GISの研究やGISが普及することにより高校教育の振興へも寄与できる
各地で行政と市民の協働による“まちづくり”の議論が盛んである。しかしながら、“まちづくり”への議論のひとつとしてGISを援用した議論は少数であるように思える。
新発田南高等学校では、地元の新発田市役所まちづくり支援課から資料の提供を受けて、GISによる居住環境の評価を試みた。
この成果は2011年10月15日・16日に鹿児島市の鹿児島大学で開催された地理情報システム学会の学術研究発表大会で、高校生として全国2例目となる本校生徒が発表し、新発田市役所のまちづくり支援課にも成果を伝えた。
新発田市は人口101,207人(2010年国勢調査)、面積は約532.82km2で新潟県の北部に位置する市である。市制が施行され新発田市となったのは、第二次世界大戦後の1947年であるが、その後に周辺の町村と合併を繰り返してきた。人口規模は三条市に次いで県下第5位となっている。かつては城下町として栄えていたため、歴史的建造物が多数あり、その中でも国の重要文化財に指定されている新発田城は市のシンボルとなっており有名である。
数値地図2500(空間データ基盤)に250mメッシュを被せる。次に新発田市役所を中心とした6kmのバッファを作成し、このバッファによりメッシュをクリップした。次に250mメッシュの中心点を求めてこれより最近隣のコンビニエンスストア、小児科医療機関、駅、保育所、公園・体育館、警察署(交番含む)・消防署、新発田市役所、新新バイパス(国道7号線)入口への近接性をそれぞれ測定し、さらに地形的要因として傾斜方位を指標として採用した。近接性の測定に関してはArcGISNetwork Analystを用いた。
小児科医療機関の分布をカーネル密度で測定してみると、市役所から2km圏内に密度の高い地域が集中している様子が窺えた。保育所の分布に関してはCrimeStatを用いてNnhを検出したところ、2km圏内にクラスタが1個検出された。
以上のような解析結果より居住環境を評価した。評価は重み付けを行い、生活利便性を考慮して新発田市役所、小児科医療機関、コンビニ、保育所、新新バイパス(国道7号線)、最寄り駅までの距離は最大値で除して0.6を乗じた。公園・体育館と警察署・消防署までの距離も同様に最大値で除して0.2を乗じ、傾斜方位の値は0.2を乗じ、傾斜方位の値以外はすべて減算して総合評価(以下評価1と記述)を行った。尚、傾斜方位の値は南東、南、南西の方位を2、それ以外の方位を1に再分類して行った。その結果、市役所を中心とする半径3km圏内に5段階評価で高い評価のポイントが集積している様子が窺えた。次に重み付けの値を新発田市役所、小児科医療機関、コンビニ、保育所、新新バイパス(国道7号線)、最寄り駅までの距離は0.4を、公園・体育館と傾斜方位の値には0.4を、警察署・消防署までの距離は0.2と変更して評価1の方法と同様の処理(以下評価2と記述)を施した。結果は最高のランクが先の評価に加え北東の方向にも現れた。
先の評価1の最高ランクのポイントに対して空間検索を行い最近隣の町丁ポリゴンに含めて合計し、その値を町丁面積で除した結果をGeoDaを用いて空間的自己相関を検出したところ、1%水準で有意な最高ランクのクラスタが市役所からほぼ3km圏内に検出することができた。尚、I統計量は0.4658であった。
新発田駅から学校までの通学路の歩行環境を検証してみた。クリノメーター、メジャー、GPS、PDA(POSシステムを改良したものを内蔵)を携行し調査にあたった。横断歩道前や店舗脇の小路を横断する地点は傾斜が7°以上の箇所がサンプル地点(▲印)からも明らかとなった。点字ブロックも整備されてなかった。沿道に緑があると景観も改善されるものと思われる。
新発田市を対象として、GISを援用して居住環境の評価の一手法を提示できたことは大変意義が大きく、周縁部はサービスを得にくい様子が窺えた。山本教諭は、「生徒による本研究が、GISによる今後の“まちづくり”への一助となれば幸いです。行政と市民が手を携え、モバイルGISを携行して現地踏査をすることにより、今後の“協働によるまちづくり”の課題を抽出すべきであると思われます。今後はSANET4(岡部篤行,2010)で避難場所の設定やゴミステーションの配置等ミクロスケールでの解析も試み、生徒たちの大学での研究に繋げたい。」と今後の抱負を語った。