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太陽エネルギー導入にWebGISを活用

ボストン市

 

ボストン市が導入状況の見える化と投資家・市民への情報提供を実現

ArcGIS API for Flexを採用し構築された「ソーラーボストン」
今後のクリーンエネルギー市場拡大を見据えたボストン市の取り組みとは

イントロダクション

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太陽エネルギー利用を中心とした再生可能
エネルギーを導入している施設の検索が可能

2007年、ボストン市トーマス・メニーノ市長は、温室効果ガス削減目標と、リサイクル・再生可能エネルギー戦略をまとめた気候変動に関する行政命令を発令した。この行政命令は、市内での太陽エネルギー利用拡大を目的として55万ドルを投じた2ヵ年プロジェクトで、ソーラーボストン構築において大きな役割を担う。ソーラーボストンは、既存発電に対して、2015年を目処に太陽電気の価格競争力をつけるという米国エネルギー省(DOE)のソーラー・アメリカ・イニシアチブの一環だ。市の温室ガス削減目標の実現と米国エネルギー省の構想を促進するため、メニーノ市長は2015年までに25メガワット分の太陽エネルギーを導入するという目標値を設定した。また、ソーラーボストンプログラムの支援としてWebGISテクノロジを導入し、現状の太陽光発電の導入状況を地図化し、目標値に対する進捗状況を把握、各民家のソーラー発電量の分析を行えるようにした。

導入背景

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屋根が受ける日射量の解析結果を色別で表示

ソーラーボストンは、グリーンビルディング促進を掲げるボストン市が進めているプロジェクトだ。グリーンビルディングは、建物資源を最大限に利用する一方、そのライフサイクルを通して環境への影響を軽減していく。メニーノ市長は2004年にグリーンビルディングタスクフォースを立ち上げた。2007年にはタスクフォースからの提案を基礎としたエネルギーと環境デザインリーダーシップ(LEED)というグリーンビルディング標準を制定し、米国主要都市として初めて、全ての大型および民間所有のビルに対しこれへの準拠を求めた。このボストン市最大の住宅地と商業地への太陽光発電の装備は、グリーンビルディングとエネルギー保全を目標とした市の方針を踏まえた取り組みである。

再生可能エネルギーは、既存の発電システムに対する需要と大気汚染を減らすことを目的としたソリューションである。その場でクリーンエネルギーを作り出す太陽エネルギーシステムは、温室ガス排出量や大気汚染を軽減し、安全なエネルギーとともに地域雇用を創出する。また、太陽電気システムは、最も電力需要が増える夏の発電量が期待できるため、電力システムへの負担を取り除き、停電リスクを抑えることができる。ボストン市は、太陽エネルギー導入を促進することで前述の恩恵を受けるだけでなく、太陽エネルギーが化石燃料に匹敵する競争力を得た際に、市場ニーズの拡大に対応できると期待を寄せている。

太陽電気システムへの取り組みを投資家に広く普及するため、ボストン再開発局では、太陽エネルギーの潜在性の紹介や、導入に適した区域の検索と事前調査が可能な誰でも使えるシステムを必要としていた。GISは、太陽エネルギー導入価値があるとされる建物を示した市全域の地図を公開するという市の目的に合ったツールだ。ソーラーボストンの調整官であるウィルソン・リッカーソン氏は、「私たちには基準が必要だ。基準がなければ、方向性を定めることができない。GISがなければ、市が有する太陽エネルギー産業の規模、成長速度、潜在性を把握することは不可能だ」と述べている。

導入手法

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ArcGIS太陽放射ツールを使い、
太陽エネルギーの将来性について検討が可能

ボストン再開発局でのGIS分析は、ArcGIS Desktop製品のエクステンションであるArcGIS Spatial Analystを使用し、建物の屋根から得られる太陽放射を計算することから開始された。計算のために市の数値標高モデル(DEM)が構築された。「地盤高を取得し、建物の土地専有面積から得られる属性を使い建物の高さを算出した。結果として、市の三次元地表モデルを作ることができた」とボストン再開発局のGISアプリケーション開発者 グレッグ・ナイト氏は言う。「この地表モデルを実行し、各屋根の太陽放射供給量を計算するためにArcGIS Spatial Analystの太陽放射ツールを利用した。」太陽放射ツールでは、入射する太陽放射のモデル化や、標高、方位(傾斜やアスペクト)、地形的特徴からできる影、月日の経過による変化などの多数の要因が考慮されている。

ArcGIS Desktopによる分析を完了した後、ソーラーボストンWebアプリケーションで利用するために、ArcGIS Server上にベースマップをはじめ、歴史地区や電気公益事業地区のレイヤ、アドレスロケータ、ジオプロセッシングツールを含む、太陽放射マップが公開された。「アプリケーションは、オンザフライで太陽放射を計算したジオプロセッシングサービスを利用して構築している。計算を完了するには30秒程かかるので、Webアプリケーションの迅速な配信のために分析の予備的処理を行っている」とナイト氏は説明する。

おわりに

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ArcGIS API for Flexで構築され、
すでに運用が開始されたソーラーボストン

WebGISアプリケーションに分析内容を盛り込むことが、次のステップである。ボストン市再開発局のGIS開発者は、Flash Player 9またはAdobe AIRによりレンダリングされたクライアントサイド テクノロジであるESRI社の新しいArcGIS API for Flexに大きな期待を寄せている。Flexには、ArcGIS Serverで配信されるGISベースのWebサービスとその他Webコンテンツを組み合わせる、Webやデスクトップで配信可能な視覚的にリッチなマッピングアプリケーションを表示するなどの機能がある。これは、太陽エネルギーに対する事業計画を投資家に示す理想的な媒体だ。「私たちは基準を定めるために市場データを収集していたが、Webを通して情報を公開することも同じように重要であると考えている」とボストン市のエネルギー政策ディレクター ブラッドフォード・スウィング氏は言う。「ソーラーボストンには地図が必要だ。そしてその地図は、私たちが成し遂げたことや将来の方向性を表すシンプルで強力なツールといえるのだ。」

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掲載日

  • 2010年1月1日