事例 > 南カリフォルニア大火災のGISによる災害対応

事例

南カリフォルニア大火災のGISによる災害対応

カリフォルニア州

 

大規模災害時の総合的な災害対応を可能にしたGISをベースとした事前の備え

山林火災の被害抑止のためのタスクフォースと、そのために整備したGISデータベースにより、火災発生直後から災害対応に必要な地図が次々と生産された。時間が限られた状況下で大量の情報を整然とまとめ、伝達する手段として地図が有効に利用された。

南カリフォルニア大火災

2003年10月、南カリフォルニアの複数の郡で、山林火災が発生した。降雨が少ない気候、砂漠から海に向かって吹く、乾燥した暖かい強風”Santa Ana Winds”の影響で延焼拡大し、山林、原野を中心に広域的な被害が発生した。

広域的な被害が発生したカリフォルニア火災
広域的な被害が発生したカリフォルニア火災

  

San Bernardino郡で発生した”Old Fire”と呼ばれる火災では、火災発生直後からGISで各種の地図が作成され、災害対応に利用された。延焼被害状況、シミュレーションによる延焼予測、枯れ木の分布、消防活動・避難用の道路、延焼の可能性が高い住宅地、活動拠点や避難用施設など、各種の地図が作成された。なぜ発生直後から災害対応に役立つ地図作成が可能であったのであろうか?

被害抑止:MAST(Mountain Area Safety Taskforce)

MASTのWebアプリケーション
MASTのWebアプリケーション

San Bernardino郡やRiverside郡では、キクイムシによる森林の枯れ木が増えていた。このため火災発生時の被害拡大が、火災発生前から懸念されていた。隣接するこの2つの郡では、San Bernardino
County MAST(Mountain Area Safety Taskforce)と、Riverside County MASTという別個のタスクフォースが設立されていた。いずれも政府機関、民間企業、ボランティア組織で構成されていた。2つのタスクフォースは連携してSan Bernardino-San Jacinto 山地の枯れ木問題に対処してきた。それぞれのMASTは、各郡の個別の問題に対処しながら、2つの郡をまたぐ広域の大規模火災の被害抑止、被害軽減にも共同で取り組んでいたのである。

火災発生の1ヶ月前には、MASTのPublic Information Center
(www.calmast.org/mast/public/default.htm)というWebページも公開されていた。一般市民を対象に防火に関する各種情報提供を目的として、防火、被害抑止、復旧に関する情報を発信していた。また、各種GISデータから、マウス操作で対話的にマップを作成できるWebアプリケーションも提供されていた。

災害対応:活用されたMASTのデータ

San Bernardino National Forestの枯木のマップ。火災の延焼速度に非常に重要な要素となる。茶色系のエリアは、枯木の割合が生木よりも高い地域を示す。
San Bernardino National Forest
の枯木のマップ。火災の延焼速度に
非常に重要な要素となる。茶色系のエリアは、
枯木の割合が生木よりも高い地域を示す。

Old Fire発生1時間以内に、San Bernardino郡の保安官事務所で火災発生場所、道路を示す地図が作成された。災害対応用の地図は、San
Bernardino Emergency Center, California Highway Patrol,および地域の警察に提供された。住民避難、交通モニタリング、延焼エリア
の把握、被害調査、避難エリアのパトロール、避難住民の帰宅、放火犯の捜査などの業務に役立てられた。これらの地図は、MASTの取組みで整備されてきたデータをそのまま利用して作成された。

進行する火災から町を守る

被災エリアと延焼予測エリア(矢印)を示す地図
被災エリアと延焼予測エリア(矢印)を示す地図

  

火災延焼により、San Bernardino National Forestに広がるリゾートタウンであるBig Bear Valleyへの延焼の可能性が出始めた。指揮所がBig Bearのコンベンション・センターに設置され、対応が開始された。Big Bearを守るためのデジタルマップ、防災計画の作成にGISが利用された。

オペレーション班では、意思決定を支援するための延焼、地形、固定資産といった様々な地図が作成された。公益企業からは、GISに取り込み可能なCADフォーマットでデータが提供され、公益インフラ(送電線、電柱、地上にあるガス弁)の位置に関する情報も統合された。現場で捉えられた火の位置情報は、指揮所に送信され、一元管理しているGISデータベースのデータを更新した。この情報は即座に最新情報として、Old Fire災害対策本部に転送され、現場対応の状況把握やBig Bear Valleyの町を守るための防火計画の検討に利用された。

情報班は、GIS班が提供するサービスを利用して住民やメディアからの問い合わせに対応した。火災発生場所、被災エリア、火災の進行、家屋等の資産を示すデジタルの地図や紙地図が利用された。被害を受けた住民に対しては、何が起きているのかを示す情報提供用として、メディアに対しては、取材対応用に利用された。

地図による迅速かつ的確な状況説明

3次元表示によるOld Fireの被災エリア
3次元表示によるOld Fireの被災エリア

  

2003年10月30日に、先の選挙でカリフォルニア州知事に選出された次期知事のアーノルドシュワルツネガー氏がSan Bernardino災害対策本部を訪問した。消防、警察職員等から、Old Fireと”Grand Prix Fire”( Old Fireの西で発生した別の火災)の状況説明が行われた。約20分間に次期知事、指揮官に対して様々な情報が伝達された。3次元地図などを利用して、被災エリア、防災計画、枯れ木状況、住民避難が無事行われたこと、San Bernardino山地の地域コミュニティの防災計画などが伝達された。

地図を利用した状況説明
地図を利用した状況説明

  

また、11月5日には、El CajonにあるGillespie飛行場に設置されたCedar災害対策本部において、ブッシュ大統領、グレイデービスカリフォルニア州知事、アーノルドシュワルツネガー次期知事らに対して、消防職員、指揮官から状況説明が行われた。San Diegoの山火事に関する出火地点、消火活動エリア、延焼エリア、対応区域、延焼予測、その他の情報が伝達された。効率的な情報伝達手段としてGISで作成、印刷された地図が役立てられたのである。

この記事は以下の各記事を参考に作成しました。

ArcUser January – March 2004
“Crises Prove the Value of GIS”
http://www.esri.com/news/arcuser/0104/disaster.html
ArcNews Winter 2003-2004
“Governor-Elect Schwarzenegger, Governor Davis, President Bush Briefed”
http://www.esri.com/news/arcnews/winter0304articles/governor-elect.html
ArcNews Winter 2003-2004
“GIS Helps Response to Southern California Fires”
http://www.esri.com/news/arcnews/winter0304articles/gis-helps.html

プロフィール


2003年10月に大規模火災に見舞われた
San Bernardino近郊の山々と市街地


関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2006年2月1日