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ポーランド湖水地方の自然保護とカーラリー開催による環境への影響をGISで可視化

ラリー・ポーランド

 

ラリー・ポーランドはクルクリンの森林環境を悪化させるのか?

90年もの歴史を誇るカーラリーが周辺環境に与える影響をGISで可視化。
ポーランド湖水地方の自然保護とラリー開催の両立は可能なのか。

イントロダクション

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小さな木造の橋を通る
クルクリン湖沿いの
ラリーのセクション

1921年に誕生したラリー・ポーランドは、モンテカルロ・ラリーに次いで世界で2番目に古いカーラリーだ。ラリー開催初期は、クラコフ地方を出発し、クウォッツコ渓谷、カルパチア山脈、下シレジア、そしてヴロツワフを通り、最終的にタウティ湖とミコワイキ湖の間の地、ミコワイキに到着する、文字通りの「旅」であった。近年でも、大小の湖が広がる地域、針葉樹林、花が咲き乱れる草地、自然の水路を横切る木造の橋などの美しい景色のルートで、見物人と参加選手の目を楽しませている。

周辺環境への影響の調査と分析

ラリー・ポーランドが2005年にポーランド国内で最も絵になる場所の一つ、湖水地方のマズールィに開催地を移したため、環境への影響の調査が開始された。森林の動物を脅かす可能性がある騒音レベル、車の排煙による木々への重金属汚染、インフラへの影響、そして観客による森林およびクルクリン湖周辺への影響、などの要因が計測された。

測定の大部分は音響測定器などの専門的な計器を使って行われた。二酸化炭素排出量は自動車メーカーから手に入れ、松の葉に蓄積した有害物質は研究所で分析した。ラリー・ポーランドが環境に及ぼす影響は空間的な側面を持っていたため、GISを使って空間データ解析が行われた。

ラリーが環境に及ぼす影響を調べるため、タイプの違う区域が設定された。オープンエリア、森林奥地、湖水周辺の3つである。

 

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コジュヒのラリーステージで3つのセクションに分けて行われた騒音分散の分析

 

事前に準備されたデータを使い、土地被覆の情報を持つレイヤが作られた。これらのデータには、森林、木々の一本一本、建物、丘、道路、そして森林に囲まれた道の眺望などが含まれた。
騒音の分散状況を分析するため、上記の要素はArcGISのラスタ演算ツールを使ってつなげられ、各区域で障害物として扱われた。次に、建物や木々、丘陵に対する騒音伝達の値(浸透性)が割り当てられ、コスト距離オプションを使い騒音の広がりが解析された。さらに、特殊な音響アプリである「HPZ’2001」が実装され、航空写真からなるベースマップ上に98デシベル(音源)、60デシベル(農場住宅地の最大許容値)、55デシベル(戸建住宅エリアの最大許容値)の3つのバッファが作成された。

 

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クルクリンの森林を疾走するラリーカー

これらの演算により、シカ、ノロジカ、イノシシ、野ウサギ、キツネ、ビーバー、山猫などの野生動物を怯えさせ、野鳥の営巣を阻害する騒音発生箇所の特定が容易になった。さらに、騒音の分散の解析を基に、3つの区域それぞれの排気ガスの分散範囲がバッファツールを使って特定された。

ArcGISは、それぞれの調査地域のどの地域で植物の同化作用(排気ガスの成分取り込み)や光合成の率が高いのかを調べるためにも使われた。これらの目的のため、各地域の斜面の角度や方位が計算された。こうした分析により、どこで太陽がより強く照射するかがわかり、植物の同化率が高い場所を決定することができるようになった。太陽の樹木への影響は、南、東南、そして南西でもっとも強いため、その方角に面して生えている木々が選択され、データとして登録された。

 

観客によるリスクの分析

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ラリーステージの3つのセクションの内
1つの騒音分散分析の結果を表示したもの

環境破壊の原因となりうるのはラリーカーだけではない。残念ながら、ラリーに必要不可欠な存在である観客もまた、環境破壊を引き起こす要因となるのである。観客たちの行動で考えられるのは、下草を踏み荒らす、木々の小枝を折る、森にゴミを捨てる、動物を驚かせる、トウモロコシ畑に足を踏み入れるなどである。だが、最も脅威となるものは火事なのだ。
ラリーのチラシやカタログ、過去資料を基に、火事のリスクが高い場所を示すポイントが作成された。その大半は大勢のファンが集まる場所で、タバコの吸い殻が見つかり、バーベキューやキャンプファイヤーがよく行われる場所であった。また、火事の危険性の範囲を決定するため、マルチバッファーが作成された。沿道に広がるファンを表示する図形は楕円形で細長いため、火元からそれぞれ20m、40m、60mがバッファーリングとして設定されたのだ。この距離は、グリルや焚火、タバコの吸い殻からラリー中に出火した場合に最大に燃え広がった場合を計算して設定された。最後に、レイヤの森林を表す個々のポイントデータはArcViewの拡張ツールであるET Geowizardsを使ってポリゴンデータに変換された。次に、それらのデータは「立ち上げ」処理で3次元のデータに変換された。最後に、バッファーレイヤは森林レイヤに重ねられ、火事の危険がある場所が描画された。

見物ポイントの分析

リスクの計算以外に、他の問題も調査された。例えば、ファンがラリーを見物するのに便利な場所の解析が重要だった。いくつかのラリーのステージ(タイムトライアル区間)は、ラリージャンプと呼ばれる急な丘だらけの場所にあった。そのような場所は、大多数のファンにとって絶好の見物ポイントなのだ。各見物ポイントからの道路の見え方を測定するため、「見通し」ツールと「可視領域」ツールが使われた。これらのツールは、「好きなドライバーの走りをこの場所から見ることができるか? 見えないなら、どこに行くのが一番良いのか?」という質問に対して素早く簡単に答えを出してくれるものだった。

分析結果の3D表示

様々な見地から分析された事象の全てをよりリアルに表示するため、3D画像が作り出された。まずArcGISを使い、様々な種類の木や建物、ラリーのファンを表示するテクスチャを採用した。そして、それぞれの分析結果を表示するレイヤをプロジェクトに追加し、スキャンした地図と航空写真からなるベースマップ上で一つにまとめた。最後に、モデルをアナグリフ (左右異なる角度から撮影した映像をそれぞれ赤と青の光で重ねて再生し、左右に赤と青のカラーフィルタの付いた眼鏡で見るもの) を使って公開した。モデルを3Dで見せることにより、リアル感を増したのである。また、ArcGISを使い、分析したラリーのセクションを通るインタラクティブなバーチャルツアーを作成した。これによりレースをシミュレーションで表示し、ラリーがコース周囲の環境にどれほどの影響を与えるのかを見せることができたのだった。

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掲載日

  • 2012年1月1日

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