課題
導入効果
コロナ禍以降、地域活性化と運動不足による健康の二次被害が社会問題化している。一般社団法人Catsジャパン(以下、Catsジャパン)はそれらを解決すべく、“地域と身体を元気にする”をミッションに掲げ、地域貢献型レクリエーション「ちずあそび」などのイベント企画・運営をしている。
ちずあそびは、主に山間部で実施されることの多いロゲイニングを基に、地図を読み解く読図スキルやコンパスを使わずに、万人が手軽に楽しむことができ、さらに地域貢献の要素がプログラムとして加わったゲームイベントである。3~5 人程度で 1 チームとし、事前に配布された紙地図とチェックポイント表を基に、イベントエリア内にあらかじめ設定されたチェックポイントを制限時間内で回ることが基本的なルールとなる。
チェックポイントにはそれぞれ得点が定められており、時間内にいくつのチェックポイントを回れたかによってチームの合計得点を競う競技的な側面も持っている。チェックポイントを回ったかどうかを確認するため、各チームは到達したチェックポイントの写真を撮る。
ゴール時には運営側が参加チームの写真確認や得点集計等を行うが、ゲームの性質上、ゴール時刻に参加チームの帰還が集中するため、確認作業に携わるスタッフの負担が増え、参加者にも待ち時間が発生する等運営上の課題があった。
これらの作業をリアルタイムかつ効率的に行うため ArcGIS を活用した。
ArcGIS Survey123(以下、Survey123)や ArcGIS Dashboards(以下、ダッシュボード)を活用して競技時間中に各チームのモニタリング、得点集計、ランキング、写真確認などができるようになり、ゴール後たった 10 分程度で表彰式を開催できるほど作業がスムーズになった。参加者と運営側のどちらにとっても無駄なく効率の良いシステムとなり、その利便性を享受している。今後は、さらにシステムを使いやすく発展させることや、他の分野での応用など利用価値を高めていくことを検討している。
ちずあそびではゴール後に運営側での事務作業が一気に集中するため、一時的に人員の確保をしているが、それでもゴール後の表彰式開催まで参加者を長時間待たせてしまうという問題があった。そして運営側は競技中、チームがゴールするまでの間作業がなく、無駄な時間が存在していたため、その双方の問題を同時に解決する必要があった。
また、ちずあそびでは参加費を一部払い戻しし、参加チームに当日のイベント開催エリア内で買い物やランチをしてもらう「お小遣いキャッシュバック」を実践している。しかし、参加チームがどの程度買い物をしたかの情報が正確にわからず、イベント開催による地域への貢献効果を把握することが困難であった。
ちずあそびの事業展開において、北九州市の地域活性の補助としてイベントを開催したことがきっかけで、一般社団法人G-motty(以下、G-motty)と協力体制を組むこととなった。 イベントの運営上抱えていた課題を相談する中で、ArcGIS を使うことでほとんどすべての問題を解決できる点に期待し、採用を決めた。以降、G-motty のサポートを得ながら、仮説と検証、課題の解決を実践している。ロゲイニングを行っている大手の他協会においても、未だ人海戦術かつアナログな手法で対応している状況であり、人的コストや時間を有効活用するという点において ArcGIS を活用することで非常に有益なシステムが実現可能になったと感じている。
集計作業を効率化させるため、参加チームがちずあそび中に利用するチェックポイント登録アプリを Survey123 で作成した。参加者はチェックポイントに到達した際にスマートフォンを使用して QR コードからアプリを起動し、どのチェックポイントを回ったのかを写真と一緒に投稿する。 そして運営側は各チームから送信されるデータを把握・集計するためにダッシュボードアプリを作成しモニタリングを可能にした。
参加者と運営の負担削減
Survey123 とダッシュボードアプリの組合せにより、「参加チームが今どのチェックポイントにいるのか?」「写真はチェックポイントに間違いないか?」の確認や得点の自動集計、その他確認事項も運営側のパソコンでリアルタイムにチェックできる仕組みを構築できた。参加者はスマートフォンアプリによる写真撮影とチェックポイントの選択結果を送信するだけで済み、運営側は競技時間中に各チームの動きや写真・得点などの確認が行えるようになったため、競技時間中の空き時間を無駄にすることなく、従来の課題を解決することができた。
また「お小遣いキャッシュバック」での消費金額もアプリで登録・送信してもらうことで、ちずあそびによる地域への貢献効果も数値として把握できるようになった。
他の事業者への展開
現時点で Catsジャパンの課題はほぼ解決に近づいているため、今後はゲームルールへの対応を柔軟にできるようにステップアップできると万全である。
また、波及効果として、このシステムがある程度実用的なレベルとなったことで、他のロゲイニング事業者への情報提供も始めている。集計用にアルバイトを 5~10 人雇う予定であった事業者に体験してもらい使用感を確認した結果、他業者でも本システムを利用することでアルバイト要員を 2~3 名に減らしても十分に運営できると確信したようだ。大手の事業者でも同様の課題を抱えているため、イベントの経費削減やモニタリングの容易さで高評価が期待できる。総じて、ArcGIS の使用感やレビューもいくつか確認したが特に問題となるような意見はなかった。
ちずあそびは、まちを楽しく探索しながら、地域を知り、人々の運動不足解消を実現するプログラムである。さらには、お小遣いキャッシュバックの仕組みにより経済的貢献を促し、その過程で生まれる地域の方々や商業店舗の方々とのコミュニティ創出の機会を提供する手段としても一躍買っている。
当初はアナログな運営手法で事務的な作業に忙殺されていたが、ArcGIS を使用することで、事務作業負担が大幅に軽減された。その結果、イベント当日もより参加チームや地域へ目を向けることができるようになったため、次の展開やアイデアの創出、意見交換などに時間を割くことができ、今後に向けて大きなメリットとなっていると感じる。
「今後も、さらに使い勝手が良いシステムへの改良も視野に入れつつ、このシステムが役立つ別の分野も模索していきたい」と考えている。
組織名 | : | 一般社団法人G-motty |
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住所 | : | 〒802-0062 福岡県北九州市小倉北区 片野新町2丁目1-4 |
URL | : | https://www.g-motty.net/menu/ |
: | info@g-motty.net |