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GISによる森林データベースの構築。戦略的森林経営への転換を目指して

南那珂森林組合 串間事業所

 

森林データベース構築による高付加価値材の生産と森林管理

優良な国産木材の安定的供給のため、森林所有者に対し、施業内容やコストを明示する提案型施業に必要なGISが注目を集めている。南那珂森林組合ではGISの活用による持続可能な森林経営の挑戦が始まっている。

イントロダクション

日本の森林面積は約2,500万haで、国土の約2/3を森林が占めており世界的にも森林率の高い国と言われている。国有林と民有林に大別される日本の森林は法律により減少することなく地元の自治体や森林組合などによって管理されている。一方、需要量のうち日本で生産された木材の占める割合である自給率は20%程度になっており、加工外材の輸入増加や国内で進む森林管理者の高齢化や過疎化などが国内木材の間伐と利用の低下の原因になっている。間伐の推進のためには、森林所有者個人が持つ小規模な森林を、周囲の森林とまとまりを作る(団地化する)ことで、コストを抑えた効率的な森林整備(施業・経営の集約化)を行うことができると考えられている。そんな中、林野庁では10年後の自給率50%向上実現のため平成21(2009)年12月に「森林・林業再生プラン」を掲げて日本の森林・林業の再生を目指している。この中で森林組合は、森林所有者に対し、施業内容やコストを明示する提案型施業の普及及び定着を促進することにより持続可能な森林経営実現に貢献する林業事業体として期待されている。

南那珂森林組合

南那珂森林組合は、平成13年10月に宮崎県最南部に位置する自然豊かな地域に発足した森林組合で「飫肥杉(オビスギ)」と言われる江戸時代からの歴史ある優良杉を供給している。この飫肥杉は、油分が多く弾力性のある特徴から良質な造船材としてかつて発展し賑わったが、今ではその需要もなくなり、この強靱な特性を活かした建築用材などへの展開が求められている。管内の森林面積は65,000haで、その内、民有林の面積が35,000haでスギを主体とした人工林率は76%にも及び、この内の60%が現在収穫可能な段階を迎えており、森林組合では高齢化が進んだ森林所有者に代わって、いかに効率的な森林管理を行うかが課題となっている。南那珂森林組合の江藤課長は言う「昔は山主さん自身が山を知っていて、境界がわからないということはありませんでした。しかし、今では山を知らない山主さんが増えています。先代から聞いていても実際に山に入ると、木が育っていて昔と風景が違っていてわからないということもあります。山の管理をしていくには、森林組合が山林の情報を管理していくべきだという考えに基づきGPSによる境界測定に取り組んでいます。当組合では、境界を確定するだけではなく、様々な森林の情報を収集・記録し、今後の森林整備や林産事業に役立てていきたいと考えています。」
南那珂森林組合では、これまでの皆伐一辺倒の施業形態から、森林の現況や所有者の意向に沿った適地適伐の林業への展開のために平成12年からGISやGPSを積極的に活用している。

 

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チェックシート(左)と境界測量の様子(右)

 

森林データベースの構築

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飫肥杉と南那珂森林組合管内

南那珂森林組合では、民有林の資源管理台帳と言われる森林簿と森林基本図や森林計画図の他に、「森林カルテ(現況判定表)」と言われるデータを独自に整備している。「森林カルテ」は森林所有者、施業履歴、収支関係などの情報の他に、森林組合の測量員が目視によって得た樹種や土地の状態、材の状態(直材、曲がり材など)、風倒木の有無などをデータとして残し、森林の状況がわかるようにしている。

GPSを使った山林境界調査の作業は、まず県や市町村から借用した公図・公簿から森林所有者の位置図を作成し、謄本から所有者の住所を割り出し、GISから出力された図面を使って所有者に対して境界調査の提案を行う。調査への同意が得られたら、実際に境界を接する所有者が立会いのもと境界を確定する。このときに地域で山に詳しい人に協力員として同行してもらい、所有者どうしが納得の上、境界を示す杭を打つ。協力員は各大字界で長年林業に携わり、一番山に詳しい方を選出している。境界が不明瞭な場合や、お互いの意見の食い違いなどがあった場合には協力員の方からアドバイスをしてもらいその場を治めながら進めていった。境界が確定したら、次にGPS測量を行う。GPSは、林内に入ると衛星からの電波が樹木の枝葉などで微弱になるので、条件のいい測定点でGPS測定を行い、そこを基準点としてデジタルコンパスで測量していく。GPSならびにデジタルコンパスで測量したデータは、そのまま無線でPDAに記録される。組合に帰ってからPDAをパソコンにつなぎデータを送り、地図データに反映させる。この方式を採用すれば、作業の効率化だけでなく、手書きによる記載ミスも防止できるメリットもある。

ArcGISで見えてくる森林の様々な表情

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胸高直径区分マップ

このように採取した境界測量データと資源調査データは、そのままでは何の意味も持たない。ところが、このデータを集計して、ArcGIS上で調査項目毎に分析すると、この境界図が様々な表情を持ち始める。以下にその一つを紹介する。

右記のマップは、成人の胸の高さの位置における立木の直径を示す胸高直径で色塗りした胸高直径区分マップである。現在、南那珂地域では、直径30㎝前後の材が高値で取引され、それ以上は材価が下がり、かつ売れ残るという状況である。右記マップの赤色の部分が現在価値が高く、緑は時期を過ぎてしまった部分ともいえる。このため、今後は赤色の部分の伐採を重点的に行い、青色の部分は今後良質な30㎝前後の材に育てる判断をすることができる。また、緑の部分については大径材の注文を待つといった計画を立てる。そのときの市場の求めるものに応じてマップ上で強調表示を行い、所有者に対して提案型施業を行っていく。
他にも材齢と材積を比較しての分析など、調査してきたデータからいろいろなことがわかる。今後はこのデータから、金になる山、金にならない山を区分し、ただ漫然とコストをかけ施業するのではなく、見返りのあるところに実のある施業を行っていく。

まとめ

「GISやGPSなら、測定点の座標もデータとして残せるので、いままでの測量では地形しかわからなかったのが、地図上のどの位置にあるのか正確に記録に残せるようになりました。また、位置情報だけではなく、これら林分情報、地質情報、地形情報等のデータを重ね合わせて表示させ、分析することにより、今までの『植えて伐る』だけの林業から、『この山から何年後にどのような質の木材を生産する』といった適地適伐の林業を目指していきたい。」と江藤氏は今後の展望を語った。

プロフィール


江藤 祐樹 氏



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掲載日

  • 2012年1月1日

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