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空港滑走路建設でのドローンとGISによる計画から調査の業務革新

Short Elliott Hendrickson社

 

1939年に開港したミネソタ州ダルースにあるSky Harbor 空港は、保護種が生息する自然豊かな地域に位置している。2007年、ダルース空港当局とミネソタ州運輸局は、空港滑走路上に古い松林などの障害物があることを確認した。そのままでは空港としてのライセンスを失う可能性があったため、空港はShort Elliott Hendrickson社(以下、SEH社)に依頼をし、地域の天然資源の保護や環境影響を管理するために、滑走路の建設や計画に先立ち環境評価を行った。
SEH社はエンジニア、プランナー、科学者、建築家から成る学際的かつ従業員持ち株のコンサルティング会社であり、「Building a Better World for All of Us®」を目標に掲げている。エンジニアリングサービスとして、政府や公共セクターの顧客に対して、全体的な設計の請け合い、インフラの更新、水のエンジニアリング、効率的な建築計画の提供などを支援している。

同社は最初の環境評価を実施し必要な承認を得たのち、連邦航空局とミネソタ州天然資源局などの地方・連邦政府機関とのパートナーシップのもと、同空港の計画、環境評価、設計、建設の全ての担当として選ばれた。
滑走路の移転のため多くの建設を伴うこのプロジェクトには、大量の埋め土の輸送が必要である。輸送業者への見積りのため、運ばれてくる資材の数や量を追跡できるソリューションを模索する中で、チームはドローンに目を付けた。ドローンを飛ばして空中からの画像を取得した後、クラウドベースのドローンマッピングソフトウェアであるSite Scan for ArcGIS(以下、Site Scan)を使用して映像を収集し、分析した


ドローン離陸の準備をしているドローンパイロットのBrandon Twedt氏

課題

エンジニアリングと無人航空機システム(UAS)オペレーションを担当するBrandon Twedt氏によると、本滑走路の移転は7エーカー(約2万8千㎡)もの開放水域を埋め立てる特殊なプロジェクトだという。同社のチームはさまざまな設計と建設手法を分析し、最終的には、近接する都市への影響を最小限に抑えるために、艀(はしけ)と呼ばれる貨物船舶で水上から現場へと資材を輸送することにした。従来、トラックの運転手は資材を運ぶプロジェクト現場の担当者に対して、トン数ごとにチケットを発行し、請負業者が支払いを受け取っていた。しかし、今回は艀に資材が直接積み込まれ、トン数を簡単に量ることができないため、この従来の方法が使用できなかった。

そこで、資材のコストと現在輸送されている資材量を効率的に追跡するシステムを開発した。約20万トンの資材が艀によって運ばれたため、輸送と到着時の資材量を測定して数値を比較し、適切な量を受け取ったことを確認した。請負業者へ正確に支払うための資材量を数値化する文書の作成に役立った。

また、同社は汚染物質が湾の綺麗な水に流れ込むのを防ぐシルトフェンスの敷設状況の確認を、より効率的に行う方法を模索していた。請負業者が水中に設置したシルトフェンスが効果的かどうか調べる必要がある。ボートによる手作業の調査は実現不可能であったため、それに代わる解決策を探していた。「何が起こっているのか、きちんとシルトフェンスが敷設できているのかを確認するには、上空からの視覚的な視点が必要でした。」と氏は語る。


写真検査ツールを使用した3D点群ビュー

課題解決手法

同社がプロジェクト現場を上空から見るための包括的なソリューションとして、ドローン技術の使用を検討した。航空写真により、シルトフェンスの鳥瞰図が見られる。また、整地作業の進捗状況など他のプロジェクト活動もドローンで測定できる。航空写真は資材が現場に運ばれている様子も確認する際にも役立った。

氏がデータの収集にSite Scanを選んだ理由は、ドローン画像を取得・処理するためのエンドツーエンドのワークフローを提供するクラウドベースのソリューションだからである。2017年に滑走路建設が始まった時、同社は単一のタワー型デスクトップパソコンを使用してデータをローカルで処理する、現場監視用のマッピングプラットフォームを使用していた。しかし、そのプロセスは非効率だったために、全てのデータと画像を保存・ホストできるクラウドベースのソリューションであるSite Scanにたどり着いた。

「今までのプロセスはあまり効率的ではありませんでした。コンピュータが12時間稼働し続けることもありました。Site Scanのようなクラウドベースのソリューションが必要であることは理解していました」と氏は述べる。「ITの観点から維持が大変なので、多くの大型のタワー型デスクトップパソコンを購入することはできません。SEH社とUAS業界が成長するにつれ、複数のプロジェクトが複数の州にまたがる可能性もあります。より効率的な業務プロセスのため、Site Scanを利用することにしました」。

同社は2017年から2018年にかけてのプロジェクトの第一段階でSite Scanの使用を開始した。ドローンが取得した画像は、画像から生成された図などのデータを共有して一般公開する際に役立った。また、フリート管理機能でドローンのバッテリーの使用状況と寿命を追跡することもできる。さらに、分析のためにデータと画像をCADソフトウェアに取り込み、プロジェクトの進捗状況と土量等の動きを把握することが可能になった。


3D/2D分割ビューでの新しい滑走エリアの体積測定の様子

導入効果

より効率的な飛行計画から業務コラボレーションの改善まで、Site Scanをさまざまな方法で使用し、高い効果を生み出している。シルトフェンス検査のために、ドローンが取得した画像を使用し水中の汚染物質を表示したり、資材の体積計算をしたりなど、Site ScanはSky Harbor空港の滑走路移転プロジェクトを強力に支援した。氏は次のように語る。「ドローンによる3Dモデリングで資材の体積計算を行い、請負業者が運んでくる資材の量の検証を行いました。最終的に請負業者が我々にその検証を委ねることになったのです」。

また、Site Scanを使用して迅速かつ正確に土地、建物、舗装の測定を行うことが可能となった。以前であれば、車や徒歩で現場を回り手作業で測定調査をしていたが、特にこのような大規模プロジェクトにおいては非常に時間のかかる作業であった。現在は、いくつかのボタンを操作するだけでクラウド上で測定をし、測定が行われた場所を正確に示す文書も作成することができるようになった。


建設現場の進捗状況の高解像度のオルソモザイク

「2次元アンテナを使用して、現在では4分の1の時間で実行できます。毎週空中で測定を行うことができる、高速で効率的なツールを持つことは非常に重要と感じていますし、実際、多くの煩雑な業務を削減してくれました。」と氏は述べた。「このプロジェクトを通じて、ドローンの重要性とSite Scanのような効率的なツールを持つことの価値を実感しました」。

Site Scanの注目すべき強みはほかにもある。より高度な飛行計画ができる点だ。Site Scan for ArcGIS ManagerのWebアプリを使用し、事前にオフィス内で飛行計画を容易に作成し、その計画をパイロットに展開する。これは以前であれば不可能だったことで、飛行する領域のスクリーンキャプチャを取る必要があった。今はデータがクラウド上で共有され、パイロットが確認できるようになった。 「別のフライトアプリでは、飛行計画を立てるのは難しくなります。実際に現場に行けない時もあるため、この機能は重要です。操作するパイロットを配備する際は、自宅で飛行計画を立てて、翌日にはパイロットに正確に飛ばしてもらうことができました」。

ユーザーが飛行計画を何度も使用することができる機能も、このプロジェクトにおいてSite Scanが利活用された理由であり、クラウドベースのプラットフォームを使用する利点であった。
「1つの飛行計画を作成すると、常にクラウド上にありいつでも使用できるように保存されます。翌月も全く同じ計画を飛ばすことができるため、時間の経過に伴う変化を同じ条件で比較することが可能です。他のフライトアプリでは、Site Scanのように何度も使用できる機能がない場合があります」。
空港の建設は3つの段階に分けて実施された。コストと資材量を追跡するためには、各段階で一貫した飛行計画を作成することが重要だった。
「1つ目の段階と3つ目の段階を比較する際にもSite Scanは役に立ちました。全く同じ建設の痕跡をたどって分析することができたと確信しています。高度のようなドローンの設定も非常に重要で、パラメータはすべてドローンが取得したデータの結果に影響します」。

建設中、ドローンの画像は関係者への情報提供にも役立った。毎週の建設会議で関係者がプロジェクトの進捗状況と課題について話し合う際、同社のチームは最新の2D航空写真を見せることができた。前日の飛行のライブビューを見ることで、議論していることや解決すべき課題をリアルタイムに可視化することができる点が高く評価された。
航空写真のWebサイトのURLは、プロジェクトの進捗に合わせて政府機関やその他の関係者に送られ、現場での開発の状況を確認できるようになっていた。氏によると、顧客はSite Scanとリアルタイムビューに非常に満足しているという。同社はこのソリューションを、鉱業や土地開発などのほかの一連の産業・プロジェクトに適用し始めており、結果を出している。
「業界が成長しドローンが発展するにつれて、ドローンのカメラ技術も改良されてより長く飛行できるようになることを期待しています。短時間で多くのデータをクライアントに提供できるようになるでしょう」と氏は今後の展望を述べた。

「Site Scan for ArcGISにより、多くのプロジェクトを実施できるようになりました。クラウドベースの飛行計画とドローン処理を通じて、事業を大幅に成長させる能力を得ました。新しい効率性が我々を成長へと導いたのです」

Brandon Twedt, SEH

この事例は Esri 社のブログ記事「Engineering Firm Enhances Airport Runway Construction Efforts with Drone Mapping Software and Imagery」をもとに翻訳しています。

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掲載日

  • 2022年12月12日