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事例

無線通信サービスエリアの状況把握と情報共有に ArcGIS プラットフォームを活用

一般財団法人 移動無線センター

 

紙地図から Web マップへ
ArcGIS プラットフォームで実現する業務効率化

ArcGIS を基盤とした GIS プラットフォームの特徴

  • 自らの力でアプリ構築、データ更新を実現
  • センター内外の情報共有のツールとして活用
  • 豊富なデータ変換ツール・解析ツールが利用可能に

概要

一般財団法人 移動無線センター(以下、センター)は、全国に業務用無線通信サービス「MCA無線」を提供する財団法人である。

MCA無線は、センターが管理・運営する耐災害性に優れた独自の無線通信網で構成されており、東日本大震災など数々の災害現場でも安定した通信サービスを提供できた実績を高く評価され、全国の行政機関・民間企業で導入されている。

センターは 2021 年(令和 3 年)4 月から新たに「MCAアドバンス」の通信サービスの提供を開始した。この新しいサービスの開始に際して多様な地理情報のプラットフォームとして利用できる ArcGIS を活用し、通信可能なエリア(以下、サービスエリア)を地図上に表示する「サービスエリア図」の作成と共有、およびサービスエリアの人口カバー率や面積カバー率等の状況分析・把握を行っている。


MCAアドバンス

課題

これまでセンターでは、お客様のサービスエリアの状況を確認するサービスエリア図を紙で作成していた。

しかし、紙地図であったために、確認したい場所を探す際に時間がかかり、サービスエリア拡大など、変更があったときに迅速な変更対応が難しく、地図の更新に多額の費用がかかるなどの課題を抱えていた。また、全国の各地域センターがそれぞれ異なる縮尺で地図を作成していたため、複数の地域センター間に跨るサービスエリア範囲を確認する際には多くの時間を要していた。さらに、全国の各地域センター間でのデータの情報共有を促進する必要があった。

ArcGIS 採用の理由

センターは、紙地図で運用されていたサービスエリア図の課題を解決するために、GIS の導入を検討し、次の理由で ArcGIS の採用を決めた。

課題解決手法

「サービスエリア図(Web 版)」の作成

センターと販売店間で迅速な情報共有を図るため、ArcGIS Online を活用して Web 版のサービスエリア図を作成し、PC で閲覧できるようにした。


サービスエリア図(Web 版)

外部委託業者が各中継局の諸元と実測データをもとにシミュレーション解析処理を行ったサービスエリアのポリゴンデータ(シェープファイル)を ArcGIS Pro に取り込み、タイルレイヤーに変換してから ArcGIS Online 上に Web マップとして共有することで、高速描画を実現し、ストレスなく閲覧できるようにしている。

サービスエリアのほか、センターが保有する全国約 130 箇所の中継局のポイントデータと、ArcGIS Living Atlas の全国市町村界ポリゴンデータも Web マップに追加した。Web アプリケーションの作成には ArcGIS Web AppBuilder を採用し、センター内で要望の多かったウィジェットを追加した。

サービスエリア内人口カバー率の集計


サービスエリア内人口カバー率集計

ArcGIS Pro の解析ツールと ESRIジャパン データコンテンツ スターターパックの「基本統計データ」を活用して、サービスエリア内の市区町村別人口カバー率や面積カバー率など、さまざまな解析を行っている。

サービスエリア内の人口カバー率を集計する際には、将来推計人口メッシュポリゴンをサービスエリアポリゴンで面積按分し、人口カバー率を算出した。さらに、繰り返し行う解析処理については、ModelBuilder 機能を活用して自動処理化することで作業効率の向上を図った。

効果

ArcGIS Online を活用して作成した「サービスエリア図(Web 版)」は、センター内において、導入から運用開始に至るまでに、紙地図から GIS への移行に対する理解とコンセンサスを得る際やデータ作成方法・運用フローを確立させる際に苦労はしたものの、運用開始後は問題なく稼働している。その結果、紙地図ではできなかった自由な縮尺での表示、住所検索、さまざまな情報との重ね合わせ表示が可能となった。また、サービスエリアの変更・追加が必要な場合でも、センター内で迅速にデータ更新を行うことができるため、常に最新情報の共有ができるようになったと高い評価を得ている。

販売店からの問合せに対しても、業務の省力化につながり、センター内の課題であった業務の効率化に大きく貢献している。

今後の展望

今後は 3D データを活用し、中継局から目標物までの見通し解析や、標高断面図を作成して、サービスエリアの状況把握を行うことを検討している。

センターは、この取り組みを情報共有や業務効率化の目的にとどめることなく、ArcGIS プラットフォームの豊富なアプリや解析ツールを利用して、活用の幅をさらに広げていく予定である。

プロフィール


一般財団法人 移動無線センター
第二静岡中継局



関連業種

関連製品

資料

掲載日

  • 2023年1月30日