事例 > 港湾・沿岸域の津波対策にGISを活用

事例

港湾・沿岸域の津波対策にGISを活用

海上保安庁海洋情報部

 

大規模地震による津波被害が想定される港湾・沿岸域の津波対策のためにGISを活用

想定される東海、東南海、南海地震で引き起こされる津波のシミュレーションを行って、港湾や沿岸域の津波の挙動を明らかにする。この結果は「津波防災情報」として、港湾等での津波防災のために提供される。

海上保安庁海洋情報部

海上保安庁海洋情報部は日本経済を支える海上交通に不可欠な海図などの航海用刊行物を前身となる水路部時代を含め、130年余りにわたって提供してきました。地震、津波、火山噴火など、自然災害から海上交通や暮らしを守るため、海底の地殻変動、海域の火山活動などの調査を行うとともに津波防災情報などの防災情報の提供を行っています。

津波防災情報とは?

海上保安庁海洋情報部では、中央防災会議の定める想定東海地震及び想定東南海・南海地震を波源とした津波の数値計算を行い、津波防災情報として津波防災情報図と津波アニメーションを作成している。地形データ及び計算結果はGISデータとして整備されており、解析処理結果の有効な活用が可能であることが大きな特徴である。

利用データについて

津波防災情報は、津波の数値シミュレーション結果に基づいて作成されているが、数値計算を行うためにメッシュ化された水深・標高データを作成し利用している。メッシュデータは、外洋域から港湾域にかけて1次メッシュから5次メッシュに区分している。外洋域では粗く、港湾域に近づくにつれてメッシュサイズを細かくしている。各メッシュサイズは別表の通りである。

海域についてはJ-Egg500(JODC-Expert Grid data for Geography-500m)データ、特に5次領域については、測量原図や海図などから海底地形等深線図を作成しデジタル化している。陸域の4次領域については、国土地理院の数値地図50mメッシュデータを用い、5次領域については都市計画基本図の標高点をデジタイズして用いた。また、港の防波堤及び線状の構造物についてはメッシュでは表現できないため、メッシュ間を通る折れ線として位置を表し、地盤高を属性としてデータ化した。想定震源として、「東海地震に関する専門調査会」、「東南海・南海地震に関する専門調査会」(中央防災会議)で定められた断層モデルを用いて津波の数値計算を行っている。また、想定東南海・南海地震については、東南海地震と南海地震が同時に発生したとしている。

津波防災情報図作成区域(1次~4次メッシュ区域)
津波防災情報図作成区域(1次~4次メッシュ区域)

  

津波防災情報図、津波アニメーション及びデータベースの作成

進入図
進入図

引潮図
引潮図

想定地震によるシミュレーション結果をGISデータとして作成しGIS上で津波防災情報図を作成した。時系列図として津波の来襲を表すGIF形式の津波アニメーションもGISを用いて作成している。
津波防災情報図は、各海域において「進入図」及び「引潮図」の2種類を作成した。「進入図」は計算初期水位が最高水面時の計算結果から押波の最大の状況を、「引潮図」は最低水面時の計算結果を基に引波の最大の状況をそれぞれ表示している。

津波解析支援GISシステム

データベースの管理、更新を含めArcView8.3をカスタマイズし津波解析支援GISシステムを構築した。津波解析支援GISシステムは津波解析支援GISシステム、津波防災情報図表示、時系列図表示の3つのサブシステムで構成されている。GISを採用したことにより計算結果データを汎用的に利用することが可能となった。

おわりに

想定東海地震及び想定東南海・南海地震を対象に全28海域での津波防災情報を作成し海上保安庁のホームページに公開している。

tsunami-5
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAIYO/tsunami/index.html

津波防災情報の作成に用いた解析結果はデータベース化されており、津波解析支援GISシステムで管理することができる一方、データ自身についても流通が可能であり、他のGIS情報と併せた解析が可能である。現在、3箇所の管区にてArcViewを利用して津波防災情報のデータを各自治体及び各種団体に提供している。今後は、日本海溝・千島海溝を想定震源とした津波防災情報の作成も検討されている。また津波防災情報の最終的なゴールとして港湾域における津波ハザードマップの作成も視野に入れている。

プロフィール


海上保安庁海洋情報部
海洋調査課 津波情報担当 細萱氏


海上保安庁 
海洋情報部 海洋調査課 津波情報担当

〒104-0045
東京都中央区築地5-3-1海洋情報部5F
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAIYO/tsunami/index.html


関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2006年1月1日