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事例

映画「ALWAYS 三丁目の夕日’64」で昭和30年代の東京の街並みをリアルに再現

株式会社白組

 

Esri CityEngine で 3D 景観作成の作業効率向上と コスト削減を実現

3D 映画に求められるリアリティとクオリティを備えた景観を効率的に構築

 

イントロダクション

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「ALWAYS 三丁目の夕日 ’64」に登場する東京の景観
 ©2012 「ALWAYS 三丁目の夕日 ’64」制作委員会

株式会社白組(1974 年設立)は、映画および TV 番組の企画製作、TV CM のアニ メーション・VFX(Visual Effects)の企画製作を主な事業とする会社で、最近では「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ、「SPACE BATTLESHIP ヤマト」などの長編映画や TV アニメーション、各社の TV CM など、さまざまな作品を送り出している。 2012 年 1 月に公開された「ALWAYS 三丁目の夕日 ’64」では、昭和 30 年代の東京の街並みの作成に Esri CityEngine が 使用された。Esri CityEngine の導入の背景と導入後の評価について、株式会社白組の CG(Computer Graphics)部門のディレクター/シニア コンピュータ グラフィック アーティストの高橋 正紀氏とコンピュータ グラフィック ディレクターの 平 昌都氏にお話を伺った。

 

3D 映画製作にあたっての課題

「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ 3作目である「ALWAYS 三丁目の夕日 ’64」の前二作との違いは、3D 作品ということである。映像が立体的に見えるような視覚効果を得るには、左右の視差のある 3D 映像を作成しなければならないが、前二作までの 2D 的なアプローチでは 3D 的な効果が得られない。擬似的に 3Dに 見せる方法もあるが、監督のこだわりもあり、True 3D で街並みを作成することになった。ただし、True 3D で製作するとコストが増えてしまうことが課題であった。

 

Esri CityEngine を導入した理由

Esri CityEngine の画面
Esri CityEngine の画面

街並みを自動で作成できるソフトウェアは多くあるが、Esri CityEngine では街並みを作成した後の変更に柔軟に対応できる点が導入の決め手となった。街並みを一度作成した後に、たとえば道路の形状を修正したい場合、通常であれば道路の修正に応じて建物を個々に手動で修正しなければならず大きな労力がかかってしまうが、Esri CityEngine であれば、道路の変更に連動して自動で建物も修正される。つまり、演出が変わったときでもコストをかけずに迅速な対応ができるのだ。

 

昭和30年代の東京の街並みの作成

遠景の街並みを Esri CityEngine で作成
遠景の街並みを Esri CityEngine で作成

映画で使用した昭和 30 年代の東京の街並みは、当時の地図をベースにして道路および敷地を設定した後、初期段階では以前のシリーズで作成した建物を敷地にランダムに置いていたそうだが、そのうち慣れてきて手の込んだ建物を作れるようになり、プロジェクトの後期になるととても使いやすくなったという。

 

Esri CityEngine に対する評価

高橋氏と平氏は、実際に Esri CityEngine を使用した上で以下のように評価している。

「地形データを作る工程が自動化されていて、道路を描くときにも地形に合わせることができる、地形を直したければ直すこともできる。さらに建物もある程度自動で生成できるので、至れり尽くせりです。」(平氏)

「敷地の中にどの大きさの建物を何件建てればいいのかと考えて配置するのは(通常は)難しいですよね。Esri CityEngine の場合、敷地面積に応じて建物を自動で配置してくれますし、できあがった街はなんとなく都市計画に準じた見え方になるんですね。それをカメラから覗くと自分達で想像して作った街並みとは違うリアルなものが見えてくる。そういった意味でものすごく良いソフトだと思います。」(高橋氏)

「ちょっとした街を作りたいときは、ボタンを押してアサインするだけで、ひととおり作ってくれるので、すごく楽ですね。人手を相当削減できたと思います。」(平氏)

「一見すると Esri CityEngine は CAD 系のちゃんとした設計図通りに作るソフトのように見られると思うんですけど、実はすごく人間の感性に対応できるソフトだというのが実際使ってみた感想ですね。」(高橋氏)

 

CG 業界における Esri CityEngine の可能性

Esri CityEngine で作成された昭和 30 年代の街並み
Esri CityEngine で作成された昭和 30 年代の街並み

特定のプロジェクトの特定の用途に使用するためのソフトウェアというより、CG 作成業務の標準ツールとして Esri CityEngine が普及する可能性があると高橋氏は考える。「今まで CM などの CG の 仕事で街を作成する部分は、自力で置くかランダムにパーティクルをばらまいて全部置き換えていくとか、『ランダムにとにかくごちゃごちゃすればいいんだよ』という発想のもとに色んなアプローチをしていると思うんですよ。その中でこのソフトがすごく良いのは、CM などで街の奥が欲しいといったときにすぐ作れちゃう。スペシャルなソフトというよりは、『街を作るときは、アレ(Esri CityEngine)が無いとね』というような存在で広まる可能性があると思います。」

 

プロフィール


高橋 正紀 氏(左)、平 昌都 氏(右)



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資料

掲載日

  • 2013年4月23日