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事例

現地調査で得られた管路診断データをGISで解析。良質な水道サービスを提供するために

株式会社栗本鐵工所 鉄管事業部

 

水道管路施設の大規模更新時代に対する鋳鉄管メーカーの取組み

現地調査等により得られた管路診断データ等を GIS で解析。 栗本鐵工所が提言する管路更新計画の策定とは

GX形ダクタイル鋳鉄管
GX形ダクタイル鋳鉄管

 

イントロダクション

我が国では、近代水道が給水を開始して約 120 年が経過した。この間に水道普及率は 97% を超え、管路施設の総延長は 60 万 Km 以上にもおよぶ大規模施設となり、水道資産全体の約 7 割を占めるもの となった。そして、高度経済成長期にその多くが整備されたことから管路施設が、いままさに大規模更新の時期を迎えようとしている。

一方、大量の施設老朽化や大規模自然災害の多発等の諸問題が水道事業にとって大きな脅威となっているにも係らず、地方経済の低迷、人口減少による給水量減少、熟練職員の減少などが経営基盤を圧迫しており、老朽管更新事業、あるいは管路耐震化事業が遅々として進まない現状が見られる。

栗本鐵工所は創業以来 100 年を超え、管路資機材の提供を継続してきた。現在の主力製品は、耐震性を備えた GX形ダクタイル鋳鉄管と呼ばれるものであり、全国の水道事業全体を中心に採用され管路の老朽管更新や耐震化施策に貢献している。

前述した社会環境が故に、水道事業体においては、科学的根拠に基づいた効果的・効率的な管路更新事業の実施が、住民等への説明責任の観点からも一層強く求められている。 それをサポートするために栗本鐵工所は、日常管理データの有効活用や管路更新優先順位決定等の業務に対して GIS 技術を活用して取り組んでいる。以下に、2 つの取組みについて紹介する。

 

取組み その1(管路診断データの有効活用)

管路調査現場写真
管路調査現場写真

既設管の老朽度評価等を行うために、栗本鐵工所では種々の調査を行っている。調査手法は主に現地管体調査、室内管体調査、その他調査の 3 つに大別される。

現地管体調査

現地管体調査は、現地に赴き不断水にて行う調査であり、対象箇所を掘削し、管体を露出させて実施する。調査は、管体およびボルト・ナット等の腐食状況を調査するほか、鋳鉄管の主たる腐食要因である埋設環境について調査する。

室内管体調査

管路調査地点選定例
管路調査地点選定例

室内管体調査は、掘上管および土壌・地下水を工場に搬入して行う調査であり、管体腐食量の調査、土壌および地下水分析等の科学的な調査を行う。

その他調査

その他調査は、特定の目的(管内面状況の確認、電食影響の把握等)のため行う調査である。

GISの活用

栗本鐵工所では、各種調査にて得られた測定値を基に、調査地点の評価を行っており、それを GIS 上に可視化することにより、面的な評価を行い、管路の調査地点選定および更新優先順位の評価等に活用している。

 

取組み その2 (効果的な管路更新に向けて)

管路更新事業を実施するためには、まず、管路更新計画を策定することが一般的である。その管路更新計画を策定するために、管路の現状を把握し、課題点を見出し、その上であるべき姿や到達目標を定め、そのギャップをなくすための実現可能な施策・方策を示す必要がある。これらは、水道事業体により異なり、現状もそれぞれ異なる上に目指すべき目標も異なるものである。ここでは、岩手県矢巾町との共同研究で実施した取組みを紹介する。同町とともに取り組んだ「既存データを利用したローコストな地盤判定に関する研究」および「住民へのアカウンタビリティを意識した管路更新計画策定」は、耐震化を兼ねた老朽管更新計画策定において 既存データや公共データを活用して経済性を考慮しつつ、住民等への説明責任に耐え得る効果的な指標を用いた評価手法の構築を目指したものである。管路の更新優先順位を決定する具体的な評価指 標として特徴的な 2項目を以下に示す。

既存ボーリングデータを活用した耐震適合地盤判定

(財)水道技術研究センターから公表された「K形継手等を有するダクタイル鋳鉄管 の耐震適合地盤判定支援ハンドブック」 に掲載されている「地震ハザードステー ション(J-SHIS)」による手法をベースに、判定精度向上のため、同町保有のボーリングデータを加味した分析を行った。具体的には、地盤種別 Tg および液状化指数PL値を算出し、それらをクリギング手法により空間補間して活用している。

国勢調査データを活用した管路施設重要度評価

管路更新優先順位判定結果
管路更新優先順位判定結果
(この地図は、国土地理院基盤地図情報(縮尺 25000)
「岩手県」を使用したものである。)

管材料の種別、供用年数および病院や行政機関といった重要施設有無等の評価指標以外に、国勢調査データを活用した災害時要避難支援者数分布およびその推移を評価指標に加えた。この指標により、災害時の被災者低減だけでなく断減水等の影響低減に繋がり、災害に強い管路システム再構築に寄与すると考える。上述の取組みを実施する上で、より効果的にデータ整備および評価・分析を行うためには、GIS が必要不可欠なものとなっている。

 

今後の取組み

老朽管の増大によるリスクや大規模地 震等によるリスクがますます懸念される状況であるため、これらリスクが顕在化し た場合の水道管路の影響を、GIS を活用してより具体的に「見える化」し、老朽管更新事業や耐震化事業の促進に繋げていきたい。また、人口減少に伴い必要となってくる施設のダウンサイジングに関しても、詳細な人口分布や人口移動情報等を活用して適切な水道管路システム 構築の検討を実施したいと考えている。 最後に、これからの 100 年も良質な水道サービスを次世代まで持続させるため、GIS を活用した適切な維持管理や災害対策業務を通じて社会貢献を続けていきたいと考えている。

プロフィール


事業企画部 水ビジネスグループ 課長
畑中 哲夫 氏
技術本部 エンジニアリング部
濱本 淳平 氏
田中 佑典 氏
後藤 大 氏



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2013年5月14日

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