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カーナビの走行データを分析・可視化することで見えたものとは

本田技研工業株式会社 インターナビ事業室

 

フローティングカーデータを活用したGISへの取り組み

大量に集まる自動車の走行データ(フローティングカーデータ)を分析・可視化することで大量のデータに埋もれていた本質を見出す!

インターナビとは

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本田技研工業 和光ビル

1981年に世界初のカーナビを誕生させたホンダは、時代に先駆けてカーナビを進化させ続け、2003 年には「インターナビ」という双方向通信型カーナビを誕生させた。

インターナビでは、通信を行う会員から自動的に収集される走行データ(インターナビ・フローティングカーデータ)を活用し、さまざまな先進的サービスを行っている。例えば、フローティングカーデータを用いることによりVICS(道路交通情報通信システム)ではカバーしきれない細かな道路の走行状況を補間し、渋滞回避のための情報精度を向上させたルート案内サービスや蓄積されたフローティングカーデータを分析することで得られた情報を活用し、最も省燃費なルートや最速なルートを提供するサービスなどがある。
他にもインターナビならではの特徴的なサービスとして、目的地までの気象情報や路面凍結予測情報、地震情報、台風情報などをリアルタイムに提供することで防災に役立てるサービスなどがある。

インターナビは、2011年4月時点での会員数が130 万人に達しており、今後、無料データ通信サービス「リンクアップフリー」適応車の増加により、走行データがさらに充実することが予想されている。今後もインターナビは時代を先駆けて進化を続けていくであろう。

  

GISを用いたフローティングカーデータの可視化

急ブレーキ多発地点の可視化

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急ブレーキ発生箇所
(施策の一例)

クルマで走っていて、見通しの悪い交差点などでヒヤリとした経験を持つ方も多いのでないだろうか?

インターナビでは、フローティングカーデータを分析して得られた、走行速度や混雑場所の迂回状況、急ブレーキ発生箇所などのデータを事故の未然防止対策の基礎データとして役立てている。

一例として、埼玉県の朝霞県土整備事務所管内では、急ブレーキ多発箇所をフローティングカーデータをもとに特定を行った。現地調査をもとにそれらの地点の原因を把握し、安全対策を実施したところ、急ブレーキ数が7割も減少したことが報告されている。
このように、道路を安心して快適に走行できるものにするために、フローティングカーデータを道路政策にいかすといった取り組みも行われている。

  

CO2排出量の可視化

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走行時のCO2排出量

自動車は走行するたびに、地球温暖化の原因とされるCO2を排出する。だが、どこでどれだけの量が排出されているのだろうか?

実際の走行データであるフローティングカーデータを利用して、CO2がどこでどれだけ排出されているのか可視化をする試みも行われている。
また、1台1台のCO2排出量だけではなく、GISを用いてメッシュなどの単位に集計することも行われている。集計した結果を可視化することにより、次の図の様に東京・大阪などの都市圏のCO2排出量が他地域より多いことがひと目で分かるのではないだろうか。

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2次メッシュ単位に集計されたCO2排出量

他にも、いろいろなデータを重ね合わせることができるGISの特徴を生かした分析も試みられている。フローティングカーデータから取得した、CO2排出量・走行台数・走行距離などをもとに分析し、同じ距離を走行する際にCO2を排出しやすいエリアを可視化したのが次の図である。
この図は、CO2を排出しやすいエリアほど濃い赤色で表現されており、踏切の分布と、それらが重なっているようにみえる。これは、踏切がクルマの快適な走行に影響を与えていることを表していると考えられる。
このようなデータを地図上で表現することで、今後の街づくりの意思決定をする上での基礎的なデータになることが期待される。

  

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単位距離あたりのCO2排出量
赤色が濃いほどCO2 を排出しやすいことを表す。高架が終わり、
踏切が存在する場所で赤色が濃くなっている。

  

最後に

「近年、クルマに乗ると危険が多いとか、CO2を排出するなどで、クルマに乗ること自体が悪いこととされる風潮があると思いますが、私たちは、このような風潮をどうにかして解消したいと考えています。そのために、まずは“危険な場所はどこなのか”、“渋滞はどこに多いのか”などの現状を把握し、その原因について議論する必要があると思います。大量のフローティングカーデータをそのまま眺めていただけではなかなか議論できるような情報は見えてきませんが、GISを用いて分析し、データを見えやすく可視化することによって様々な本質が見えてきます。このようなデータは、安全な社会やCO2削減、効率化のための基盤データとなり、これらを整備することで私達は「社会貢献」できると考えています。
また、今後はインターナビの特徴のひとつである防災分野をさらに伸ばしていきたいと考えております。そのためにはまず先の、東日本大震災の災害対応で“できたこと・できなかったこと”を整理する必要があると考えており、その際に、データを分かりやすく可視化し、いろいろなデータと重ね合わせることのできるGISが非常に有効な道具になると考えています。今後の検討を通じて、インターナビが防災ナビとしてより良い方向に改善できるようにしていきたいです。」と菅原氏は今後の抱負を語ってくれた。

プロフィール


菅原 愛子 氏 (左)
益田 卓朗 氏 (右)



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資料

掲載日

  • 2012年1月1日