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事例

都内約 4,200 機関の診療・検査医療機関マップを“爆速開発”

東京都福祉保健局

 

ArcGIS Online を利用し、PC やスマートフォンから直感的な操作で受診可能先の検索・予約ができるマップを公開

概要

東京都は、約 1,400 万人が生活する世界有数の大都市であることに加え、通勤・通学による流入や国内外からの観光での来訪などから感染症拡大のリスクが高く、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以前より、感染症予防ならびに危機管理体制の強化等を図っていた。

新型コロナウイルス感染症は、 2019 年(令和元年)12 月初旬に、中国の武漢市で第 1 例目の感染者が報告されてから、わずか数か月ほどの間にパンデミックと呼ばれる世界的な大流行となったが、東京都はさまざまな予防ならびに感染対策を迅速に行っていた。

東京都福祉保健局は、急増する発熱患者等の診療および検査の需要増加に対し早急な対応が求められていた。ArcGIS Online の Web アプリ構築ツールである ArcGIS Web AppBuilder を利用して「診療・検査医療機関アプリ」を約 1 カ月という短い期間で構築し、現在も運用を行っている。このアプリは、PC やスマートフォンから利用者が直感的な操作で、診療・検査医療機関の受付可能な時間帯や診療対象者、検査方法などを絞り込んで検索し、さらにワンクリックで電話予約も可能である。

課題

東京都は、宮坂学副知事をチームリーダーとして、新型コロナウイルス感染症に関する情報発信を担う特別広報チームを立ち上げるなど、2020 年(令和 2 年)2 月より、都民に向けて積極的な情報発信を行っていた。

東京都福祉保健局においては、発熱外来を行う診療・検査医療機関の医療機関名、住所情報等をインターネット上で地図とともに掲載していた。2022 年(令和 4 年)1 月、オミクロン株による感染者数の急増による発熱患者等の診療および検査の需要の増加に伴い、新たにスマートフォンからでも便利で快適に受診先を探せるマップ機能への改善が求められていた。

ArcGIS 採用の理由

東京都では、店舗等の感染防止に向け、感染拡大防止に積極的に取り組む事業者のマップや、「感染防止徹底宣言」に登録されている店舗のマップなど、ArcGIS Online をさまざまな部局で利用していた。そのため、利用者が直感的に操作・閲覧が可能なシンプルなインターフェイスを ArcGIS で実現できることは理解していた。

ArcGIS で Web アプリを構築すると、診療対象者(小児・妊婦など)や受付可能な時間帯などから、地図上に表示する診療・検査医療機関を絞り込む機能が容易に実現できる。さらに、プログラミングなしで、実現したい機能を迅速・容易に公開し、公開後においても柔軟に変更対応ができることも採用後の高評価につながっている。

課題解決手法

アプリの構築にあたっては、ArcGIS Online の Web アプリ構築ツールである ArcGIS Web AppBuilder を利用した。 その場で画面を見ながら、実装したい機能を設定ベースで反映することができ、アジャイル開発的に迅速かつ容易に変更・修正を繰り返しながらブラッシュアップを行っていった。また、新たに準備したスマートフォンでの操作画面も、直感的な操作・閲覧が可能であるシンプルなインターフェイスを実現することができた。


診療・検査医療機関アプリ(PC 版)

効果

東京都医師会の協力の下、約 4,200 機関(当時)すべての診療所・検査医療機関のデータ準備を行った結果、着手から約 1 ヶ月後の 2022 年 3 月 11 日に、「診療・検査医療機関マップ」を公開することができ、東京都の小池知事による記者発表も行われた。

利用者は、PC もしくは GPS 機能がついたスマートフォンから現在地や住所検索機能で場所を特定し、曜日(平日/土日祝)や受診したい時間帯(午前/午後)、PCR・抗原定量・定性などの検査方法、または小児・妊婦といった診療対象者などの検索条件から受診可能な機関の絞り込みを行うことができる。

新型コロナウイルスの感染者数は日々変化していくため、利用者が便利で快適な操作で医療機関の検索を行えるようにするだけでなく、医療体制のひっ迫度合いに応じた情報更新の必要もある。

診療・検査医療機関の情報は、かかりつけ患者のみの受付とするか否かや、受付診療時間の変更などの更新も行われている。定期的にアプリに情報が反映され、東京都のオープンデータサイトにも都度更新・公開されているため、2 次利用も可能だ。現在も、オンライン診療対応可否などの検索条件の追加や、お盆・年末年始などの特別期間における表示変更対応など、公開後においても迅速かつ柔軟に変更対応を行っており、利用者目線に立った情報発信を実現している。「一般的なシステム開発と違って、設定ベースで容易に機能追加や項目・表示変更などができます。それが ArcGIS Online を採用した大きなメリットの一つです」と担当の櫻井氏は語った。

今後の展望

現在、東京都福祉保健局では、「診療・検査医療機関マップ」と同様の仕組みで、コロナ発症後の後遺症に苦しむ方向けに、診療科目や症状で受診機関を絞り込むことができる「後遺症対応医療機関マップ」も公開している。

今後は、医療機関に限らず、さまざまな福祉保健局に関係する施設案内などにも利用できるのではと期待を寄せている。


医療機関絞り込みからワンタップコールして受診予約する画面遷移(モバイル版)

※本事例の内容は、執筆時の 2022 年 10 月時点の内容です。


プロフィール


感染症対策部 事業推進課感染症医療整備
担当 沼口 氏(左)、櫻井 氏(右)



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資料

掲載日

  • 2023年1月30日