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事例

宮崎県森林地理情報システム

宮崎県環境森林部

 

従来の森林行政にGIS を融合することで、更なる業務の高度化・効率化を目指す!

県土の76%を山林原野が占める宮崎県。「持続可能な森林経営」を実現し、我が国を代表する国産材供給基地であり続けるために、従来の森林行政にGISを融合した新たな森林行政基盤を構築する。

宮崎県は、平成3年から連続してスギの素材生産量が全国一になるなど、我が国を代表する国産材供給基地として、着実に発展を続けている。しかしながら、森林資源が充実する反面、木材の需給構造の大きな変化から木材価格が大幅に低迷し、本県の林業・木材産業は、収益性の低下から植栽未済地が見られるようになるなど、大変厳しい状況に直面している。また、国土保全等の森林に対する要請が高度化・多様化する一方、これまで森林を守り続けてきた山村地域では、過疎化・高齢化が依然として進行し、このままでは、森林の適正な管理ができなくなることが心配されている。

本庁外観
本庁外観

環境森林課では、今後、ますます高度化・多様化していく森林行政に柔軟に対応していくために、これまでの帳票中心の宮崎県森林資源情報管理システム(以下、現行システム)に、GIS機能を付加した宮崎県森林地理情報システム(以下、新システム)の構築を、平成15年より開始した。新システムにより、森林資源調査の効率化や森林資源情報の迅速かつ的確な把握、データ精度の向上を図るとともに、適正な森林整備の推進、県民の多様なニーズに対応した林業情報の提供を目指している。

新システムで目指すもの

宮崎県では、平成10年度から12年度にかけて構築した現行システム(森林計画データベースシステムと森林簿分散管理システムから構成されている)によって、県・森林組合・市町村の三者による地域森林計画樹立業務の流れは、既に確立され、円滑な運用が行われていた。

新システムでは、この確立された運用体系を大きく変更しないことを前提とし、平成15年度から17年度の3ヵ年で森林データ整備、システム設計、システム開発の順に、システム開発が進められた。

「新システムの成否は、設計段階にかかっていると感じていました。宮崎県では、現行システムで運用体系は確立されています。この運用体系を壊さずに、GISによる業務改善部分を組み込んだ、しっかりとした設計書を完成させることを第一に考えました。」と森主査。

新システムは、この基本方針を踏まえ、以下の3項目を実現するシステムを目指して、開発が進められた。

1.森林簿と森林計画図の一元管理

森林組合による森林計画図(森林区画)更新業務を紙ベースからデジタルデータに移行する。更新されたデジタルデータは本庁の管理サーバに取り込み、その時点で確定とする。確定されたデータは、県庁LAN-WANに接続されたパソコン上で位置表示及び検索を自由に行うことができ、市町村及び森林組合では、オンラインまたはオフラインで森林情報を更新・利用できるようにする。

2.森林情報の高度利用・精度向上

森林計画図、森林基本図及び森林簿の情報提供等、森林計画の業務改善を図り、森林情報の高度な利用を促進する。また、森林情報の迅速かつ的確な把握、及びデータ精度の向上を図る。

3.森林情報の共有化

地理情報の共有化と高度な検索・解析機能によって、各種林業施策を効率的に展開する。また、森林地域の基幹的情報を他部局と共有することで、単に林業のみならず宮崎県の統合型GISのためのインフラ整備としても活用し、質の高い行政サービスが実現可能なシステムにする。

この他に、全国で初めて県と44市町村すべてが光ファイバーで結ばれた超高速ネットワーク「宮崎情報ハイウェイ21(MJH21)」の利用を前提としたWeb型GISの開発も進めた。

宮崎県森林地理情報システム

森林簿と森林計画図の連携(相互検索)
森林簿と森林計画図の連携(相互検索)

新システムは、大きく3システムから構成されている。

1.森林地理情報本庁システム

環境森林課に配置され、森林計画データベースシステムとGIS機能(クライアント/サーバ環境における閲覧・編集・解析)が連携したシステム。GISサーバには、ArcSDEを使用し、クライアントはArcEditorをベースとしている。

2.森林地理情報分散システム(スタンドアロン型)

森林組合に配置され、森林簿分散管理システムとGIS機能(スタンドアロン環境における閲覧・編集・解析)が連携したArcEditorベースのシステム。

3.森林地理情報分散システム(Web型)

本庁、振興局、市町村に配置し、森林分散管理システムとGIS機能(Web環境による閲覧・解析)が連携したArcIMSベースのシステム。

本システムは、平成18年度より運用が開始される予定である。
本システムは、平成18年度より運用が開始される予定である。

おわりに

「GISのレイヤという概念をはじめて知った時には、驚きました。紙の森林計画図では、当然のことながら欲しいレイヤだけを抜き出し、その時々で必要なレイヤだけを抜き取った地図を作ることはできません。本課に限らず、各課、様々な紙地図を使っていますが、本来、効率的な業務を推進するために必要な地図は、ある特定のレイヤだけの地図であることが多いのです。そういった意味では、GISは、どの課でも必要なものだと感じますし、しっかりしたデータベースを作っておけば、どのような応用もできると思います。宮崎県では、統合型GIS構想がありますが、森林地理情報システムが、その中核に位置付けられるように、しっかりとしたシステムにしていきたいと思います。」と森主査は語った。

プロフィール


環境森林課森林計画担当
左から森 辰祝 主査、松下 啓太 主任技師


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資料

掲載日

  • 2006年1月1日