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風力開発の事業性を地図上で評価し、計画立案を支援するソフトウェアを開発

有限会社環境ジーアイエス研究所

 

風力発電の事業性を評価する発電電力量予測ソフト『RC-Explorer』

「この地点に風車を建設した場合、事業としての採算は見込めるのか?」風力発電におけるリスクを低減をするため、高精度な風況シミュレーション ソフト「RIAM-COMPACT」と連動した発電電力量予測ソフトを開発、風力開発の普及に寄与する。

RC-Explorerは風力発電事業者のニーズに応える

「風車による発電電力量は、風速の3乗に比例する。」

風力発電の事業を行う際には、環境面からコスト面まで様々な要因についての検討がなされるが、最も重要な前提条件は風が強く吹いていることである。発電量が風速の3乗に比例するとは、風速が2倍になればそこから生み出されるエネルギーは8倍になるということである。よって、風力発電の事業者は少しでも風が強く当たる地点を探し出し、その優位性を関係者に説明しなくてはならない。

九州大学応用力学研究所の内田助手らは、高精度に風の流れを計算することができる非定常・非線形風況シミュレーションソフト「RIAM-COMPACT」を開発・商品化した。これは、複雑地形によって生じる風の流れを、正確にかつ視覚的に捉えることができる。一方で、RIAM-COMPACTのユーザである風力発電事業者は、事業性の判断のため1年聞の発電電力量など、事業計画に不可欠なデータを必要としていた。

そこで、九州大学、西日本技術開発株式会社、有限会社環境ジーアイエス研究所からなる産学連携のRIAM-COMPACT開発コンソーシアムでは、年聞の発電電力量を試算するソフトウェスRC-Explorerを開発し、販売を開始した。このソフトでは、RIAM-COMPACTで計算した16風向の計算結果と、対象地区内で観測した1年分の風況データをセッ卜することで、計算領域内の任意の地点における、発電電力量を計算できる。このソフトにより事業者は、マップ上で風車の位置や性能を設定すると、即座に年間発電量や風況特性をグラフや数値で得ることができる。これにより、風車の最適配置を比較検討することができる。

RC-Explorerの特徴

事業者が地図上で検討を行い、その結果がグラフやマップとして視覚的に表現されることが重要であるので、GIS技術を活用するため、ArcGISEngineをベースに開発を行った。ユーザは、①RIAM-COMPACTによる16方位からの風の解析結果、②対象地で取得した風況観測デー夕、③導入を検討している風車の性能デー夕、④背景地図デー夕、をセッ卜すれば分析が可能となる。また、風車計画地点は簡単なマウス操作で変更できるため、繰り返し代替案を評価し、最も効果の高い風車の配置案を容易に探ることができる仕組みとなっている。

多彩な出力

RC-Explorerでは、実務で必要となる様々な解析を行い、表示することができる。

①年間発電電力量と設備利用率

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②鉛直プロファイル

風車の口ータ一部に風がどのような速さで当たるかを示す鉛直方向の風速分布を示すグラフである。地形の起伏により風が乱れていると、口ータ一部に不均一な風が当たり発電量の低下を引き起こす。

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③風配図

指定地点での16風向の平均風速と出現頻度を表した図である。どの方位から強い風がよく吹くかを示している。

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④風況図

対象地域にどのような風が吹いているのか、風の強弱の程度を地図上に示した図である。16風向の風況図を、出現頻度で重み付けし、年間の合成風況図を作成し、風車建設に有利な場所を視覚化できる。

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⑤検討結果のレポート

解析結果はグラフやマップだけではなく、数値情報としてXMLやcsvデータを出力することができる。これにより、検討結果をレポートとして整理することができる。このようなツールの開発において地図表示機能、空間検索や解析機能が不可欠であった。数値解析技術(CFO)と地理情報技術(GIS)を融合させることによって拡張性の高いシステムが可能になった。

予測精度

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検証サイトにおける発電量の実測値と予測値

実際の風況観測データと発電量データが得られているウインドファームを対象とし検証を行った。対象地の地形は、周囲を海に固まれた半島部であり、複数の風車が稼働している。

評価の結果、予測値と実績値の差は月平均で5%程度、年平均で1%未満と高い予測精度であることが示された。

 

今後の展開

風車が風のエネルギーをその翼で受けると、その後方に風が弱くなる領域が発生する。これをウェイクと呼び、後背部の風車がこのウェイクにかかると発電量が減少してしまう。そこで、複数の風車を近接して配置する場合は、それぞれの風車の予測発電量から、ウェイクによる口ス分を減ずることでより現実に近い発電量を予測することができる。このウェイクロスを算定する機能を次バージョンに実装する予定である。

また、RC-Explorerは、すでに国内外の風力開発プロジェク卜で利用されている。今後は、内陸や高地など様々な条件においても実際の発電量と予測値を比較し、精度を検証していく。

 

プロフィール


RIAM-COMPACT解析イメージ
RC-Explorer起動イメージ(右)



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資料

掲載日

  • 2007年1月1日