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事例

緑地保全・創出を効果的に発揮するための行政の取組み

柏市 都市部 公園緑政課

 

健康の増進、生き物とのふれあい、
災害時の避難等に役立つ緑地を守り、育てるために

緑地を保全・創出する必要のある場所をGISで明らかにし、制度と結び付けることで緑地の永続性の担保を図る

イントロダクション

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千葉県柏市が抱える緑地の保全・創出及びその実施に関する課題は主に次の四つが挙げられる。

  1. 緑地の減少
    景観上重要な緑地や、キンラン・ギンラン・ジュウニヒトエなど千葉県で絶滅が危惧されている植物の自生する緑地が減少している。
  2. 公園の不足
    首都圏のベッドタウンとして、急激に都市化が進んだため、都市公園等のインフラ整備が不十分である。平成21年度末の一人当たり公園面積は5.7㎡であり、同規模自治体の平均9.4㎡/人を下回る。
  3. 公園配置の偏り
    開発に伴う小規模公園は増加する一方、開発が行われる場所に偏りがあるため、公園の過密地域、空白地域が発生している。
  4. 計画と実務との乖離
    平成21年6月に柏市緑の基本計画が改訂されたが、計画では保全・創出を図る緑地に対し、大まかな区域の提示やゾーニング分けにとどまり、緑の基本計画で掲げている目標値をどこでどのように実現していくかまでは明らかにされていない。
 

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これらの課題を解決し、表-1に示す緑地の機能を効果的に発揮するため、柏市公園緑政課では「緑の配置計画」と「緑地の保全・創出制度等適用の優先順位づけ」からなる「緑の戦略的配置プラン」を策定中である。計画の策定手順を図-1に示す。

緑の配置計画

どの緑地が重要なのか。どの場所がレクリエーション(健康増進を図ることの出来る公園的な空間)、防災(避難所として適する緑地)、エコロジカル(生物の生息空間として適する緑地)の観点からみた空白地域なのか。空白地域を埋めるために、緑地の保全・創出制度をあてはめることで代用できる緑地はあるのか。これらを明らかにするために主にArcViewを用いて緑の配置計画を作成した。

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  1. 基本方針設定
    • 目指す将来像:緑がモザイク状に入り組んだ都市
    • 対象範囲:柏市全域
    • 目標年次:平成37年度
    • 対象とする緑地:樹林地・田 畑・草地
    • 対象とする緑地の機能:レクリエーション、防災、エコロジカル
       (最低限この3つを満足する緑地を担保することで、ここに挙げていない他の機能との相乗効果を目指す)

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    図2 緑の配置計画図(案)

  2. コアエリア候補緑地選定
    表-2をもとに、比較的効率よい配置となるよう、対象とする緑地の機能全てを満足する250m間隔、基準面積2500㎡以上をベースとしてコアエリアの候補となる緑地を抽出した。(概ね400mグリッドに一か所を基準とし、複数の緑地がある場合は緑地の重要度評価結果を参考とした)
  3. 緑地のネットワーク化
    目指す将来像により近づけるため、現況のコアエリア、選定されたコアエリア候補地を既存緑地でつなぎネットワーク化を図る。
  4. 選定された緑地の面積補正
    緑地の機能ごとに表-2の目標面積を満たすよう、選定された緑地の面積補正を行う。
  5. 緑の配置計画図
    現況緑地のコアエリア、コアエリア候補緑地、緑のネットワークの役割を果たす緑地をもって、緑の配置計画図とした。なお、既に都市公園や、条例等に基づく永続性の担保が図られている緑地であっても、緑の配置計画図に掲載されていない公園緑地は集約化候補地と位置付けている。そのため、緑地の永続性が担保される面積は増加するが、都市公園等の箇所数は減少する結果となった。
 

制度適用の優先順位づけ

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図-3 制度適用の優先順位づけの例(市民緑地の場合)

緑地を保全・創出するための制度には、法律に基づく都市公園・特別緑地保全地区・市民緑地、条例に基づくみどりの広場・保護地区等がある。どの場所にどの制度を当てはめて緑地の永続性を担保していくべきか。優先順位はどのぐらいなのか。集約化を図るためには、どの緑地から手をつければよいのか。これらを明らかにするために、Spatial Analystを用いて次の手順で適用する制度及び、優先順位の判定を行った。

  1. 判定指標の設定
    各種制度の規定や市の実情等を勘案し、制度ごとに判定指標の設定を行う。
  2. 再分類
    設定した判定指標に対し、再分類を行い、判定指標ごとにランク付けを行う。
  3. オーバーレイ
    再分類した判定指標を重ね合わせ、総合的なランクを明らかとする。この手順で優先順位づけを行った例を図-3に示す。
 

今後の課題

この計画は現在立案中である。しかし、その間にもコアエリア候補地として挙げた緑地が消失する等の事態が生じている。そのため、計画の策定及び、計画に基づく制度適用の実施が急務となっている。また、常に変化する事象に対し、より精度を高めて効果的に緑地の保全・創出を図っていくためには、定期的な計画の更新が必要である。担当者が代わっても更新を行えるような分かりやすくシンプルなモデルの構築が必要だと考えられる。

 

行政によるGIS利用の利点

今回の計画づくりを通して感じた、行政職員がGISを用いて計画づくりを行うことによる主な利点は次のとおりである。

  1. 市の実情等のきめ細かい反映
    課内で話し合いながら計画策定を進めることにより、長年実務に携わってきた職員の経験則に基づく指標等を組み込むことができ、地域固有の事情を考慮した計画づくりが可能である。
  2. データの入手が比較的容易かつ効率的各部署が様々なGISデータを保有しており、それらが計画づくりに必要なデータなのかを各課の担当と対話しながら収集出来る。そのため、効率のよいデータ収集が可能である。
  3. 経費削減
    ベースとなるデータの作成さえ完成すれば、軽微な修正、可視化、多種多様な解析を短時間で行えるのが、GISの利点であり、従来外部発注していた業務を外部発注せずに行えるため、経費の削減につながる。

プロフィール


細江 まゆみ 氏



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掲載日

  • 2012年1月1日

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