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事例

旅行者の行動パターンを分析し、よりよい観光案内を提供

首都大学東京 都市環境学部 自然・文化ツーリズム

 

GISを利用した観光分析

GISを用いて旅行者行動のパターン分析や旅行計画支援システムで観光現象の時空間的分析を行い、より濃密な観光を支援。

  

概要

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首都大学東京 都市環境学部 自然・文化ツーリズムコースは、2010年から学部生を受け入れた新しいコースである。
本コースは、自然ツーリズムと文化ツーリズムの2つの柱で構成されており、自然ツーリズムは、自然や地域の観光資源の保全と適正利用を地理学や生態学などの理学的アプローチで研究教育を行っている。文化ツーリズム分野では、都市の環境支援のありかたを検討し、まちづくりの方法を都市計画や建築学などの工学的アプローチで研究教育を行っている。
本コースでは、都市計画・生態学・情報学・地理学・心理学などの総合的な視野で観光科学の確立を目指している。

  

教育体制

本コースでは、従来の観光教育に欠けていた理工学的視点から教育を行い、行政や企業における観光政策・環境政策の現場で、高度な専門知識や広い視野に基づく的確な意思決定と行動ができるエキスパートの養成を目指している。
また、教育カリキュラムでは、自分自身で具体的な課題を設定し、解決策を組み立てるプロジェクト・ベースド・ラーニング(PBL)型の演習やインターンシップなどを通じた実践的な教育を重視している。

本コースには3つの教育・研究領域(文化ツーリズム、自然ツーリズム、観光政策・情報)が設定されており、以下の5つの主要な科目群が用意されている。

  

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多摩動物公園調査風景1
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多摩動物公園調査風景2

多摩動物公園来園者の
パターン分析

観光地内部における観光客の行動については、観光施設の立地決定などに役立つことから、従来から調査がなされてきた。(橋本、1991)また、近年では携帯電話にGPS機能が付属するなど位置を測定する技術が普及し、行動調査を行いやすい環境が整ってきている。

観光政策・情報領域では、多摩動物公園の来園者の歩行軌跡をGPSで記録し、行動パターンを明らかにするPBL型の演習授業を行った。GPSの水平誤差は3m程度であるため、詳細な時間・空間スケールで、来園者の行動を分析することが可能になる。

  

調査方法

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多摩動物公園GPSカーネル密度

来園者にGPSロガーを配布し、歩行軌跡を記録する調査を行う。調査では、1秒間隔で歩行軌跡を記録する。多摩動物公園の出入り口は正門1ヶ所のみのため、GPSロガーを正門で配布・回収する。調査日時は、2010年9月3日(金)、4日(土)の、開園から閉園までの時間である。また、GPSの回収と同時に、来園者の属性、印象に残った動物などに関するアンケート調査を実施した。

分析結果

取得したGPSデータは、加速度および速度の両方で補正を行い、一定の範囲外のデータを異常値としてみなし削除した。さらに動物園内の来園者が通行可能な通路から3m以上離れた地点も除去した。歩行軌跡の点データをカーネル密度で表すことにより、来園者がどの場所に集中するか、どの動物が人気なのか視覚的に把握することができる。

また、動物展示の前からバッファを発生させ、その範囲内にある点データを集計することで、各動物展示における来園者の滞在時間を求めることもできる。これらの行動データと、来園者の属性データとの関連を分析することで、来園者の行動パターンに影響する要因を明らかにできるのである。

  

旅行計画支援システムの開発

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近年では、航空券やホテルなどオンライン予約サイトの普及、観光サイトの案内も充実し、個人旅行はより手軽なものになった。このように個人旅行の敷居は低くなったものの、限られた時間で効率的に観光地を巡るのは、個人旅行者には未だ困難な問題である。
旅行計画支援システム(CT-Planner)は、少人数グループの旅行者に対して旅行プランの作成を支援することを目指して開発が行われてきた。
このシステムでは、利用者が自分の嗜好に合わせて対話的に旅行プランを練ることができる。観光地における滞在時間も設定することができ、スタンダードプランから芸術プランや自然プランなど利用者の要望に沿うことが可能である。

  

おわりに

GISは観光分野において、観光現象の時空間的分析と旅行者の行動支援の両面で活用することができる。
ここで紹介したものの他にも、歩行軌跡と写真撮影位置を合わせて分析する(杉本2010)ことにより、何が旅行者の関心を集めているのか、逆に何が見過ごされているか明らかにすることもできる。この手法は、眺望ポイントの整備計画や旅行案内に役立つであろう。
矢部氏は「将来的には、GPSなどを用いた観光行動調査で得た情報をフィードバックすることで旅行計画支援システムを充実し、訪日外国人も含めた様々なニーズに合わせた観光プランを充実させたい。」と語る。

  

【参考文献】
橋本俊哉(1991): 観光者の「歩行行動」に関する研究-今後の課題と方法性- 観光研究,4, 11-20杉本興運(2010): 観光行動としての写真撮影に着目した景観資源の探索と「みどころ」の抽出 -都立石神井公園を事例として-. 地理情報システム学会講演論文集, 19, CD-ROM.

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掲載日

  • 2011年1月1日

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