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事例

GISで分収林の管理を効率化

社団法人 新潟県農林公社

 

分収林管理システム

未来の森林(もり)を造る、育てる

はじめに

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間伐された杉林

昭和30年代、経済の急速な発展に伴って木材需要が増大し、森林資源の充実が不可欠となってきた。このことを背景に国の拡大造林政策のもと、全国的に林業公社が設立され、個人では進み難い箇所の人工林整備を推進してきた。

新潟県では、昭和47年に社団法人新潟県林業公社が設立された。その後、林業公社は、昭和60年の「分収林特別措置法」に基づく森林整備法人に認定され、森林整備の推進母体として位置づけられた。そして、平成9年に農業公社等と統合し、現在の社団法人新潟県農林公社(以下、農林公社)となった。

農林公社は、「森林資源の造成」「水源の涵養及び県土の保全」「農山村地域経済の振興及び地域住民の福祉の向上」を目的に分収林事業を行っている。

分収林事業

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現場での作業風景

分収林と聞いて、直ぐにピンと来る人は少ないのではないだろうか。

分収林とは、「森林所有者」「造林・保育を行う者」「費用負担者」の3者またはいずれかの2者で分収林契約を結び、造林・保育したのち伐採して、その収益を分け合う森林である。

分収林は、大きくは「分収造林」と「分収育林」の二つに分類される。

分収造林は、土地所有者に代わって農林公社が植栽から手入れまで行い、育てた木から得た収入を一定の割合で配分するものである。それに対し、分収育林は、植林したけれど手入れができない造林地について農林公社が今までにかかった経費を支払い、その後所有者に代わって手入れを行い、育てた木から得た収入を、一定の割合で配分するものである。農林公社では、これら分収林事業に取り組んでいる。

 

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システム構成図

分収林管理システム

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管理地区と森林基本図を重ね合せて表示

農林公社では、Windows98 からWindows7への業務用PCの更新機会に合わせて、台帳機能のみであった従来の分収林管理システムをGIS機能が付加された新システムに再構築した。

 

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PDS(ArcPad)での管理地区を表示

再構築にあたっては、これまでのスタンドアロン型から情報の共有化を実現するクライアント/サーバ型にした。また、これまで図面はマイラに手書きで記入し作成・管理してきたが、これらをデジタル化し、新システムで直接管理できるようにした。
新システムでは、約700の管理地区(団地)を一覧や地図から選択して閲覧し、施業情報の変更や図面の編集を簡単に行えるようにした。また、PDA(ArcPad)を利用して、現地で取得した座標データを帰社後すぐに新システムに取り込み、図面の修正をすることができようにした。

新システムの導入で台帳だけでなく、地図も一緒に扱えるようになり、座標データを多く扱う分収林管理業務が一層効率化されることが期待されている。

 

トキの森プロジェクト

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新潟県は、「カーボン・オフセット」に積極的に取り組んでいる。カーボン・オフセットとは、日常の生活や企業の活動から排出されるCO2をできるだけ削減するよう努力したうえで、どうしても排出されるCO2の排出量の全部または一部を森林整備活動などに資金を提供することで、排出されたCO2を埋め合わせる(オフセットする)制度である。

農林公社は、このカーボン・オフセットに「トキの森プロジェクト」という形で参加している。トキの森プロジェクトとは、佐渡におけるトキの生息環境の整備に繋がる活動として、積極的な森林整備を行うものである。そして、このトキの森プロジェクトから生まれた「トキの森クレジット」(新潟J-VER)を販売し、その収益を再び佐渡の森林整備に活用している。

 

最後に

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作業風景

「分収林事業は、50年から90年という非常に長いスパンで取り組む事業です。この間に林業は、木材輸入自由化による木材価格の大幅な下落や、保育作業賃金の上昇など非常に厳しい経営環境直面してきました。しかし、森林は生き物です。我々が手をかけなくなったら、森林は駄目になってしまいます。今回、新たに分収林管理システムを導入することができました。本システムを利用することで、更に効率的な分収林管理に努めて行きたいと思っています。」と星課長代理は語ってくれた。

プロフィール


林政部 森林・林業課
(右) 斉藤 康夫 課長 (左) 星 定 課長代理


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資料

掲載日

  • 2011年1月1日