2004年1月~11月、9回シリーズで放送されているNHK スペシャル「データマップ 6 3 億人の地図」。世界に暮らす63億人の人たち、一人一人の営みを映し出すデータマップは、GISで膨大なデータを処理し、現在、過去、そして未来を描き出すことで生まれた。
ニッポンの2004年を見つめる時・・・・・失業の増加、治安の悪化、少子高齢化、どれ一つとして「63億人の地図」と切り離すことはできない。
グローバリズムが進む中で、63億人、一人一人が幸せと安心を手に入れるための条件は何か。地図にはその手がかりが潜んでいる。
地図を見つめることで初めて気づく「発見」と、その現場をとらえたビビッドなルポを交錯させながら、9つのテーマで番組は制作されていく。
そのそれぞれの過程を支えてくれたのがGISであった。
今回、「データマップ63億人の地図」プロジェクトは、これらの地図を作り、読み解くため、国連など公的国際機関の協力のもと様々なデータを収集した。
リサーチャー、コーディネータ、ディレクターほか、様々なスタッフとの協力体制の下、データは収集され一元的に管理されている。
データフォーマットや座標系、保存の方法などを統一したほか、データ詳細の記録をすることやバックアップ体制も採られた。
番組は月に1本放送(8月を除く)のとても早いペース。某大なデータを間違いなく処理し、信頼される情報として取材や制作現場の打合せ、そして放送される地図まで送り出すために、効率的にGISを使うルールを私たちは共有した。
多くのデータマップは国際機関ほか公的機関の情報を出典としているが、時にはプロジェクトで独自調査を行ったり、地図を作成することもあった。これらの作業が効率的にできたのも、GISを利用したから故である。主に以下のような作業を行った。
自治体単位に発表されている統計を一つずつ調査し、国全体として統合させるといった作業である。数が多い場合には管理をしやすくするために、途中でデータをマージ(結合)して、上位のくくりにしてから、再度進めるなど、工夫をした。
「絵」としてはあるが、位置情報がないといった場合には、ERDAS Imagineを使って幾何補正の作業をし、ArcGISに戻した。例え用途がリサーチだけに使うものであっても、なるべく多くのGCPを取って、情報を正確に扱うようにした。
地図が紙でしかなければ、GISで管理できるように、デジタル化、つまりデジタイズという作業を行った。デジタイザでひとつひとつ紙地図をなぞって作った事もあれば、幾何補正した画像を背景に、マウスでチクチク作ることもあった。
以下に掲載したのは、ArcGISで作った平均寿命の世界地図である。
しかしこの地図は完成形ではない。先に様々なスタッフの協力の下データが収集されてきた事を述べたが、次はこの状態が美術、デザイナー、CG制作のスタッフの手に渡り、更に見やすく、分かりやすくする工夫、つまり、この番組の売りでもあり、難しい工夫の部分へと作業が進められていくのである。Adobe Illustratorほか様々なフォーマットで出力し多部署間でやりとりを行った。例えば上記地図。放送で使われたデータは以下のように形を変えた。
このように、GISという道具は単体で存在する訳ではなく、番組制作という「人」と「作業」の一連の流れをつなげられる、有効な道具であった。といえるであろう。
データマップというリソースはデジタルで管理された故に、マルチユース(放送以外にも効率的に利用すること)の可能性を高めることになった。
ArcGISで管理されたデータベースは、まず番組制作協力機関である慶應義塾大学福井研究室により、WEB版のデータマップと形を変えた。番組の追体験ができるほか、縮尺の指定や場所を指定した情報検索ができるようになっている。
更に番組へのご好評を受けて、全9回のシリーズが書籍化されることに。9月には前編の「いのちの地図帳」が発売された。
ぱらぱらめくるだけで、世界や日本のことが分かるようになっている。
放送では伝えきれなかった、詳細なデータや違った視点で色塗りしてみた場合などを掲載した。
データマップは一人一人の営みを世界規模で表現できる力をもっている。より多くの視聴者の方々がその魅力を感じていただければ。とおもっている。