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事例

線路の定期点検を現地調査アプリで効率化

GHD

 

ArcGIS Survey123 で現地調査の時間短縮と報告書の自動生成を実現

概要

オーストラリアのシドニー中心部を走る路線距離 12.8km のインナーウェスト・ライトレール(以下、IWLR)は、1855 年に開通した旧貨物鉄道の線路を主に使用している。1997 年に初めてライトレールの運行が開始され、2000 年と 2014 年にはさらに西へ延伸した。セントラルビジネス地区のセントラル駅から、観光地であるダーリングハーバーを経て、ダリッチヒル方面へ向かう間に、23 の地上・地下駅を通過する。この路線の定期点検を請け負ったのがオーストラリアをはじめ世界各国 200 以上の拠点でビジネスを展開する建設コンサルティング企業の GHD 社だ。

当初は紙ベースの調査票とデジタルカメラで撮影した写真を使って報告書を作成していたが、これらの作業のためのデータ収集プロセスは、煩雑で時間のかかるものだった。そこで、ArcGIS Survey123 を導入し、データ収集の簡素化と生産性の向上を図った。

課題

IWLR を構成する架線とスラブ軌道(線路に使われる道床の一種)のセクション(電流区分装置)は、定期的な構造評価を必要とする。GHD 社デジタル部門のロケーション・インテリジェンス・グループは、顧客から提供された 2015 年の前回点検のデータを参考に、2019 年 5 月に定期点検を行う依頼を受けた。

本プロジェクトでは、個々の架線と 3 メートル間隔のスラブ軌道のセクションを評価する必要があった。これを実現するために、フィールドエンジニアのチームが 1 か月かけて点検を行うことになった。シドニーの鉄道は週末など定期的に運休となることがある。各点検は、その運休期間中に行わなければならず、チーム全体で効率的かつ一貫したデータを収集する必要があった。

従来は、紙とペンを使って点検を行い、データは Microsoft Excel などのレポートテンプレートに入力していたため、膨大な量のデータ入力が必要であり、転記ミスが発生する可能性があった。また、写真はデジタルカメラで撮影したもので、写真と調査対象物の照合は容易ではなかった。

課題は、IWLR の点検のために、チーム全体で合理化され一貫したデータ収集を可能とする革新的なモバイルソリューションを見つけることだった。点検データを各調査対象物やスラブ軌道のセクションごとに個別の PDF レポートとして提出することを顧客から要求されていたため、写真付きの報告書を簡単に作成できる機能も求められた。

課題解決手法

点検の様子
点検の様子

GHD 社は、ウェブやモバイルデバイスを介してアンケートを作成・配布し、データを収集するための調査票ベースのアプリである ArcGIS Survey123 を選択した。ロケーション・インテリジェンス・グループは ArcGIS Survey123 を使用し、点検期間を通してチーム全体で一貫したデータ収集を行うための機能を備えた 2 つの調査票を作成した。1 つはスラブ軌道の評価用、もう 1 つは架線の評価用に作成され、それぞれ調査項目が用意されている。調査票のドロップダウンメニューから対象物線路の定期点検を現地調査アプリで効率化 GHD 固有の ID を選択すると、個々の対象物に関連する顧客が提供した情報が予め入力される。ID を選択した後、調査員は指定された方向から写真を撮影し、架線やスラブ軌道を具体的に観察・評価するように指示される。

チームは、定型の選択肢から項目を選択するドロップダウンメニューと、自由に入力できる記述式回答を組み合わせることで、標準化されていながらも詳細な点検データを作成することができた。また、調査票には参照表の画像が埋め込まれており、フィールドチームが記入すべき修理の優先順位の定義やその他の特徴をすぐに参照できるようになっていた。ArcGIS Survey123 がこのプロジェクトに選ばれたもう一つの重要な要素は、フィーチャレポートを作成できることだ。現場での点検作業の終了後、ArcGIS Online 上でデータのレビューを受けた。そしてフィーチャレポート機能を使ってフィーチャレポートのテンプレートを作成し、対応する写真付きの報告書を数分で自動生成した。

効果

GHD 社のフィールドエンジニアのチームは、フィールドデータ取得の新しい方法に容易に適応することができた。点検に必要な背景情報が予め入力されており、調査員が簡単にアクセスできた。どの質問に答えればいいのか、どのように答えればいいのか、フィールドチームにとって明確になった。
また、参照表の画像をフォームに埋め込むことで、曖昧さを排除し、特定のガイドラ インに沿った評価を行うために画面を切り替える必要がなくなった。また、1 つの調査対象物に対して記録できる欠陥の数に制限がないため、調査員は問題なくすべての欠陥をリストアップできるというメリットもあった。
ドロップダウンメニューやデータの事前入力により、現場での作業時間が短縮され、報告書の用語の統一も容易になった。これは、紙とペンでデータを収集していた場合には不可能だったことだ。

現場でのデータ収集は、ArcGIS Survey123 モバイルアプリを搭載したタブレットとスマートフォンの両方で可能だった。携帯電話の電波が届かないトンネルの中で点検を行うこともあり、オフライン対応は非常に有用だった。

「ArcGIS Survey123 を使用してデータを収集することは、今回のような広い範囲の点検を手作業で行うよりもはるかに簡単でした。データ収集のために対象物の種類や間隔 / ノードをあらかじめプログラムしておくことができ、1 つのプログラムで個別の対象物(個々の架線)と連続した > 公益サービス > 鉄道 活用事例対象物(軌道の間隔)のデータを収集することができて助かりました」と点検を担当したメンバーの 1 人であるオリビア・ブリット氏は語る。

さらに、時間が短縮されたことによって、線路上の移動作業に伴うリスクも軽減された。

「ArcGIS Survey123 は、構造評価の反復的な動作を合理化し、私の仕事を迅速かつ容易にしてくれます」とフィールドエンジニアのアンドリュー・ベル氏は述べる。
同じくフィールドエンジニアのサミ・アリ・カーン氏は「ArcGIS Survey123 の特定の収集データや写真を抽出し、対象物ごとに予め用意された標準レポートを作成するという強力な機能によって、質の高い報告書を作成し、報告時間を短縮することができました」と述べた。

ArcGIS Survey123による調査票の入力画面

ArcGIS Survey123による調査票の入力画面
ArcGIS Survey123 による調査票の入力画面

 

本稿は、2020 年 12 月の米国 Esri 社発表 事例「Geophysical Testing Company Improves Report Generation with Data Capture Solution」をもとに作成した

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掲載日

  • 2022年1月11日