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事例

3次元レーザーを用いた森林資源量把握。新たな持続的森林管理

千葉大学 園芸学研究科

 

レーザーによって樹木を3次元計測し、毎木調査を自動化することで、森林調査を効率化する

これまでの森林測定は正確性の高いデータを取得することが難しかったが、3次元レーザーによる新たな森林計測法を実現。

 

イントロダクション

森林計測
レーザーを用いた精密な森林
(RIEGL社製レーザーによって計測したデータを表示)

国内外での環境政策で、森林域における炭素蓄積量が注目されるようになり、森林計測技術やモニタリング手法の確立が重要になってきている。森林は複雑な形状をしているため、その形状を正確に把握することが難しかった。近年レーザーセンサー の技術進歩とデータ解析技術の発展により、これまで不可能であった森林計測が正確に行える様になった。

炭素蓄積量はバイオマスから算出され、バイオマスを把握するには、伐倒したサンプルから乾燥重量等を量らなければならなかった。さらに樹種別にバイオマスを把握するには、多数の伐倒サンプルが必要となるため、多大な労力が必要となる。簡易的で一般的な手法として、幹体積(材積)を利用し、材積から容積密度を掛け合わせ、バイオマスに換算する。商用樹に対しては過去に材積式が作成されているため、胸高直径(幹の直径)と樹高を測定すれば、樹木全体の材積がわかり、バイオマスや炭素蓄積量まで換算することが容易に可能であるが、商用樹以外(広葉樹等)は材積式が存在しないため、バイオマスを正確に測定する簡易的な手法がなかった。

 

データ取得

地上レーザーを用いた森林バイオマス把握
地上レーザーを用いた森林バイオマス把握。
複雑な幹形状でも正確に測定可能。

近年レーザーを用いた森林計測技術が急速に広がり、レーザーによる形状把握から森林のバイオマスを評価する手法が確立されてきた。

レーザーを用いた森林計測技術は衛星・航空機・車載・地上レーザーと、用いるセンサーの種類や取得方法に違いがある。これまでのところ衛星レーザーは フットプリント(地上到達時のレーザービーム径)が大きく、森林が測定できるほどの正確性がないため、広範囲でのデータ取得には、航空機レーザーによるデー タ取得が主流である。車載は車両上部にセンサーを設置し、道路沿いを効率良くデータ取得ができ、地上レーザーは過般式センサーでどこでもデータ取得が可能である。これらのデータ取得方法の違いから、様々な用途にレーザーデータが使用されている。

広域の森林バイオマスを効率良く把握するには、航空機レーザーが向いているが、航空機レーザーの欠点として樹冠表面からのレーザー反射が多くなり、バイオマス算出に必要な幹部形状を詳細に把握できない。そこで地上レーザーを用いて幹形状を把握できるようにした。

今後は汎用性の高い解析手法の開発と、林業の現場で使用できる操作が簡単なソフト開発や解析技術の普及を行っていきたい。これまで様々な森林タイプや樹種で解析手法を確立しており、今後は産学官連携でプロジェクトを進め、レーザー主体による標準的な森林モニタリングツールとしたい。

 

レーザー解析手法 LAStoolsの導入

地上レーザーを用いた樹木位置図
地上レーザーを用いた樹木位置図
(黄色点が地上レーザーにより作成された樹木位置図、
赤色点はセンサー設置箇所)

レーザーの3次元データはデータ量が膨大であるため、必要なデータを解析することが難しかったが、ArcGIS 10よりLAStoolsをArcToolBoxに組み込める様になり、誰でも簡単にデータを扱える様になった。LASToolsはDr. Martin Isenburgが作成した無料ソフトでありArcToolBox上でGUIによって簡単にレーザーデータが解析できる。ArcGIS のこれまでのエクステンションにLIDAR analystというものがあり、レーザー解析できるようになっていたが、レーザーデータを解析できる機能が限られていた。LASToolsを用いることでデータ解析できる範囲が広がった。

LAStoolsとはLASというバイナリーファイルを用いて、レーザーデータのファイル入出力を高速化し、レーザーデータの編集をより容易にできるようにしたツールである。LASはレーザーデータを扱う世界標準フォーマットである。

LAStoolsでLASフォーマットへのデー タ変換、LASフォーマットの編集等ができるため、LASを表示できるソフトと併用することで、大量のデータからデータを切り出し、3次元表示可能となった。また LAStoolsによってレーザーデータから地形図を作成できる。今後LAStoolsの機能が拡充し、ArcGIS上で3次元解析が、誰でも簡単にできるようになることを期待したい。

 

まとめ

樹幹構造
航空機レーザーデータにラッピング法を
適用して把握した樹冠構造
(ラッピング法に関しては Kato et al., Remote Sensing
of Environment 113(6), 1148-1162 を参照)

レーザーリモートセンシングにより3次元解析ができるようになり、生態学の分野で、これまで計測できなかったものが計測できるようになった。これまでのレーザー研究で、森林遷移のモニタリング、野生動物の生息環境のマッピング、高齢木の枝葉構造等への研究がすでに行われており、生態系サービスを把握するために必要な森林生態の定量化が3次元データから解析できるようになる。

国内の航空機レーザーデータ取得は、2011年の震災後に地形変化の把握が目的にデータ取得されている。しかし、自然災害時以外に定期的にレーザーデータが取得されている訳ではない。一方でアメリカ、ニュージーランド等海外では、地方自治体がレーザーデータ取得に積極的であり、空中写真撮影とともに定期的にレーザーデータを取得している。そうしたデータが無料公開され、誰でもデー タ利用できる状態になっている。広範囲の3次元データがより容易に取得できるようになれば、レーザーを用いた研究開発も盛んになり、現場で使える実用的なレーザー解析技術が普及する可能性が高い。

航空機レーザーでfull waveformセンサーを導入するようになり、森林からより多くのレーザー反射を記録できるようになり、森林の垂直分布、特に間伐や林床植生管理まで把握できるようになってきている。これらのデータを現場で使用することにより、実際管理の必要な林地の場所を特定できるようになってきている。空中写真では把握できなかった林内の状況までもレーザーから状況判断できるようになってきている。

地上レーザーのセンサー向上に伴い最新地上レーザー(レーザー照射半径600mのRIEGL社センサーを使用)を用いれば、解像度50cmよりも詳細な地形図を作成することができる。また、1箇所から取得できるレーザー照射範囲が広いため、少ないセンサー設置箇所から広範囲を解析できる。地上レーザーであるが、航空機レーザーの様に広域を把握できることで、日本の様に所有者区分が細かく分かれている小林班が多い場所で、限られた予算でも地上レーザーを用いて低価格で毎木調査ができる。

地上レーザーを用いることで、バイオマス等の情報以上に材の質(材の曲がり)や樹木位置図を短時間で効率良く、そして正確に計測することが可能である。さらには、経年的成長量の把握まで詳細に行うことができる。林業の作業員が高齢化する中、レーザーによる森林調査法が現場で普及し、より正確な森林情報により、森林が適正に管理されるようになることを望んでいる。

レーザーデータは、国内ばかりでなく海外の林地でもデータ取得を盛んに行っている。今後は途上国でレーザーデータを取得し、モニタリングツールとして、現地の森林保全や管理のためにツールを提供していきたい。

プロフィール


千葉大学大学院 園芸学研究科 助教 加藤 顕 氏



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掲載日

  • 2013年2月26日

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