玉川スーパー暗渠砂防堰堤

今後の飯豊山系砂防GISの利用方法や整備方法について、飯豊山系砂防事務所 齋藤調査課長は次のように語る。「整備されたGISデータは事務所内でより広く利用してもらいたいと考えています。そのためには砂防GIS全般に関する情報をいつでも容易に閲覧でき、より手軽に砂防GISを利用できる環境を整備することが必要となります。」

事務所では、事務所内の職員が誰でも簡単に所内グループウェアにアクセスして、砂防関係情報や、それとリンクする砂防GIS関連情報を容易に入手、共有できるイントラネットシステムとして「飯豊山系砂防GISポータル」の構築に平成16年度から着手している。なお、ポータルサイトの構築にあたっては、ArcSDE8.2とArcIMS4.0.1を採用している。

プロフィール


足水川第1号砂防堰堤(山形県小国町)
既設の堰堤にスリット(切れ込み)を施すことで、落ち葉などの
堆積の軽減や魚道の確保など環境面の配慮を行っている



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2006年1月1日