課題
導入効果
米国フロリダ州にあるプラントシティは、ヒルズボロ郡の東端に位置する人口 4 万人の郊外都市である。小規模な都市だが、州間高速道路 4 号線の 4 つの出口に囲まれ、タンパやレイクランドへは 30 分以内、オーランドへは 1 時間以内で通勤できる利便性の高い都市であるため、人口が増加し発展している。現在 2,500 戸の分譲地を建設中で、今後さらに 2,000~3,000 戸の住宅と 800 戸のアパートを建設する計画が進行しており、20 年以内に市の規模が 2 倍になる見込みだ。
同市では、将来の都市の成長を予測しながら、増加する倉庫や配送センター、商業施設から出る固形廃棄物(以下、ゴミ)収集ルート管理の方法と、作業員の配置を最適化する必要があった。固形廃棄物部門において、新たな自動ゴミ収集プログラムを推進するために ArcGIS を活用した。
これまで廃棄物処理局では、紙地図を使って各地域のゴミ収集日を決め、ドライバーはそれを見ながら独自のルートでゴミを収集していた。
紙地図では、住所の記入漏れや間違いが起こるだけでなく、商業用のゴミ箱の追跡が困難であった。そのうえ、ドライバーが自身の記憶を頼りに収集ルートを決めていたため、町の端から収集をはじめたドライバーが、1 日の終わりには町の反対側まで行ってしまうこともあった。同市は、収集効率を改善し、燃料費を節約しその分を住民に還元する必要があった。また、増加する住宅需要に対応するために土地の編入を続けつつ、限られた従業員と設備でゴミ収集サービスの質を維持するためのソリューションを模索していた。
同市は、ゴミの収集は空間的な課題として地理的アプローチで解決する必要があると気づき、社内データのクリーンアッププロジェクトに最適なソリューションである ArcGIS を採用した。
GIS コーディネーターのザック・クネゼビッチ氏は、「Esri のツールはユーザーフレンドリーで、ArcGIS を使ったことがないスタッフでも、10 分もあればデータのクリーンアップに活かせるようトレーニングできましたし、その場で簡単にマッピングできました」と語る。
データ整備の第一段階として、スプレッドシートで管理をしていた市の道路と顧客の住所情報を ArcGIS でジオコーディングし、収集ルートの最適化とゴミ収集ポイントを特定した。また、商業地では住宅地と異なり、ゴミ収集日にゴミを道に出さず、駐車場の真ん中や、ビルや倉庫の裏側に出すこともあり、収集ポイントを探す作業はドライバーにとってストレスになる。そこで同市の職員は ArcGIS FieldMaps を使用して、モバイル端末から各商業用ゴミが置かれている位置や状態などの空間情報を収集し、ArcGIS Online で即座にマップに反映させた。
ArcGIS に顧客の住所をインポートすることで、収集ポイントが正確に特定され、ドライバーの収集ルートを合理化し、収集漏れを防ぐことができた。同市に将来的に住宅が建設され、さらに多くの土地が市に編入された場合でも、ArcGIS 上で構築したマップに新たな住所データを重ねていくことで、ゴミ収集日に顧客のゴミを見逃すことが防げると考えている。
同市は、住民の数が 2 倍に増加するまで廃棄物処理トラックの追加購入を検討していなかった。しかし、このプロジェクトのおかげで同局が市の委員会に対して提案する、長期的なゴミ収集需要増加に対する廃棄物処理トラックの追加購入案を正当化するのに役立った。
「ゴミ収集の需要を地図上で視覚化したことで、我々が直面している問題を市の委員会に納得させることができました。市長や議会が新しい技術に対してオープンな姿勢だったことも成功の一因でした」と氏は語る。
本プロジェクトによって、サービスの質を維持しながら少ない人員でより多くのゴミ収集エリアをカバーでき、苦情も最小限に抑えることができた。この結果は、市を成長させるためのさらなる目標を掲げる同市のリーダーたちを勇気づけた。今後、同市は、住民もゴミ収集区域を確認でき、リサイクルに関する情報を受け取り、毎日のゴミ収集状況をモニタリングできるような、一般向けの Web アプリを構築することを計画している。